こどもと読むたくさんのふしぎ

福音館書店の月刊誌「たくさんのふしぎ」を読んだ記録です。

まちぼうけの生態学 アカオニグモと草むらの虫たち (たくさんのふしぎ傑作集)(第317号)

本書は、遠藤知二氏による"生態学"シリーズの第1作目にあたる本だ。3作目の『すれちがいの生態学』から「作者のことば」を引いて、3部作の紹介をする。 虫たちの出会いをめぐる3部作の完結です。第1作の『まちぼうけの生態学』(2011年8月号。現在「た…

線とあそぼう(第382号)

線は、いつから「字」になるのだろう。 小学校入学前に子供が書いた字が残っているが、それは字というより、拙い線を組み合わせて作った記号や図形といった風体なのだ。今どきにしては珍しく、子供はお勉強のようなものを一切しない幼稚園にいて、親もあえて…

ことば観察にゅうもん (たくさんのふしぎ傑作集)(第277号)

『みんなでつくる1本の辞書』で「ところが、この号だけ(だと思うが)は、48ページなのだ。」と書いたが、この『ことば観察にゅうもん』も同じく48ページ構成だ。ちなみに、この本でイラストを担当している祖父江慎氏は『もじのカタチ』という「たくさんの…

おいかけっこの生態学 キスジベッコウと草むらのオニグモたち(第364号)

『すれちがいの生態学 キオビベッコウと小道の虫たち』の主人公が「キオビベッコウ」なら、こちらは「キスジベッコウ(キスジクモバチ)」という別のクモバチのなかまだ。名前の通りこちらもクモ狩りをするハチで、コガネグモ科のクモを獲物として狩るらしい…

かぼちゃ人類学入門 (たくさんのふしぎ傑作集) (第75号)

かぼちゃ?人類学?はてさて何のことやら…と思うのも無理はないタイトルだが、実は『迷宮へどうぞ』で、挿絵を担当しているのが、本書の著者である川原田徹氏だ。『迷宮へどうぞ』には、"『かぼちゃ島』迷宮"という絵があり、カボチャの形をした島の内部に、…

南極の生きものたち(第369号)

南極といえば、以前書いたエントリーの『コウテイペンギン撮影記』が思い出されるが、南極へむかう行程さえハイテンションの感情をだだもれに書き綴っていた内山氏に対し、『南極の生きものたち』の水口博也氏が書く南極は、あくまでフラットな調子で綴られ…

クモと糸(第360号)

このエントリーで書いた自然観察イベントの2日目の朝、雨はかろうじて上がったものの、森は濃い霧につつまれ、野外観察には向かない天気だなーとちょっと憂鬱に思いつつ、森の道を歩き始めた。ところがベテランレンジャーの方は、ほらほらと道の脇の茂みを…

すれちがいの生態学 キオビベッコウと小道の虫たち(第388号)

わたしは蜘蛛が何より苦手で、家に現れるムカデに熱湯をかけることも、ゴキブリを叩き潰すことも厭わないが、蜘蛛だけはどうしてもダメだ。さすがにハエトリくらいでぎゃあぎゃあ言ってたら暮らしていけないのでそこは慣れた(見なかったふりをする)が、ジ…

ニレの中をはじめて旅した水の話 (たくさんのふしぎ傑作集) (第98号)

本書の英題は、"The Water Tells his First Trip into the Elm Tree"ということで、主人公の「水」がニレの木の中を旅するという態で作られたお話だ。水を擬人化した物語でつくられた科学絵本といえば、名作『しずくのぼうけん』 が真っ先に思い浮かぶ。中学…

人がねむる 動物がねむる(第178号)

わが家の息子がいちばん口うるさく言われるのは、勉強のことではなく「寝る時間」のことだと思う。「早く寝なさい!」という直接的な言葉から「時間の管理ができてないよ」「せっかく早くご飯にしたのに寝る時間が遅かったら意味ないんだよ」「睡眠不足にな…

迷宮へどうぞ (たくさんのふしぎ傑作集) (第46号)

はてなキーワードで「たくさんのふしぎ」は、"マニアックな題材、作家選びがされており"との説明がなされているが、この『迷宮へどうぞ』の著者、種村季弘ほどマニアックという言葉が似合う人もいないのではないか。私が種村季弘の名前を知ったのは、高校生…

セミのおきみやげ (たくさんのふしぎ傑作集) (第29号)

『バッタのオリンピック』と同著者による本。バッタの時と同じく、セミの種類から分布場所、身体の図解や「絵とき検索」による同定の仕方まで、ていねいに詳しく描かれている。本書のメインはセミの"おきみやげ"=ぬけがらであるので、ぬけがらの図解やぬけ…

音楽だいすき (たくさんのふしぎ傑作集) (第27号)

“音楽をすきになった日"と題された「作者のことば」で、翠川敬基氏はこんなことを言っている。 今のぼくの仕事は、音楽を演奏することです。もちろん音楽は大好きです。でもぼくが君たちの年齢のころは、あまり音楽が好きではありませんでした。 小学生の頃…

ニワシドリ あずまやを作るふしぎな鳥(第276号)

作者の鈴木まもる氏は、鳥の巣に特化した絵本を多く描いている。本号も、その鈴木氏の本領が発揮された、素晴らしい絵本だ。鳥そのものもさることながら、やはり圧巻は巣の絵の方だ。いや、ニワシドリのそれは巣ではない。あくまで「あずまや」であった。あ…

電子の虫めがね(第184号)

