こどもと読むたくさんのふしぎ

福音館書店の月刊誌「たくさんのふしぎ」を読んだ記録です。

エゾクロテンのすむ森で(第314号)

先日家族で「東京都檜原都民の森」の自然観察イベントに参加した。

生物観察の先生、星座観察の先生、それぞれ机上の講義あり、解説つきの実地観察ありで盛り沢山の内容だった。

昼間は付近の森をゆっくり散策しながらの自然観察。先生の他ボランティアの方々も付いているので、いろいろな話を聞くことができた。

夜間は星空観察と、夜行性の小動物の観察。音をたてると逃げてしまうので、屋内から窓越しの観察だ。灯りは淡いライトだけだがけっこうよく見える。

この日はまずハクビシンがやってきた。のんびり動き回りながらエサを食べている。ハクビシンが退場すると今度はテン。テンはハクビシンと違って、ちょこちょこ落ち着きなく走り回っている。テンは夏毛への生え変わりの最中、まるでパンダのように見える。

そこへハクビシンが再登場。ハクビシンの方が強いので、テンは退散して行ってしまった。ハクビシンがいなくなると、ふたたびテンが複数でやってきた。今度はテンもすぐ逃げるのではなく、じりじり距離を取りながら、ハクビシンをのらりくらりやり過ごそうとする。そんなこんなの攻防戦を間近で見る子供たちは大盛り上がり。自然相手のこと、うまい時間にうまい具合に出てきてくれるとは限らないのだが、ちょうどよく、動物たちの小ドラマを見ることができた。

その後も興奮してあまり眠れなかったのか、子供は朝まだきより起き出して、観察部屋に行くと言い出した(夜間も自由に観察できる)。頭も体も起ききっていない親たちを待ちきれないとばかりに、双眼鏡とカメラをぶら下げ、テンが跳ねるように飛び出していった。

 

観察したテンはエゾクロテンとは種類が違うが、同属ではあるようだ。この号には美しい自然を背景にした、愛らしいエゾクロテンの写真がたくさん載っており、見るだけで顔がほころんでしまう。イベントでも、ふてぶてしい態度に見えるハクビシンは不人気で、彼らのせいでテンが行ってしまうと落胆の声が上がったものだ。

エゾクロテンは”警戒心の強い小動物”

かわいいけどなかなか見られない!エゾクロテンとは?│北海道ファンマガジン

のようだが、本号によるともともと好奇心旺盛な性質。作者がねぐらに通い始めてからひと月もすると存在に慣れ始め、名付けたテンたちに声をかけると反応し顔を出すまでになっている。

消えたエゾシロチョウ(第264号)』と同じく、ここには観察し続ける者だけが見ることができる「物語」がある。テレビで見られるようなドラマチックな映像はないけれども、辛抱強く彼らと関わり続ける作者の優しい目に、生き物たちの営みをしみじみと感じることができる。

月刊 たくさんのふしぎ 2011年 05月号 [雑誌]