こどもと読むたくさんのふしぎ

福音館書店の月刊誌「たくさんのふしぎ」を読んだ記録です。

きみはなにどし?(たくさんのふしぎ傑作集)(第94号)

今年も早一か月が過ぎた。

年末年始ならともかく、こんな中途半端な時に「きみはなにどし?」もクソもないもんだが、そういえば節分というのも年女年男が関係するではないか。しかし、節分もとうに三日過ぎている。時期を逸していることに変わりはない…。

『きみはなにどし?』の表紙はニワトリにスポットが当たっているので、この号の発行年1993年は酉年だったことがわかる。裏表紙はイヌ。中表紙の少年がイノシシの頭をしているのは、挿絵を描いたU. G. サトー氏が亥年だからだろう。

作者の加納信雄氏は「なにどし」だろうか?作者紹介の欄を見ると1933年の生まれだ。これは酉年。「作者のことば」には、

“さよなら”の一九九二年はサル年。“こんにちは”の一九九三年は、だからもちろんトリ年で、ちゃんというと癸酉の年。

と書かれているが、加納氏が生まれた1933年も癸酉なのだ。つまり還暦を迎える年にこの本を出したということになる。氏は「年のきざみ目は人間が考えた約束ごとさとよーくわかっていた」ということだが、人間の考えた約束ごとだからこそ、そこに“合わせる”面白さも知っていたのだろう。松の内どころか節分にも間に合わせられない私とは違うのだ。

本書は、子供向けによくある十二支のおはなしではない。ネズミが猫を騙しただの、牛をちゃっかり利用しただのという話は、ほんの少しだけ触れられているくらい。この本の幹となるのは干支つまり十干十二支についての話だ。甲骨文の話から始まって、暦や方角、干支に関する俗信などなど盛り沢山の内容になっている。干支というのはかつては生活と密接に結びついたものだったけれども、現代で実用されるのははせいぜい年賀状のイラスト程度のものだ。1993年当時も干支の本来を知る人は少なかったかもしれない。

作者は自身の還暦に合わせて干支の本を出したのだ、と書いたが、実のところ「時期を合わせた」わけではないのかもしれない。もちろん、企画の段階で絶対還暦の年に出版しようと決めていたに違いないが、そもそもは60を目前に、還暦とは何かというところから始まったのではないかと思う。その流れとして干支のことを調べることになったのではないか。本書の最後では還暦についてこんなことが書かれている。 

バツもいっぱいついちゃった、ふるいノートをしまって、新しいまっ白なノートをひらいたみたいな……。

 で、“この世に60年も生きてきた人に、もう1冊の<まっ白なノート>をプレゼントする”―還暦は、そんな意味のお祝いじゃないかしら。

還暦には「もう一度赤ちゃんに戻って生まれ直す」という意味合いもあるから、新しいノートの1ページを開くというイメージはぴったりかもしれない。1993年当時、会社勤めの定年は60歳に引き上げられつつあり、まさしく人生の区切り、新たなステージへ移るという実感があった時代だと思う。還暦も定年も「人間が考えた約束ごと」だけれども、ここまで生きてこられた、何とかやってこられた、おかげさまでありがたいと振り返る良い機会だったのかもしれない。

私自身、あと20年もしないうちに還暦を迎えることになる。人生80年どころか100年時代を迎えようとしている今、「還暦」はどこまで意味を持つことができるだろうか。

きみはなにどし? (たくさんのふしぎ傑作集)

きみはなにどし? (たくさんのふしぎ傑作集)