こどもと読むたくさんのふしぎ

福音館書店の月刊誌「たくさんのふしぎ」を読んだ記録です。

アリクイサスライアリ(第267号)

アリというのは本当に身近な虫だが、これほど"知らない"虫もない。私が知っていることと言えば、地面に巣を作ること、集団で生活していること、くらいだろうか。アリはハチと仲間というのも、そういえば同じような形態の集団生活をしているなーと、言われてみるまで気づかなかったし、今話題のヒアリも、刺されるとアナフィラキシーを起こすことがあるというのは、まさにハチ毒と同様であることがわかる。「毒をもって毒を制す」を地でいくのが蟻浴先生がイベントの時に動画を見せてくれたが、カラスが蟻を突っついて刺激しながら、怒った蟻を体(おもに羽)にまとわりつかせる様子が面白かった。

しかし、本号の主人公である、ツヤヒメサスライアリの恐ろしさは毒ではなく、その生態にある。ツヤヒメサスライアリは、巣を持たず、隊列を作って獲物を襲撃してくらすグンタイアリの仲間で、その獲物というのはなんと同種である、他のアリなのである。

その戦いの描写は酸鼻をきわめるもので、

ツヤヒメサスライアリが、オオズアリの巣口を見つけました。オオズアリの兵アリがツヤヒメサスライアリに気づき、ツヤヒメサスライアリに飛びかかっていきます。

兵アリたちは、手あたりしだいにツヤヒメサスライアリにかみついて、頭や脚を切り落としていきます。それでも、兵アリのまわりのツヤヒメサスライアリの数はふえるばかりです。とうとう、兵アリは何十匹ものツヤヒメサスライアリにかみつかれて、1匹、また1匹とばらばらに切りきざまれてしまいました。

といった具合なのだ。その後、オオズアリの巣(城といった風情か)に攻め入ったツヤヒメサスライアリは、幼虫やサナギに襲いかかり、ばらばらに切り刻んだオオズアリ共々、獲物を次々と運び出していきながら前進を始めるのだった。

巣を持たない生活というのは、子育てもまたキャラバンの中で行うということで「自分で歩くことのできない幼虫を、はたらきアリが口にくわえて、はこんでいます」ということになる。さすがに、さなぎから新しいはたらきアリが生まれてくるまでは、一時移動を中止するらしい。

繁殖も壮絶なもので、メスアリが交尾をするのは一生に一度だけ。その後はオスから受け渡された精子をお腹にためて、それを一生涯つかって、卵を受精させる。1回に何千という卵を産み落とすメスのために、それだけたくさんの精子を渡さなければならないので、長い時間をかけた交尾の後、オスアリは力尽きて死んでしまうのだ。交尾を済ませたメスアリは、体からフェロモンのようなものを出し、はたらきアリたちを引き寄せる。こうして新しい女王アリが誕生すると、交尾できなかった=女王になれなかったほかのメスアリたちは、はたらきアリに殺されたり、仲間から追い出されてしまうことになる。

「作者のことば」によると、ツヤヒメサスライアリの軍団が運んでいる獲物を調べてみると、1341個、48種のアリを捕まえていたそうだ。そんなにアリを食べていたら、森からアリがいなくなってしまうのでは?と思われることだろうが、襲うのは大きな巣を作っているアリだけで、そういった縄張りが大きくなると、かえって他のアリが住めなくなってしまうということで、アリ族全体の繁栄という視点から見ると、バランスを保つ上で役立っているのだろうということだ

 

本号は、説明文がある程度必要な内容にしては珍しく、絵を主体とした作りになっている。見開きをいっぱいに使った迫力のある絵に対し、説明文は小さなフォントで簡潔につづられていて、 中・高学年くらいの小さなグループに読み聞かせをしたら面白いだろうなあと思った(そういう機会は滅多にないのだが…)。