こどもと読むたくさんのふしぎ

福音館書店の月刊誌「たくさんのふしぎ」を読んだ記録です。

ウミウシ (たくさんのふしぎ傑作集) (第221号)

夫がまだ夫ではなかった時、一緒に、どこだったかの海に遊びに出かけたことがある。

砂浜で砂を掘って遊んだり、箱メガネを使って生きものを観察したりと、夏休みの小学生みたいなことをしていた。磯にはアメフラシがたくさんいて、触ると紫の液を吐き出す様子が面白かった。近くの潮だまりに、捕まえたアメフラシを何の気なしに入れていたら、たくさん集めたくなってきて、近辺を探しまわっては放り込むという遊びに熱中してしまった。夫は「ウミウシ牧場だねー」と言って、面白がって集めてきてくれた。二人で収集したウミウシたちは、牧場とかいうのんびりした言葉とはかけ離れ、通勤ラッシュと見紛うばかりの過密さで潮だまりに詰め込まれた。窮屈そうに身をくねらせ、ここから出してくれと言わんばかりにうごめいていた。帰るときにみな、広い海に放牧してやったが、自由になったウミウシたちは思い思いに散らばっていった。われわれの間では、以来ウミウシを見るたびに「ウミウシ牧場」のことが話題に上る。

この『ウミウシ』には、さまざまなウミウシの写真が載っているが、その美しさときたらまるで現代アートのようだ。写真を見ているだけでも楽しい。私が集めたアメフラシは地味そのものの色合いだったが、こんなにバラエティ豊かにいるものだとは知らなかった。実際の海で、こんなふうにさまざまなウミウシを集めて見ることはないので、カラフルに並べられた様は本当に楽しい。

孵化したばかりのウミウシは「人間の目には見えない小ささで、しばらくの間、海中を浮遊して暮らします。そして潮に流されて、遠い海へと運ばれていきます。」ということだが、まさにプランクトンそのものではないか。本書には幼生の写真は載せられていないが、裏表紙の見返しのところに「ウミウシの一生」としてヴェリジャー幼生の解説が書かれている。ウミウシは巻貝の仲間だが、貝殻を持たない。しかし面白いことに幼生時代には貝殻をもっているのだ。貝殻で身を守っているのかと思いきや、その実ほとんどは魚などに食べられてしまうらしい。そんなこんなで無事成長したウミウシ最大の天敵は、同じ仲間であるウミウシそのもの。「あれこれと敵に食べられない工夫をこらしている」はずのウミウシの武器が、同じウミウシには通じないというのは当たり前のことなのかもしれないが…。

ウミウシ (たくさんのふしぎ傑作集)

ウミウシ (たくさんのふしぎ傑作集)