こどもと読むたくさんのふしぎ

福音館書店の月刊誌「たくさんのふしぎ」を読んだ記録です。

ブラックバス(第16号)

この本の最後は次のように締めくくられている。 

 アメリカでは、つり場をだいじにする法律があって、魚がすくすくそだち、このあいだは、なんと体長83センチメートル、おもさ10キログラムというすばらしいブラックバスがつれた。

 日本でも、そんな魚がそだつようにしたいものですね。

ブラックバス』が発行されたのは1986年。今でこそ、“特定外来生物”として悪いイメージをもたれているブラックバスだが、この頃は、賞金制のバスプロ・トーナメントが始まるなど、人気の釣魚としてブームが巻き起こり始めた時なのだ。「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」が施行されたのは2005年(ブラックバスは初っ端からリストアップされている)。したがって、この本には外来種のがの字も出てこないし、ブラックバスバス釣り、そして釣り全般について熱意を感じさせるテイストで書かれている。これを読んで釣りに行ってみたいと思った子供たちもいたのではないだろうか。

ブラックバスは、誤って水に落としたスプーンさえ食べてしまうくらい食欲旺盛なこと。そこから疑似餌での釣りが始まったこと。最初に移入しようとした赤星鉄馬は苦労してブラックバスアメリカから持ち帰ってきたこと。そのとき生きて日本にやってきたのはわずか90匹だったこと。そのわずかなバスが芦ノ湖に放流され、そこで生き残った子孫たちが、各地で増え続けていくことになったこと。

ブラックバスの「外来種問題」が一切書かれていない本書は、逆に新鮮で面白かった。悪い印象で見るばかりで、その実ブラックバスそのものについては何にも知らないことがよくわかった。バスを「ただの魚のひとつ」として紹介する、今となってはなかなか難しいスタンスだろう。子供向けの科学絵本である以上、どうしたって外来種問題に触れないわけにはいかないからだ。

「作者のことば」では、芦ノ湖で大きなバスを釣り上げた作者が、ブラックバスと引換えに舟代をまけてもらった話が書かれている。箱根ではブラックバスを食用の魚として食べていたとのこと。だいぶ昔、と書かれているが、今でもバス料理を供している料理屋さんもある。

そして「琵琶湖の人びとはブラックバスを食べません」と書かれていたこの当時からは一変、今では琵琶湖でもブラックバス料理が食べられている。イメージを変えるべく「ビワスズキ」と改名し、鮒ずしならぬなれずしまで作ってしまうところが近江商人を輩出した滋賀県らしく商魂たくましい。ちなみに同じく嫌われもののブルーギルは「ビワコダイ」と名づけられ、こちらもなれずしに加工されている。