こどもと読むたくさんのふしぎ

福音館書店の月刊誌「たくさんのふしぎ」を読んだ記録です。

昆虫の体重測定(第373号)

本号はタイトルそのまんま、あらゆる昆虫の体重を量ってみたというものだ。

そんなシンプルな内容なのに、これがまたすごく面白い。世界最大のカブトムシだの、世界最大のチョウだの、体長に関しての話題は多いが、体重にスポットが当てられることは少ないからかもしれない。

とはいえ、昆虫の体重なぞ気軽に量れるものではない。本書もキッチンスケールにテントウムシをのせるところから始まるが、軽すぎるので0gのまま。そこで登場するのが電子天秤。一万分の一グラムから量れるこの秤(高価!)を使えば、ヤブ蚊の重さだって量れるのだ。

付録の一枚絵「昆虫の重さくらべ」も吉谷氏が担当しているが、見ると血を吸ったヤブ蚊は、吸う前のおよそ2倍の重さになっている。人間の自分で想像するといきなり2倍の重さになったら、動くのも一苦労だろう。

カブトムシで大きめのオスは10g。しかし冬の前に立派に育った幼虫はなんと30gもあるのだ。一方さなぎは20g。カブトムシは成長につれ、体重がどんどん減っていくことがわかる。これはアオムシとモンシロチョウでも同じ、完全変態の昆虫のほとんどは、成虫の時期がいちばん軽くなっている。

トノサマバッタ(オス)は意外に重くて1.428gショウリョウバッタ(メス)は2.967gもある。オンブバッタはメス0.45gに対し、オスはわずか0.08g。メスの方が5倍以上も重い。

同じナナホシテントウ同士でも個体差がある。体長も異なれば、体重差が2倍以上に及ぶこともある。人間だって、同じ年に生まれた子供同士、個体差があるから当然だ。昆虫の個体差なんて並べて見る機会はなかなかないので興味深い。

この号で「光ってて、宝石みたい!」と子供たちを興奮させたアカスジキンカメムシ0.287g。『わたしたちのカメムシずかん』の「ふしぎ新聞」には、「アカスジキンカメムシの卵には不思議がいっぱい!」と題し、カメムシ愛好家の小野國彦氏*1による、アカスジキンカメムシの飼育の様子が掲載されている。これを見ると、カメムシの卵は何gなのか?産卵間際のメスの体重は?1齢幼虫はどれくらい?とか俄然気になってくる。

身近なムシの体重を知るのは楽しい。ふと我に返れば、虫の体重なんて量ってどうするのか?何かの役に立つのか?楽な作業でもなさそうだし……という疑問(愚問)が浮かんでくる。「作者のことば」では、

 また、野外で昆虫を見かけたときは、その重さについても、考えをめぐらせてみてください。身近にいる昆虫という生き物が、もっともっと面白く見えてくることでしょう。

と子供向けに優しく説かれているものの、「電子天びんで虫の体重測定 1万分の1グラム単位まで」という記事を読むと、

小さな虫の、1匹1匹の体重が違う。とても量りきれないほどの、無数の虫がこの世界にはいる。そこにロマンを感じるという、ただそれだけのことなのだ。

ただ楽しいから、やりたいからやってるんだよ、という素直な思いが見えてくる。自分が書いているこのブログだって、何かの役に立つからやっているわけではないのだ。単純に書きたいから書いているだけではないか。

テントウムシは一円玉より重い?軽い? 体重比べで、昆虫たちがより身近に。『昆虫の体重測定』|ふくふく本棚|福音館書店公式Webマガジン

昆虫の体重測定 (月刊たくさんのふしぎ2016年4月号)

昆虫の体重測定 (月刊たくさんのふしぎ2016年4月号)

昆虫の体重測定 (たくさんのふしぎ傑作集)

昆虫の体重測定 (たくさんのふしぎ傑作集)

  • 作者:吉谷 昭憲
  • 発売日: 2018/06/06
  • メディア: 単行本

*1:ちなみに小野國彦氏は『わたしたちのカメムシずかん』の中で<カメムシはかせ>になろうと呼びかけられた校長先生のご主人だ。江刈小学校のカメムシ調査をきっかけにご夫婦で飼育をはじめられたらしい