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こどもと読むたくさんのふしぎ

福音館書店の月刊誌「たくさんのふしぎ」を読んだ記録です。

カリブーの足音 ソリの旅(第381号)

社会 301-400

春をさがして』はノースウッズの春を旅したものだったが、この『カリブーの足音』は冬のノースウッズを描いたものだ。旅の相棒は今回もウェイン。冬になると、今度はカヌーではなく木製のそりに荷物を載せ、自分の力で引きながら旅に出る。そんなウェインも、小型飛行機で森の奥深くまで出かけて旅するのは初めてのことらしい。

そりの重さはおよそ70kg。引綱を肩にかけて引っ張っていくらしい。寒い中での活動というのはそれだけでエネルギーを消費するので、鉢パンツ15kgどころでなく、大変な旅なのだと思う。しかもそりが引きやすい真っ平らな雪原だけではなく、森のなかの狭い木立の間や倒木の上なども通らなければならない。こういう場面こそ、ウェインの木製そりは本領を発揮するものらしい。

 

「作者のことば」で、大竹英洋は言う。

ところでこの絵本には、ウェインとぼく、野生動物たち以外に、大切な旅の仲間が登場しています。それは、そりやスノーシュー、防寒具といったさまざまな道具たちです。

移動に使うそりもスノーシューも、ずっと昔から狩りをしてきた人々が、この森で育つ木で作ってきました。羊の毛であるウールや、綿の布はヨーロッパから持ちこまれたものですが、ブーツやミトン、上着などの防寒着は、昔からムースやカリブーの毛皮で作られてきました。

つまり、ぼくたち人間は、植物や動物たちのたすけを借りなければ、きびしい冬を生きのびることができなかったのです。

 

自然に対する畏敬の念、というのは、死と隣り合わせの危険から生まれるものなのかも知れない。”自然の力の前では人間は無力” とはよく言われることだが、自然の力というものを大きく感じられる場所にいればいるほど、無力感も大きなものとなる。人間の力が及ばない、大自然の中では、死がすぐそばで口を開けて待っているのだから。

一方で、こういう場所でこそ、自然の美しさ、偉大さもより大きなものとして受け取ることができるのだと思う。私はこのような旅に出ることはたぶんないが、作者のような人が伝えてくれる、自然のきらめきを、ほんの一部だけでも受け取ることはできるのかもしれない。

カリブーの足音 (月刊たくさんのふしぎ2016年12月号)

カリブーの足音 (月刊たくさんのふしぎ2016年12月号)