こどもと読むたくさんのふしぎ

福音館書店の月刊誌「たくさんのふしぎ」を読んだ記録です。

もじのカタチ(第305号)

子供が突然、広告の裏に「ふ」の字をいろいろ書き始めた。

『もじのカタチ』に触発されてのことだとわかった。

元々ひらがなは漢字からできたんだよ、ということは教えていた。本書で「不」から「ふ」に変わっていく様がビジュアルで表現されているのを見て、実際に書いてたどってみたいと思ったのだろう。

「ふ」と発音するひらがなは「不」だけではない。かつては「婦」「布」「夫」などの漢字を元にしたものもあった。むかしのひらがなは、なんと今の5倍以上あったという。

文字の形といえば、今やデジタル機器に表示されるフォントのことが真っ先に思い浮かぶ。

しかし、手書きの時代であっても文字の形に工夫を施してきたことに変わりないのだ。昔の人とて、「ふ」ひとつ取っても、さまざまな「ふ」を使い分け、文字の形をどう表現するかということに腐心していたわけだ。

漢字から生まれた文字には、ひらがなの他に片仮名もある。もともとは文字のすき間にメモのように書く(漢文和読の補助)ために開発されたものだという。この小さく書くという目的のために単純な形で作られている。だからこそ「ちょっとしたちがいで、べつのカタカナになってしまいます」。斜めの線の傾きが違うだけで別の文字に変わってしまう、学習者泣かせの文字なのだ。確かにVOWでネタにされていた、海外製品の誤った日本語表記は「ンとソ」や「シとツ」の取り違えなどカタカナが多かった。

「作者のことば」によると、

中学校を卒業する15歳までものあいだ、学校ではこの特殊な学習用文字だけですごしているなんて、ふしぎですね。なんとか子どもたちにも、文字の形のおもしろさを伝えたい気持ちで、この絵本「もじのカタチ」をつくりました。

確かに義務教育学校、特に教科書は「学習用の書体」しか使われないことが多い。子供に読みやすいという理由からだろうか?

読むのは「特殊な学習用文字」だとしても、各自で書く字となれば話は別だ。文字の形の面白さや工夫については、若い人の方が敏感だろう。文字のカタチで自然に“遊び”始めるのは、若い人、とくに女性の得意とするところだ。丸文字が流行った世代としても実感できる。その流行に乗り切れなかった個人としては、ギャル文字に眉をひそめるのは可笑しいと思う一方、顔文字絵文字、そしてLINEスタンプと、流行と進化を続ける「文字の文化」に、うらやましさを感じつついまだ乗り切れないでいるのだ。

 

※ 「もじのカタチ」ということで、いつも使っているデザインテーマを1週間限定で違うものに変えてみることにしました(PCのみ)。 

月刊 たくさんのふしぎ 2010年 08月号 [雑誌]

月刊 たくさんのふしぎ 2010年 08月号 [雑誌]