こどもと読むたくさんのふしぎ

福音館書店の月刊誌「たくさんのふしぎ」を読んだ記録です。

村を守る、ワラのお人形さま(第356号)

今回のゴールデンウィークは、子供が野鳥ブームということで、野鳥観察中心の旅をした。初日は、野辺山高原一帯に行ってみたが、この本によると夏冬の方がおすすめらしい。それでも、以前から見たがっていたヒバリを見ることができたり、キビタキの愛らしい姿と美しいさえずりを堪能することができたりで、子供も満足そうだった。宿泊は霊泉寺温泉。以前、真田丸関連の旅をした時に泊まって気に入った、松屋旅館に再び訪れた。鄙びたという言葉がぴったりの所で、快適さや便利さを求める人には向かないが、のんびり過ごしたい人にはホッとできる所だと思う。子供が鳥を見にきたというと、女将さんはお部屋の窓からキセキレイがちょこちょこ来てるのが見られるよ、とかお風呂の軒にツバメが巣を作ってるよ、とか教えてくださった。

二日目は、白馬方面へ向かったのだが、途中アルプス展望道路を通っていた時のこと。展望駐車場のようなところへ立ち寄って、北アルプスの美しいパノラマを撮っていたのだが、ふと駐車場の奥の方を見ると、何やら石碑のようなものがあって、その隣にはワラでできた人形のようなものがある。近寄って、ああ道祖神がいらっしゃるのだな、とぼーっと眺めていたら、突然、これは「村を守る、ワラのお人形さま」ではないか!と気がついた。帰宅して『村を守る、ワラのお人形さま』を読み返してみたら、ちゃんとこの「芦ノ尻の道祖神」が載っていた。

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芦ノ尻道祖神

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芦ノ尻道祖神の説明板

本号によると「人形道祖神」は、東北地方の各地に祀られているらしい。こうした風習は、平安時代に始まり、江戸時代にさかんになったと言われているそうだ。東北地方では冷害による凶作もしばしば発生し「今よりもずっと、人間の力ではどうにもならないことが多かった」。いったん病気がはやれば、なすすべもなく広がって多くの村人が亡くなることもあった。そんな「自分たちの力ではどうすることもできないこと」を、神様にお願いするために道祖神が作られたというわけだ。

人形はワラでできているので、藁仕事の一種であり、誰でもできることながら、一朝一夕には技術を習得できない難しい作業なので、村の長老たちから教わりながら若者たちのグループによって作られてゆく。村人総出で作り上げる作業は、「力を合わせた人形づくりで、村人の心もひとつになる。人形づくりは、なかよく暮らしていくために大切な、年に一度の行事」なのだということだ。

また、人形道祖神通過儀礼の役割も果たしてきたらしい。たとえば新潟県阿賀町夏渡戸の”ショウキサマ”は、重さが100kg以上もあるということで、道祖神の多くは村の外れに祀られているが、そこまで人の力で、背中にかついで運ばなければならない。ひとりで担げないと嫁さんをもらえないとか、一人前に扱ってもらえないということで、若者たちは交代で一生懸命運ぶのだそうだ。

村という小さな集団の中での生活は、時に窮屈を感じることもあるのだろうが、お年寄りにはお年寄りの、若者には若者の役割があり、皆が力を合わせて大事な神様を作って祀る、というのは楽しいことでもあるのだろうなと思う。それぞれ違った大きさや形、顔の様子などを見ると、楽しみながら作られているんだろうなあということがわかる。

おそらく雪や雨除けのために、大きな木の下に祀られていたり、屋根を取り付けている所もあるが、芦ノ尻の道祖神はかろうじて松の木が掛かるかか掛からないかくらいの所にある。神様に、美しく雄大な北アルプスの眺望を楽しんでもらうためだろうか?

村を守る、ワラのお人形さま (たくさんのふしぎ2014年11月号)