読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

こどもと読むたくさんのふしぎ

福音館書店の月刊誌「たくさんのふしぎ」を読んだ記録です。

消えたエゾシロチョウ(第264号)

エゾシロチョウは、日本では、北海道にのみに生息する蝶だ。札幌市のHPを見ると、なんと衛生害虫のひとつらしい。

蝶というと花の蜜を吸う成虫のイメージが強いが、チョウ目の幼虫は、たしかに「農作物を荒らす害虫」だ。中でも単独ではなく、集団で食害するものは、被害も大きくなるだろう。エゾシロチョウもその一つのようだ。

エゾシロチョウは徹底した集団生活を送るらしい。本書によると、

いっしょに生まれいっしょに育ち、サナギになるのもいっしょ、チョウになるのも、交尾をするのもこれまたいっしょ、そのうえ、産卵場所もほとんどかわらない。 

幼虫の時期に集団生活をしないと、大きく育つことができないらしい。このような集団生活をするムシが、大発生するとどうなるのか。

この本でエゾシロチョウの「餌食」となるのは、エゾノコリンゴという樹木だ。春、芽吹きの季節。チョウの住みかと化したエゾノコリンゴの木は、その新芽をさんざん食べられてしまう。しかしエゾノコリンゴも負けてはいない。すぐに新芽を吹いて立ち直るのだ。

しかし、翌年もエゾシロチョウにやられることが続くと…今度は食べ尽くされた後、芽吹きをやめてしまう。すると、エサが不足するようになった幼虫は次々に死んでゆく。こうして幼虫が少なくなった後、また一斉に芽吹くのだ。

ただ、こうしたエゾノコリンゴの生き残り戦略も、6年目を迎えると敗色濃厚となり、草原の木たちは目に見えて弱ってくる。 木はもうダメなのか…と思われたところ、突如として幼虫が大量死する、という幕切れをもって、エゾシロチョウの物語は終わるのだ。作者の推測では、ある種のウィルスが関係しているのではないかということだが、はっきりした原因は定かではないらしい。

作者は獣医師という仕事をしているが、決して蝶の専門家ではない。本書は興味をもったもの(エゾシロチョウの大発生)を追い続け、観察した記録なのだ。自然は、自分が作り出す「物語」の結末を、すぐには見せない。時間をかけてじっくりと読み続ける者だけに、そっと教えてくれるのだ。

月刊 たくさんのふしぎ 2007年 03月号 [雑誌]