こどもと読むたくさんのふしぎ

福音館書店の月刊誌「たくさんのふしぎ」を読んだ記録です。

浜辺のたからさがし(第97号)

桜島で大規模噴火による大量降灰を想定した車両走行実験を実施、というニュースを見た。

桜島の噴火リスク 鹿児島市は「防災と観光の両立」を目指す | 月刊「事業構想」2019年1月号

子供は、実験場に大量の軽石がごろごろ転がっている様子を見て連想したのか、

「そういえば、平塚でも小笠原から流れてきた軽石が見つかってるんだって。『浜辺のたからさがし』に書いてあったよ」

と言い出した。

そんな記述あったかな〜と思って読み直したらちゃんと書いてあった。よく読んでるなあ。

私も小学生の頃は、読んだ本をちゃんと覚えていた。すみずみまで読んで詳細も覚えていた。今のように読んでは忘れ、忘れては読んだり、読んだのも忘れて買ったりとか絶対にしなかった。読書は娯楽、忘れるのも醍醐味……とはいえこうも忘れたり読み飛ばしてたりすると、果たして読む意味はあるのだろうかと思ってしまう。

 

『浜辺のたからさがし』の舞台は、平塚の海岸。

見つかる「おたから」はさまざま。貝殻や流木、海藻といったおなじみのものから、空き缶などのゴミまで。5〜6月くらいはハシボソミズナギドリの死体が打ち上がることもあるという。多くは若鳥で、渡りの途中日本近海に飛んできたもののようだ。エサを十分にとれずに死んでしまうらしい。たくさん死ぬ年もあるようで、なぜかほぼ10年おきに巡ってくるとのこと。

珍しいものとしてはコアホウドリの死体も流れ着いている。作者の目は、羽毛の間にうごめく寄生虫にも注がれる。虫が生きているのは、死後あまり経っていないということなのだ。アホウドリの専門家に報告したところ、胃の中を開けてみたかどうかを聞かれている。ビニールやプラスチックを誤食する事故があるので、調べてみてほしかったようだ。惜しいことをしたと書かれている。

このコアホウドリの絵は見事。コアホウドリは、翼を広げると2メートル以上にもなる鳥だ。見開きどころか、前のページも合わせて4ページを費やし、その大きさを存分に表現している。自然観察絵本を多く手がける松岡達英氏ならではだ。

浜辺のたからさがし”の歴史は古い。唱歌でおなじみの『椰子の実』もそうだし『破船』のようなものも「おたから」に含まれるだろう。海に囲まれた日本では、ビーチコーミングなどといわずとも、漂着物を探し拾い集めるのは自然なことだったに違いない。もっとも『破船』のそれは恐ろしいお宝であったが。

お宝といっても多くはゴミだ。どんなに美しい浜辺でも、ゴミの吹きだまりのようなところがある。数年前訪れた「おとなもこどもも考える ここはだれの場所?」展でもそれを目の当たりにした。ヨーガン・レールによる作品の一つは、石垣島に流れ着く漂着ゴミで作られたもの。美しい照明作品の数々は、とてもゴミからできているようには見えない。

ヨーガン レールの照明がようやくお披露目。 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

汚らしく見えるゴミを、あえて美しい作品として仕立てる。年々増えゆくプラスチックゴミに対する憤りから来ているという。否、ゴミに憤っても仕方がない。プラスチック製品を大量消費し、プラスチックゴミを適切に処分しない人間に対する憤りだ。

本号発行は1993年だが、

野生の生き物をきずつけているゴミも少なくありません。プラスチックやビニールが海に浮かんでいると、ウミガメやアホウドリが飲みこんでのどにつまらせてしまいます。浜辺に落ちている釣り糸は、鳥のつばさや足にからみついて、その自由をうばってしまいます。

そこから20年あまり経った現在でも、事態は変わっていないことに気づかされる。

ウミガメの鼻からでてきたのは、なんとストロー【動画】 | ハフポスト NEWS

また、

プラスチックのこまる点は、それを食べたり腐らせたりする生き物がいないので、長い間そのままの形がかわらないことです。そのため、いつまでも景色を悪くしたり、生き物をきずつけつづけるのです。

と書かれているが、巡りめぐってこの「生き物」にわれわれ人間も入り得るかもしれないのだ。「我々は汚染する者であり、汚染される者でもあるんです」と警鐘を鳴らす研究者もいる。

第1回 忍び寄るマイクロプラスチック汚染の真実 | ナショナル ジオグラフィック日本版サイト

容器包装リサイクル法で、ペットボトルやプラスチック製容器包装はリサイクルが進んでいるではないかと思われることだろう。しかし国内だけでリサイクルをまかなっているわけではない。

ペットボトルごみがついに限界!? ~世界に広がる“中国ショック”~ - NHK クローズアップ現代+

受入国の事情が変われば、リサイクルも立ち行かなくなる。記事を見るとビジネスチャンスととらえ国内でのリサイクルを進めようとする動きもあるようだが、消費に対しての限界もある。リサイクル前提の大量消費は、岐路に立たされているといっても過言ではない。

今後はリデュース、つまりプラスチックゴミを減らす、プラスチック製品を減らしていくという方向に進んでいくだろう。いや、進んでいかなければならない。現にシアトルなどでは、プラスチックストローの全面廃止という規制も始められている。

プラスチックのストロー禁止、シアトル市 英米各地で規制の動き - NewSphere

私もペットボトルの無糖炭酸水を減らし、我慢の代わりにビール……ではなく、自宅でつくる麦茶に置き換えてみようかと思う。

 浜辺でたからさがしをつづけていたら、川から、海の底から、遠い島から、流れついたものが見つかりました。浜辺の自然は地球上のあらゆる場所とつながっています。そして今、私たち人間は、ゴミを出すことによって、そのつながりを乱しているのです。