こどもと読むたくさんのふしぎ

福音館書店の月刊誌「たくさんのふしぎ」を読んだ記録です。

いっぽんの鉛筆のむこうに (たくさんのふしぎ傑作集) (第1号)

創刊号というのは、あらゆる要素が詰まっている。その雑誌が何を目指しているのか、誰に向けて何を伝えたいのか、いちばん良くわかるのが創刊号だ。

このブログでは、私の趣味で、小学校の教科に合わせてカテゴリー分けをしているが、「たくさんのふしぎ」を教科で考えるのはナンセンスなことだ。というのは、創刊号であるこの『いっぽんの鉛筆のむこうに』には、国語も算数も理科も社会も図工も音楽もそして外国語まで、あらゆる教科のエッセンスが詰まっているからだ。

たくさんのふしぎ」を構想した松居直はこう述べている*1。 

 かねがね福音館書店で、月刊物語絵本「こどものとも」、年中版「こどものとも」、年少版「こどものとも」、そして月刊科学絵本「かがくのとも」を刊行してきて、幼児期の子どもたちの成長にながくかかわってきましたが、その子どもたちが小学校へ入ってからのつきあいが、定期刊行物としてはなく、できることならもうすこし子どもたちの成長とかかわりたいと思いつづけていました。しかし小学校教育では、幼児教育とは違って、枠組みがはっきりしていて、しかも教科の体系ががっしりと出来あがっています。それに合わせた企画で出版活動をしても、出版社としては少しもおもしろくはないし、全くわが意に沿いません。

 ちょうどこの頃、私たちの日常生活に、”もの”が急激にあふれはじめ、”もの”に振りまわされて、生きることの実感や意味が、日に日に薄れつつあることを感じはじめていました。子どもたちも、生きる喜びを見失っていくようにおもえました。子どもたちの好奇心をおもいきり引っぱり出し、想像力をはばたかせる、知的な冒険のできるおもしろい本を月刊誌の形でつくれないものか、それには学校教育の枠組みなど全く無視した、自由な発想、できれば奇想天外なものを考えてみるしかあるまいとおもっていたのです。しかも現代というこの時、この生活に足をつけ、しっかりと日常とつながりをもったものであること、その上で未来に対する展望を見失わない企画であること、時代に迎合することなく、のりこえてゆく力をもったもの、そういう企画をやって見たいと考えました。

 そのキーワードとして、”ひと”と”もの”を選びました。特に”もの”にこだわってみよう。”もの”をあらゆる面からみてみたら、どんな企画ができるだろう。徹底して即物的に”もの”だけを並べたカタログのような月刊誌をつくったら、子どもはかえって、そこから自由な発想を導きだし、楽しんでくれるかもしれない。大人が余計な口を出さないことが、今一番、子どもにとって嬉しいことかもしれない、などとも考えたのです。

 ”もの”をはっきりさせればさせるほど、かえって”ひと”が見えてくるともいえます。”もの”は結局、”ひと”との関係において”もの”としての意味をもつのだから、”もの”とは何かが、多様に感じられるような材料を提供することは、意味があるのではないか。こういうことを、行きつ戻りつ、積んだりくずしたり、あちこち壁にぶつかりながら考えているうちに、担当編集者がその考えを整理し、発展させ、形を整えて、ようやく「たくさんのふしぎ」の創刊号が陽の目をみたのです。

  「たくさんのふしぎ」の創刊当時、私も子供だった。ちょうど対象年齢の小学校中学年だった子供の私が、「ふしぎ」と出会うことはなかった。しかし、自分の子供が「たくさんのふしぎ」と出会うことができて、 いっしょに読むことができて、うれしく思う。すでに子供は私の読み聞かせを必要とはせず、自分で手に取って一心に読んでいるが、まだまだいっしょに楽しむことはできる。子供とともに読む幸せが、いつまでも続いてほしいと思う。

いっぽんの鉛筆のむこうに (たくさんのふしぎ傑作集)

いっぽんの鉛筆のむこうに (たくさんのふしぎ傑作集)

 

*1:『絵本の現在 子どもの未来』(日本エディタースクール出版部、2004年)、133-134頁