こどもと読むたくさんのふしぎ

福音館書店の月刊誌「たくさんのふしぎ」を読んだ記録です。

ニレの中をはじめて旅した水の話 (たくさんのふしぎ傑作集) (第98号)

本書の英題は、"The Water Tells his First Trip into the Elm Tree"。

主人公の「水」が、ニレの木の中を旅するという態で作られたお話だ。

水を擬人化した科学絵本といえば、名作『しずくのぼうけん』 がある。中学年の読み聞かせでよく使っているが、独特のリズム感が気持ちよい反面、手書き風のフォントが見づらくてちょっと苦労する読み手泣かせの絵本だ。

『ニレの中をはじめて旅した水の話』『しずくのぼうけん』もそうだが、読者に水に関する科学的知識があるのとないのとでは、物語の見え方がまるで違う。ちょっと知識があれば、毛細管現象かなとか、水の凝集力のことを描いているなとか、これは蒸散のことだなと思い浮かべることができる。

しかし本書がすごいのは、知らなくても・・・・・・読めるところだ。

蒸散だの毛細管現象だの知らなくても、一つの冒険物語として楽しく読むことができるのだ。自分もニレの木の中を旅している気分になれる。トメク・ボガツキによる幻想的な絵も素晴らしい。表紙のタイトル文字の配置から裏表紙の絵まで、すみずみまで気を配って創られている。本当に素敵な絵本だ。