こどもと読むたくさんのふしぎ

福音館書店の月刊誌「たくさんのふしぎ」を読んだ記録です。

絵とき 生きものは円柱形 (たくさんのふしぎ傑作集) (第235号)

6月に、多摩動物公園開園60周年記念講演会「生き物は円柱形──ゾウの鼻もライオンの足も、それからミミズも円柱形!」に参加してきた。息子含め小学生たちは真ん前のかぶりつき席、という贅沢仕様だ。

風船始めさまざまな小道具を駆使しての講演。子供たちに質問を投げかけたり、答えを聞いてレスポンスしたり。合間に歌も交えながら、あっという間の1時間。終わるのが惜しい、もっと聞いていたいと思わせる素晴らしいものだった。

講演会の後は、本の販売と即席サイン会。どの本も飛ぶように売れ、サイン会には長い列ができていた。私たちも『サンゴしょうの海 (たくさんのふしぎ傑作集) (第28号)』を買って、サイン会の列に並んだ。子供の名前でサインをいただき、一緒に写真を撮らせていただいた。先生は、たくさん手を挙げて質問に答えてくれていたね、と声をかけてくださった。子供はちょっと照れくさそうだった。

 

「生きものは円柱形」の前に、注目されるのは「生きものの平たい部分」。

生きもののからだでひらたいのはどういう部分か?それはどうしてなのか?講演会では小道具や身振り手振りを使って、質問と例示を繰り返し、ていねいに説明されていた。もちろん歌は欠かせない。「ひらたいてのひら」だ。本書にも歌詞と譜面が載っている。先生は気持ち良さそうに歌っていらっしゃった。

続いて「生きものは円柱形」の話。こちらも歌がある。その名も「生きものは円柱形」。♪円柱形〜のところは、拳を突き上げて一緒に歌いましょう!と呼びかけられ、えんちゅうけい!の叫び声が何回も響き渡る様はなかなかシュールで面白かった。しかしこれは『絵とき 生きものは円柱形』には載っていない。あるのは「円柱えかきうた」「円柱なかま」という歌だけだ。本号発行時点はできていなかったのだろうか?

「生きものは円柱形」の歌には、

“てこの原理の円柱形"

“円柱形は静水形"

“すばやく泳ぐ円柱は前後がスリムな流線型"

という歌詞が出てくる。

「てこの原理」は小5でやるけれど、会場にいる小学生の中には習っていない子もいるだろう。「静水形」「流線型」というのも聞き慣れない言葉だ。先生はこの辺も決して端折ることなく、ミミズやウマといった身近な生き物を例に、わかりやすく説明されていた。

 

先生によると「生きものは円柱形」の話は、小5の教科書に掲載されているという。調べたら光村の教科書(※平成23年度版)なので、来年きっと勉強することだろう。歌も紹介してくれるといいなあ。

2010年秋 本川達雄 1 | シーズン・インタビュー | みつむら web magazine | 光村図書出版

なぜ国語の教科書か?どうして理科ではないのか?

この円柱形は、数学的な意味での「円柱形」ではないからだという。生きものの体は、あるいは体の一部は、円柱っぽいからそう見立てましょう、ということなのだ。上記インタビューにも書かれているが、「生きものは円柱形」の章は、野口廣氏による「見立てる」という短文とともに構成されている。「見立てる」には、見立てるという行為が想像力に支えられていることが書かれている。野口氏は数学者、本川氏は生物学者、どちらの科学者も想像によって「見立てる」という、一見科学とは遠く見えることを語っているのが面白い。

 

講演で印象に残ったのは、「嫌いなことでもチャレンジしてみよう」ということ。数学的な、厳密な意味での「円柱形」も大事だし、アバウトに「円柱形」と見なそうという考え方も必要だ。どちらの見方が苦手 or 得意だとしても、どちらも必要だということ。だから、好きなことばかりでなく、嫌いなこと苦手なこととも付き合ってみよう、それが大人になるということでもある。

そして「会場を出た後、動物園を見て回ることだろうけれど、ぜひじっくり一つの生きものを観察してみてください」とおっしゃっていた。「1つのものをじっくり観察することが大事なんだよ」とまったく同じだ。しかし今回もどこまで子供に届いたかなあという感じ。先生方の言葉を理解するのは、まだまだ先のことだろう。 

絵とき 生きものは円柱形 (たくさんのふしぎ傑作集)

絵とき 生きものは円柱形 (たくさんのふしぎ傑作集)

「生きものは円柱形」には、ウナギは円柱形♪という歌詞もあるが、『ウナギのふるさとをさがして(第244号)』で紹介した塚本先生も教科書を書いていた。やはり国語だ。

世界一の「ウナギ博士」塚本勝巳と生命のロマンに迫る|WIRED.jp

ウナギの研究をしたおかげで、小学4年生用の教科書を書く機会を得たことでしょうか。それも理科とかでなく、国語。国語の教科書にわたしたちの調査の様子を書いたんです。

子供は今4年生じゃないか……と思って見ると、2学期配られたばかりの下巻に載っているではないか。いずれ音読の宿題で、いやというほど「レプトセファルス」を聞かされることだろう。