こどもと読むたくさんのふしぎ

福音館書店の月刊誌「たくさんのふしぎ」を読んだ記録です。

バシリスク 水の上を走るトカゲ(第316号)

本号は「1995年、ぼくははじめて中央アメリカコスタリカを訪れました。」という一文から始まっているが、コスタリカと聞いて思い出したのが「水曜どうでしょう」の「中米・コスタリカで幻の鳥を激写する!」という企画。鳥関連には目ざとい子供がTOKYO MXで放送しているのを見つけ、ゲラゲラ笑いながらこのシリーズだけ熱心に見ていた。…と思ったら「作者のことば」によると、そもそもコスタリカに行ったのは熱帯の野鳥を見ることが目的だったらしい。それがいきなりバシリスクの見事な水上走りを見て、鳥そっちのけでバシリスクを追いかけることになったのだと言う。

調べてみて気がついたが、新日本出版社から出ている「ネイチャーフォトストーリー 日本の野鳥」シリーズ、この著者こそ、本号の作者である嶋田忠氏であった。野鳥にあまり興味のない子にも、家の子のように野鳥好きの子供にも、ちょうど良い感じの写真絵本で、子供と共にシリーズ全部を読んでいる。

「作者のことば」は、"野鳥から爬虫類へ"と題されており、

 高校一年生の時に、野鳥を写したくて写真を始め、それからずーっと野鳥を中心に撮影してきましたが、このバシリスクとの出会い以来、海外のどこへ行っても、野鳥だけでなく、爬虫類やほかの生きものたちにも興味がむくようになりました。

と書かれているが、この時実に40代後半にさしかかるところ。プロとはいえ、長年の撮影対象を脇において新たな生き物を追いかける、というのはなかなかできることではない。素早く動き回る鳥と比べれば、ほとんど止まっているに等しい爬虫類の撮影は容易であるように思えるが、やはり難しいのは野鳥と同じく見つけること。本文でも、

観察をはじめたころは、見つけるのにひと苦労で、知らずに近づいてしまい、逃げられてはじめて気づくことのくりかえしでした。

との記述があり、警戒心が強いバシリスクは15メートルほどの距離まで近づいただけでも、すぐに逃げてしまうということだ。

ほとんど止まっているに等しいと書いてしまったが、実はバシリスクが水の上を走る速さはすごいスピードなのだ。現地で「キリストトカゲ」と呼ばれているバシリスクは、荒れた湖上を歩いて弟子たちのところへ向かったという"神の子"とは異なり、われわれと同じく重力の影響を受ける。沈まずに水上を渡るには、それなりの速さが必要なのだ。その速さは「1秒間に10枚も写すことができるカメラで撮影したのに、1メートルほどの距離を走る間に、たった3枚しか写っていません」というくらいのもので、それはアメリカの研究者の実験データによると「体重80キログラムの人が時速106キロメートルで走りぬける速さに相当する」らしい。まさに"Jesus Christ !"だ。

「作者のことば」によると、嶋田氏の最近の関心事は、ボルネオ島にすむトビヘビ、トビトカゲにトビヤモリなどの「飛ぶ爬虫類」であるそうで、興味が爬虫類に広がったとはいえ、野鳥好きの影響が見られるところが微苦笑を誘われる。

月刊 たくさんのふしぎ 2011年 07月号 [雑誌]

月刊 たくさんのふしぎ 2011年 07月号 [雑誌]