今は亡き、子供の曾祖父母の家は専業農家だった。
たまに遊びに行くと、畑でとれた野菜をどっさり持たせてくれたものだった。米農家だったので、野菜はあくまで自家用に作ったもの。それでもさすがはプロ。商品としても通用するような立派なものだった。当然、おいしかった。
私の父も家庭菜園をやっていて、時折とれたものを送ってくれるが、やはり趣味の域を出ないものがほとんどだ。味は良くても形が悪かったり、形が良くても食感はいまいちだったり…。もちろん、口に出したりはしないけれど。
野菜の花を愛でる、じっくり観察する、ということに限っては、「野菜づくりのプロ」にはできないことではないかと思う。
『野菜の花が咲いたよ』の作者も、野菜づくりをしているが、畑がイノシシや虫に襲われても、収穫時期を逃した野菜が花を咲かせても、それすら楽しめるのはアマチュアだからだ。こういう「優しさ」を、農家の人がもつことは決してない。アマチュアだからこそ、「野菜の花のプロ」になれるのだ。
とはいえ、アマチュアになるというのも簡単ではない。
子供が学校から持ち帰ったミニトマトの苗は、ハダニにやられ、実どころか花を見ることすらなかった。
市のイベント「田んぼの学校」で作ったバケツ稲は、どうにか実るところまでいったものの、その短い花の命を観察する余裕はなかった。
世話をするだけで精一杯という状況でも、野菜の花を楽しむことはできない。何年にもわたって植物を育て、よく観察し、実りを得たものだけが、野菜の花と野菜のいのちを愛おしむことができるのだ。
同時に読んだ本。
「野菜の花」入門としてうってつけの本だと思う。子供向けと侮るなかれ。写真もきれいだし、本の作りも解説も簡潔でわかりやすい。フランスでどうやってジャガイモを食用として広めていったか、という逸話が面白かった。