「電子の虫めがね」とはその名のとおり、電子顕微鏡のことである。虫めがねという言葉は、単なる拡大鏡という意味だけではない。撮影対象が虫であるという、二重の意味がかけられているのだ。しかし、そもそも虫眼鏡とは?虫を見るために作られたものなのか…

夜へ行こう(第278号)

夜が好きだ。就職して一人暮らしをしていた頃、夜を自由に使えるのがうれしくて、都会の夜を過ごすのがうれしくて、休みの前、あてもなく夜の街をうろついたことがある。都会とはいっても、そこは学生時代を過ごしたなじみの街で、実家暮らしの頃は決して見…

わたしが外人だったころ (たくさんのふしぎ傑作集)(第124号)

著者は1938年秋、16歳の時アメリカに留学し、ミドルセックス校を経てハーヴァード大学に入学する。大学入学後3年目に、日本とアメリカの間で戦争が勃発し、FBIから取り調べを受けた後、移民局付属の留置場につながれる。当時卒論作成中だった著者だが、…

アリクイサスライアリ(第267号)

アリというのは本当に身近な虫だが、これほど"知らない"虫もない。私が知っていることと言えば、地面に巣を作ること、集団で生活していること、くらいだろうか。アリはハチと仲間というのも、そういえば同じような形態の集団生活をしているなーと、言われて…

みんなそれぞれ 心の時間(第350号)

時間 それは全ての人間に同じように流れているわけではないと思うよ時間 それは感覚であって 生きたということはただの記憶でしかないって本で読んだ ーゆらゆら帝国「時間」アルバム『ゆらゆら帝国のしびれ』より 子育て中の親(おもに母親だろうが)で、「…

シュヴァル 夢の宮殿をたてた郵便配達夫 (たくさんのふしぎ傑作集) (第215号)

子供に戦国時代ブームが来ていた頃、実物を真似して自分の考える布陣図を書き付けていたり、厚紙と棒で軍旗を作ったり、プラレールの橋脚を使って城郭っぽいものを建てたりと、戦国ごっこを繰り広げていたことがあった。 思い返せば自分の子供の頃も、理想の…

アオムシの歩く道(第336号)

先日、授業参観に行ったら、理科の授業でモンシロチョウについて学習していたので、この号を借りてみた。最近はめったに読み聞かせをすることもなくなっているが、寝る準備をいつもより早めに済ませた子供が、珍しく何か読んで欲しいというので、久しぶりに…

かんたんレストラン 世界のおやつ(第122号)

今号は、巻末の「作者のことば」から引くと、 『かんたんレストラン・世界のおやつ』を作るのに、私は10か国の方々にお会いして、おやつのレシピを教わりました。お隣の韓国や中国、ハワイやアフリカ、南アメリカやヨーロッパから来た人たちです。 「あな…

アジアの台所たんけん(第213号)

3ヶ月分のパンを、皆で一斉に手作りするトルコの村*1。食事の順番こそ男性優先だが、二人で協力して夕食作りをするスリランカの夫婦。親類や近所の女の子たちに囲まれて、料理を教えながらごはん作りをするインドのおばあちゃん。家族総出で市場に出す、ソ…

河童よ、出てこい (たくさんのふしぎ傑作集) (第87号)

カッパといえば思い出すのが、西炯子の『Stayネクスト夏休みカッパと』。幼なじみ3人(男2・女1)が、カッパ探しに遠野まで出かける…という話だが、3人が住む、作品の舞台はおそらく作者の故郷である鹿児島県。けっこう遠いよなーと、かつて東京から自分…

虹をみつけに(第248号)

これは「虹の科学」の本ではなく、いわば「虹の芸術」の本だ。 昔の西洋や中国などでも、虹は神話や伝説、絵画や彫刻の題材として取り上げられてきたが、なぜか日本では、虹の絵さえ、中世になるまでほとんど描かれなかったということなのだ。 確かに、西洋…

街は生きている(第340号)

この本について的確に説明するのは、なかなか難儀なので福音館の内容紹介から引用してみる。 街は、毎分、毎秒、変わり続けている。いつもわたる横断歩道の信号機の黄色いスイッチのケースも。駐車場にある真っ赤な自動販売機も。川沿いの階段横の壁も。僕ら…

マーシャルの子どもたち-水爆の島(第139号)

本号の最後は、こう結ばれている。 太平洋のまん中の小さな島でおこっていることは、けっしてマーシャルの人びとだけの問題ではありません。核実験や原子力発電所の事故による放射能でくるしんでいる人びとが世界の各地にいます。もしも核戦争や原子力発電所…

小麦・ふくらんでパン (たくさんのふしぎ傑作集)(第92号)

学生時代、初めてイタリアを旅した時、感動したのがパンのおいしさだった。それまでも、スーパー併設のベーカリーで買った、焼きたてフランスパンのおいしさに、まるまる1本平らげるみたいなこともありはしたが、とにかくローマに来て、初めて食べた朝食の…

さかさまさかさ (たくさんのふしぎ傑作集) (第17号)

昔、高校の書道の授業で、篆刻をやったことがあるが、篆書体という特殊な漢字を使っていてもなおそれが単なる図形とも思えなくて、反対向きの文字を彫ることに、不思議な感じがしたことを覚えている。その学期の書道の成績は良かったので、器用さとは無縁の…

夢ってなんだろう (たくさんのふしぎ傑作集) (第11号)

本書の最後のページには「おかあさんへのお願い」と題し、次のような文章が載せられている。 子どもたちが見る夢を大切にしてください。たのしい夢にしても、こわい夢にしても、その中で子どもたちはいっしょうけんめいに生きたのですから。 それから、朝起…