こどもと読むたくさんのふしぎ

福音館書店の月刊誌「たくさんのふしぎ」を読んだ記録です。

ニワシドリ あずまやを作るふしぎな鳥(第276号)

作者の鈴木まもる氏は、鳥の巣に特化した絵本を多く描いている。本号も、その鈴木氏の本領が発揮された、素晴らしい絵本だ。鳥そのものもさることながら、やはり圧巻は巣の絵の方だ。いや、ニワシドリのそれは巣ではない。あくまで「あずまや」であった。あずまやを作るのはオスだ。ニワシドリの巣は別にあり、それはメスが作る。オスはなんのために、こんな手の込んだ造形物を作るのか?それは、ひとえに求愛のためである。「ダーウィンが来た!」では、うんざりするほど見る光景だが、独身オスというものはあの手この手でメスに猛アピールして、必死に子孫を残そうとする。ニワシドリの場合、それが「あずまやの出来映え」ということになるわけだが、呆れるくらい大掛かりな工作物だ。知らずに見た人は、鳥が作ったとはとても思えないだろう。ここでも、小人が住む家ということで、「リリパット王国が存在した話」として紹介されている。

あずまやの紹介など、現物の写真を載っければいいじゃないか、その方がわかりやすいし…と思われることだろうが、鈴木氏の絵は、ニワシドリが一本ずつ集めて組み上げた木の枝の、それこそ一本一本をていねいに描き上げており、一生懸命材料を集め、渾身の力を振り絞って創り上げるニワシドリに、敬意を表しているとも感じられる仕上がりになっている。印刷でこれだから原画はどれだけ美しいのだろう。

「作者のことば」では、

ぼくも昔、奥さんになる人に絵を描いてプレゼントしました。

とあり、ニワシドリの「創作物」に、自らと重ね合わせるところがあったことが述べられている。

この記事によると、鳥の巣を集め始めたのは「ものづくりであることや、子どもの心を育てるということが絵本と共通すると感じるから」であったらしい。また、4浪して入学した芸大を中退するなど、端から見ると回り道の生き方をしてきた鈴木氏を支えていたのは、ご両親の力であることが書かれている。「子供が好きなことをするのを見守る」というのは簡単にできることではない。我が子が「好きなことをするのを見守った」結果、どうなるのか、誰も教えてくれないからである。だから、鈴木氏が「母は悩んでいたと思います」と言い、さかなクンのお母さんが「親は迷いながら、この選択があっていてほしい、という気持ち」と振り返るのに、ホッとした思いになるのだ。この人たちも自分と同じように、悩みながら迷いながら子育てしてきたのだな、と。

月刊 たくさんのふしぎ 2008年 03月号 [雑誌]