こどもと読むたくさんのふしぎ

福音館書店の月刊誌「たくさんのふしぎ」を読んだ記録です。

雑木林の1年 (たくさんのふしぎ傑作集)(第24号)

子供がお気に入りの公園がある。

ちょっとした起伏がある土地に雑木林が広がっている、自然豊かなところだ。ほどよく管理された公園は近隣の人びとに愛され、季節毎に植物や昆虫、野鳥などの観察イベントも開かれている。もうちょっと近所にあればちょくちょく出かけて変化を楽しめるのに、と思う。

『雑木林の1年』の舞台も、近所にあるちょっとした雑木林だ。ちょっとしたといってもまあまあ広さ。「作者のことば」によると、4年前まではざっと百メートル四方はあったそうだが、開発が進み五分の一ほどになってしまった。それでも107種類もの生きものがくらしていて、命の営みが繰り返されている。

圧巻は「生きもののくらしと季節」。1979年から1986年11月までの8年間の記録だ。ヤマザクラがいつ咲いたか、ツグミがいつ去ったかなど、生きもののくらしが表にあらわされている。春分秋分の日の区切りとともに、0℃以下になった日や30℃以上になった日も記録されている。その年の生きものの動きが、暑さ寒さとどう関係しているのかわかるようになっているのだ。暑さ寒さも彼岸までというのも数字で実感できる。変化を記録するのは大変だけど、新たな発見があったりして面白いものだ。

<生きものとのわかれを記録する>というコラムも興味深い。

君たちが、よくしっている生きもの、たとえば、ツバメならツバメが、いつあらわれて、いついなくなったかをしらべてみませんか。

「いつあらわれて」は簡単だが、「いついなくなったか」は意外と難しい。初認はその時見た1回で済むが、「いついなくなったか」を知るには、毎日欠かさずその日ツバメを見たかどうかを記録し続け後から振り返るしかないのだ。別れのときを知るのは案外難しいことがわかる。子供も買い物帰りに、あ、ツバメ初認だよ!と叫んでいたが、その後ツバメが「いついなくなったか」なんて、意識にものぼらないことだ。

 

作者は子供たちを雑木林へ誘う一方、歩き方についても注意を与えている。

<雑木林はゆっくり歩きましょう>ということで、

鳥は、もっと敏感。だから、鳥を見たり、鳥の声をききたかったら、しずかにしずかに歩くことです。ときどき立ちどまったり、林の中ですわってみるともっとよいのです。

子供らは常に走り回り、動きたがるものだ。「しずかにしずかに歩く」のはなかなか難しい。しかし、自然のものとお近づきになるためには、相手を良く知り近づき方を工夫しなければならない。自然相手はそこが難しいところであり、面白いところでもある。

作られたのはフィルムカメラ全盛時だけに、写真の質はそれほど良いとはいえない。植物や昆虫はともかく、動きのある野鳥は難しかっただろうなと撮影の苦労が偲ばれた。だがこの本の目指すのは、写真の美しさではない。さまざまな生きものを紹介することによって、雑木林という身近な自然の素晴らしさ、面白さを知ってもらうことなのだ。

世界には、いや、日本の中にでも、これよりもっとすばらしい自然は、いくらもありましょう。でも私たちにとって一番大切なのは、お年寄りも、体の弱い人も、小さい子も、いそがしくて遠出のできない人も、歩いてゆけるようなところにある身近な自然なのではないでしょうか。その、一番よい例が、町の中や町の近くにある雑木林だと思います。(本号「作者のことば」より)

3月号らしく、早春の可憐な花の写真から始まっている。なかのキンランギンランは「子供お気に入りの公園」にも生育している。ソメイヨシノも悪くはないが、今年は足下の「お花見」もしてみようと思った。どうせ子供は上(鳥)ばかり見るだろうが……。

付録「ふしぎ新聞」には『空をとぶ(第19号) 』の鐘尾みや子氏あてへの質問が。

「飛行機のそうじゅうは、何才から何才までできるのですか」。

作者自身が回答を寄せている。 

 飛行機の操縦には、ライセンス(免許)が必要ですが、ライセンスをとるための試験は17才から受けられます。それで飛行クラブなどはその少し前、16才ぐらいから練習ができるようです。

 また、身体検査の基準にも合格しなければなりませんが、1年ごとの検査に合格できるかぎり、何才までも操縦することができます。私の知っている人で75才の人がいますが、今も元気にひとりで飛んでいます。外国では80才のおばあさん、90才のおじいさんなんかが、どんどんひとりで飛んでいるそうですよ。

鐘尾氏は、現在68才くらいだろうか。日本女性航空協会の理事長を務める彼女は「今も元気にひとりで飛んでいる」に違いない。