こどもと読むたくさんのふしぎ

福音館書店の月刊誌「たくさんのふしぎ」を読んだ記録です。

スウェーデンの 変身する家具(第405号)

本号を寝っ転がって読んでいた子供が、

「ねえねえ、スエーデンでは、人んちの森にも自由に入っていいんだって。そこでキャンプしてもいいんだって。すごいねー」

と言い出した。

実はこれ、『森はみんなの保育園(第320号)』にも書いてあったことなのだ。こちらはデンマークだったが、ご近所の国スウェーデンにも同じような慣習があるようだ。自然享受権というものらしい。

 

変身する家具とは?

たとえば窓ぎわの置物台、これがダイニングテーブルに変身したり。

ベンチとして利用していたものが、夜にはベッドに早変わりしたり。

テーブルと思っていたのが、椅子になったり。

折りたたみ式であったり、分割して片付けられるようになっていたり。

スウェーデンでは、ライティングビューローと同じような、省スペースの家具がたくさん作られているのだ。

我が家にもしこんな家具があったとすれば、決して折り畳まれたり、早変わりしたり省スペースになったりすることはないだろう。物がどっさり乗っかって、変身する余地などないからだ……。

なぜ、スウェーデンではこのような家具が生まれたのか。

かつて日本の住居はウサギ小屋などと揶揄されていたものだが、昔のスウェーデンも、負けず劣らずの“狭小住宅”だった。

狭いといっても本書に登場する家は、森の中の一軒家。150年前に建てられたものだ。本当の意味で狭いわけではない。ふだん生活するのは狭く限られた場所だけど、家そのものは広く作られている。使っていない“デッドスペース”は、人が集まったりする時に使う特別な部屋なのだ。

狭い部屋で暮らす理由とは?ひとえに暖房効率を上げるため。スウェーデンの冬は寒い。マイナス30度近くまで下がることもあるのだ。暖炉や煮炊きの熱を部屋中に行き渡らせるためには、狭い方が都合が良い。その限られた空間に合わせて作られたのが、これら変身する家具というわけだ。

なかでも面白いのが箱形のベッド。気密性に優れているので、より熱を逃がさず暖かく眠ることができる。これも“変身する家具”であるからにして、内側に本棚があったり、外側に折りたたみ式の机が取り付けられていたり。大改造!!劇的ビフォーアフターも真っ青な作りっぷりだ。

スウェーデンといえば、イケアIKEAの家具もこんなカラクリ仕立てなのだろうか?ちょっと調べてみると、こんな多機能家具が見つかった。

FRIHETEN フリーヘーテン コーナーソファベッド 収納付き - スキフテボー ダークグレー - IKEA

NORDEN ノールデン ゲートレッグテーブル, バーチ, 26/89/152x80 cm - IKEA

ゲートレッグテーブルは何世紀も前から使われてきました。

なんて説明も見受けられる。IKEAにも“変身する家具の伝統”が受け継がれていると言っていいのかもしれない。

しかし、IKEAが本当に受け継いでいるのは、変身する家具そのものではなく、むしろDIY精神の方だ。本文にはこんなことが書かれている。

夏休みに、木の家を修理することを楽しみにしている人もいます。

このとき、おとなに交じって、子どもたちも手伝います。学校の授業で、ナイフやノコギリ、トンカチなど大工道具の使い方を学ぶので、慣れた手つきです。

ある子どもは、古い民家を手入れするのが憧れと語っていました。

IKEAの家具は、配送・組立・設置をすべて客が行う前提になっている。組立はけっこう難儀すると聞く。家の修理を楽しみにしていたり、学校で大工道具の使い方を学んでいたりするスウェーデンの人々にとって、すでにパーツが揃った家具を組み立てるなど雑作もないことなのだろう。無料のスペアパーツコーナーが設けられているというのもうなずける話だ。修理などお手の物なのかもしれない。

うちは無理……と思ったけれど、家具を買うと思うからこういう発想になるのであって、組み立てる楽しみを買うと思えば、案外ハマる可能性がある。家族であーだこーだ言いながら作業したら面白いのかもしれない。引越屋さん泣かせと噂される*1IKEAなので、転勤族の我が家に向かない家具ではあるのだが……。

スウェーデンの 変身する家具 (月刊たくさんのふしぎ2018年12月号)

スウェーデンの 変身する家具 (月刊たくさんのふしぎ2018年12月号)