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こどもと読むたくさんのふしぎ

福音館書店の月刊誌「たくさんのふしぎ」を読んだ記録です。

時をながれる川(第172号)

この本の主人公は、北海道沼田町にある「幌新太刀別川(ほろにたちべつがわ)」。冒頭では、

この、どこにでもあるような小さな川が、私たちを遠い昔に案内してくれるふしぎな川なのです。

と紹介されている。この川に沿って見られる崖や川床からは、たくさんの化石が見つかるそうだ。しかも、上流に行くほど古い時代の化石を見ることができるという。だから下流から上流に向かって歩くと、過去の時間へとさかのぼることができるのだ。これが”時を流れる川”というタイトルの由来である。

まず下流の、雨竜川という川と合流するあたりでは、”亜炭層”という黒い帯のような地層を見ることができ、これは200万年くらい前の地層で、アシなどのイネ科の植物の化石が折り重なっているのが見えるという。これらは湖の岸辺に生える植物なので、その頃ここには大きな湖があったことがわかるのだということだ。

そこから1.4kmほど上流にさかのぼると、今からおよそ300万年前の地層があらわれ、川床はあたり一面、浅い海に住む貝の化石であふれており、このあたりは浅い海だったことがわかる。ここは、殻が閉じたままの貝が多く見られるので、貝塚ではなく(人が食べた貝は殻が開いているので)、貝が生息しやすい海、たとえば土や砂が川から海に注ぐ河口のような場所だったと考えられるらしい。

このあたりから上流へ2kmほどの川床や崖には、二枚貝や巻貝など、およそ40種類の貝の化石が見つかるということだ。その貝に近い仲間は冷たい海に生息するので、当時の貝が住んでいた海も冷たかったのだろうと推測できる。中でもいちばん大きな貝は「タカハシホタテ」と言うらしい。沼田町化石館では、このタカハシホタテなどの化石採集会イベントを実施しているようだ。やってみたい。

タカハシホタテがすんでいた冷たい海には、ヌマタネズミイルカという動物が泳ぎ回っていたらしい。このイルカの化石は、野外授業中の近くの中学校の先生と生徒たちによって発見されたということで、およそ400万年前のものだ。

 

というように、どんどん上流にさかのぼって説明が加えられてゆく。それではなぜ、上流ほど古い地層があらわれるのか?それは、地下のマグマの働きで、この辺りの地層が持ち上げられ、その高く持ち上げられたところほど、川が勢いよく流れるので、川床が大きく削られることになったからだ。その結果、川の上流ほど古い時代の地層があらわれるという案配になる。

本書の最後はこう締めくくられている。

 数千万年をかけて水の底につもった地層は、数百万年かけて川によってけずられてきました。川は、いまもその営みをやめません。

 小さなこの川の流れも、雪どけのころには、ごうごうと川床をけずって流れ、また少し時間のページをはがしていきます。ぼくは、地下深くに広がっている大昔の世界を、ひとすじの川がけずった小さなすき間からのぞいて、いまもどきどきしています。

 いま、この川は、過去の時間を上流から少しずつけずっています。

 そして、最後に注ぎこむ日本海の底に、新しい地層として現在の時間をとじこめているのです。

”ゆく河の流れは絶ずして、しかももとの水にあらず”とは方丈記の言葉であるが、ゆく河の流れが、もとの、過去を覆うヴェールをはがしてくれるというのは不思議なことである。