こどもと読むたくさんのふしぎ

福音館書店の月刊誌「たくさんのふしぎ」を読んだ記録です。

どうくつをたんけんする (たくさんのふしぎ傑作集) (第7号)

山口県に住んでいたとき、親たちや遊びにきてくれた友人たちを、必ずといっていいほど案内していたのが秋吉台。社会の教科書でおなじみの場所だが、関東住みの人は案外行ったことの無い人が多い。私自身、山口に来て初めて訪れることになった。

この『どうくつをたんけんする』の舞台も秋吉台。主人公の“かずおくん“を『夏休みに、どうくつをたんけんにきかせんか?』と誘うのが、“どうくつ研究所のせんせい”なら、かずおくんと一緒に探検に出るのが“みよちゃん”という子供であるのも『海藻はふしぎの国の草や木』と似たような設定で面白い。しかしみよちゃんは先生の娘であるので、この辺の地理の特色については、かずおくんに物を言えるくらいに詳しい。

先生が先導する洞窟探検はハードだ。ヘルメットを着け、懐中電灯片手に、肩まで水に浸かりながらずぶぬれになって進んでいく。頭を岩にぶつけ、水の冷たさに泣きそうになり、つるつる滑る岩を必死に登ってゆく。

着替えた後は、秋芳洞の観光ルートを歩きながら、鍾乳洞についてお勉強。鍾乳洞はどうやって出来上がっていったのか、鍾乳洞を構成する石灰岩は何を元にどうやって作られたのか、話は鍾乳洞だけではなく洞窟全般に、さらにはかつての人間が洞窟を住まいとして利用し、そこに絵を描いたりしていたことにまで及んでいく。最後は洞窟にすむ生きものたちの観察、そして彼らがどうやって生活しているのかについての話もあり、盛り沢山の内容となっている。

洞窟と言えば、今は亡き和田慎二の名作『銀色の髪の亜里沙』を思い出すが、自分の意志ではないとはいえ、亜里沙は洞窟を住まいとし、洞窟の生きものたちを糧に生活していた。すなわち、大昔の狩猟採集生活をしていた人間と同じ暮らしをしていたわけであり、生きるために身体能力も飛躍的に向上してゆく(これがお話の伏線の一つとなっている)。しかし『どうくつをたんけんする』で紹介されている洞穴生物たちは、どれもこれも食欲をそそらない生き物たちばかりだ。フィクションをリアルで想像するのもなんだが、亜里沙たちはずいぶん大変な生活を送っていたんだろうなあと思った。

私はもう、本格的な洞窟探検体験をするような体力も気力もないが、観光洞窟くらいならこれからも楽しめるだろう。本書の「世界の石灰岩地帯とどうくつ」として紹介されたページには、グローワームが生息するワイトモ洞窟も載っている。

観光洞窟はライトアップされたところも多く、秋芳洞のように、例えば「五月雨御殿」のように名所名を付けられていたりもするが、鍾乳洞はそれだけで美しいので、華美な照明を付けたり、看板のような人工物を置かない方がいいとも思う。観光地である以上、デコレーションを施すのは致し方ないことかもしれないが。

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ティエンクン洞(ベトナム)

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昇竜洞(沖永良部島)

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フーチャ(沖永良部島)

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フーチャは海蝕洞だが、本書の、

ところで、海水は石灰岩をとかさないんだよ。だから、ふたたび海に沈んだカリブ海の鍾乳洞なんか、そのままのこっているんだ。

という説明を読んで、水が石灰岩を溶かしてできた鍾乳洞とは異なり、フーチャは荒波による物理的な侵食によってできあがったものだということを改めて知った。

たくさんのふしぎ」は知識や経験が少ない子供たちでも楽しめるようになっているが、それまでの知識や経験が「たくさんのふしぎ」とつながる楽しみを味わえるのは、大人の方かもしれない。

どうくつをたんけんする (たくさんのふしぎ傑作集)

どうくつをたんけんする (たくさんのふしぎ傑作集)