こどもと読むたくさんのふしぎ

福音館書店の月刊誌「たくさんのふしぎ」を読んだ記録です。

2017-01-01から1年間の記事一覧

昭和十年の女の子 大阪のまちで(第393号)

この本の主人公は“スミちゃん”。 平成29年現在10歳の女の子である"モモちゃん"の曾祖母だ。物語はモモちゃんがひいおばあちゃんのスミ子さんのところへ遊びに行くところから始まる。モモちゃんは昭和10年に10歳だったスミ子さんのアルバムを見ながら、当…

しめかざり (たくさんのふしぎ傑作集)(第274号)

スーパーで買い物していたら、サッカー台に「年末お買い物チェックリスト」なるものが置いてあった。我が家は年末年始、毎年双方の実家で過ごしており、正月準備をすることはない。このリストは不要のものということになるが、何となく気になって持ち帰って…

クリスマス・クリスマス (たくさんのふしぎ傑作集) (第57号)

クリスマスが嫌いだ。 気忙しい年末に、異教のイベントを突っ込まなくてもいいじゃないか。夫との交際中も、クリスマス・イヴを過ごすなんて一度たりともしたことがなかった。頭の中身も若過ぎた当時は、たとえ子供ができたとしても、クリスマスなんてやるも…

わが家は、野生動物診療所(第337号)

今朝、子供が学校へ向かって駆けていくのを、ひとり見送った。ふつうの朝の風景……と思われることだろうが、ここ数ヶ月の我が家では当たり前のことではなかった。 布団をかぶって登校の準備もままならない朝が始まり、思いきって1週間休ませてはみたものの、…

ズボンとスカート(第47号)

ブログのデザインテーマを一時的にでも変えてみて(『もじのカタチ(第305号)』)思ったのは、「たくさんのふしぎ」のロゴの変わらなさ。 創刊号から一貫して、基本のデザインは変わっていないのだと思う。「こどものとも」や「かがくのとも」は、ときどき…

もじのカタチ(第305号)

子供が突然、広告の裏に「ふ」の字をいろいろ書き始めた。 『もじのカタチ』に触発されてのことだとわかった。 元々ひらがなは漢字からできたんだよ、ということは教えていた。本書で「不」から「ふ」に変わっていく様がビジュアルで表現されているのを見て…

龍をおう旅(第83号)

本書は「作者のことば」によると、 龍は空想動物ですが、生きているがごとく東西の世界にいます。 その龍を見るために、中国からヨーロッパまでの大きな拡がりの中に旅立ちました。 ということで、古今東西の龍を求め旅したものだ。 龍を見つけるたびに、そ…

海のかたち ぼくの見たプランクトン(第391号)

プランクトン、と言われてはじめに何を思い浮かべるだろうか? ミジンコ?アオミドロ? しかし、この本に出てくるプランクトンは、そのような「典型的」なものではなく、サルパやゾエア、ヒラメやアンコウの稚魚など、私が“プランクトン”と認識していないも…

いちくんと古太鼓(第379号)

飯野和好の絵は、あくが強すぎる。正直なところ、大好きとは言いがたい。 それでも名作『あのときすきになったよ』や『おならうた』は、好きな作品のひとつだ。『あのときすきになったよ』など、飯野氏以外の絵は考えられない。 一方で『まのいいりょうし』…

野生動物の反乱(第313号)

白山から下りた後、宿泊したのが一里野温泉にある岩間山荘。ここのご主人は“マタギ”をしておられる。熊や猪の料理を堪能できる宿だ。女将さんのお料理は、家庭料理の延長線上にあるものだが、どれもこれもホッとできる味。本当においしかった。家庭料理とい…

ドイツの黒い森(第153号)

昨日のエントリーでいただいたコメントの、返信について補足。 「マイナスの面も含めた身近にある自然の姿」というのは、自然自体のマイナス面というより、人間活動の影響で生じたマイナス面、とするべきだったと思い直した。もっといえば、鮎が不味いという…

森はみんなの保育園(第320号)

「たくさんのふしぎ」で自然科学系の分野を書いている方々の多くは、子供のころ野山を駆け回っていたとか、虫捕りに夢中だったとかいう自己紹介が見られる。ああ幼少期の自然体験というのは、のちのち「役立つ」ものなんだなーとつい短絡的なことを考えてし…

木の実は旅する(第362号)

『あったよ! 野山のごちそう(第291号)』には、 どんなにおいしそうに見えても毒をもっている実もあるよ。 と書かれていた。 その「どんなにおいしそうに見えても毒をもっている実」の一つが、本書に出てくるドクウツギの実だ。「鳥と旅する木の実」という…

鳥の目から見たら(第39号)

子供は今、コンパスを使った作図を勉強中だ。 先生には「急がなくてもいいので、もう少していねいに線を引きましょう」と言われている。それでも初めて使うコンパスが楽しいようで、とくに垂線を引くのが好きらしい。 それにしてもなぜこんなに線が曲がって…

ウミガメは広い海をゆく(第174号)

先日、ウミガメ放流会についてのマンガを見た。 『ウミガメ放流会』が子ガメの命を奪う?実態を描いた漫画に考えさせられる 実は小笠原に行った時(『カタツムリ 小笠原へ(第366号)』)、私たちも「ウミガメの放流」イベントを見に行っている。 生後1年く…

あったよ! 野山のごちそう(第291号)

一緒に行こうよ"こくわ"の実 また採ってね ーDREAMS COME TRUE「晴れたらいいね」より 野山のごちそう……といえば、動物植物キノコなど、いろいろなものが思い浮かぶ。 英題にあるのは"Wild Fruits and Nuts"。だから『あったよ! 野山のごちそう』は、木の実…

月へ行きたい (たくさんのふしぎ傑作集)(第311号)

月へ行きたい!今すぐに。 夏休みもあとわずか。ぴりぴりムードな私と対照的に、肝心の子供はといえば、寝っ転がってのほほんと鳥の本を眺めているだけ。子供の宿題は子供のもの、私は関係ない!と割り切れればいいけど、まったく子供任せというわけにもいか…

カメラをつくる(第22号)

先日、子供と「ピンホール写真体験教室」に参加してきた。 カメラ自体はキットを使って作るものだが、作製したカメラを使って印画紙に撮影し、暗室で現像ネガ作りやプリント作りをする、本格的な写真体験だ。日本写真協会の先生方が、一人一人に作り方を指導…

はてなし世界の入口 (たくさんのふしぎ傑作集) (第2号)

「はてなし世界の入口」として、始めに登場するのがマトリョーシカ。 このマトリョーシカについて何気なく調べてみたら、沼田元氣氏の名前が出てきたのに驚いた。盆栽小僧の松ちゃん(『ぼくは盆栽(第126号)』)はマトリョーシカ(或はこけし)になってい…

動物たちが教えてくれる 海の中のくらしかた(第389号)

本書のテーマである、バイオロギングのことを初めて知ったのは『ペンギンが教えてくれた 物理のはなし』という本だった。タイトルの物理という言葉に怯みつつも、ジェンツーペンギンが表紙とあれば、読まないという選択肢はない。残念なことにジェンツーペン…

絵くんとことばくん (たくさんのふしぎ傑作集)(第181号)

ぼくはもう4年生なのにおこづかいが500円だ。 「これは少ない!」とぼくは思う。 で、お母さんに「1000円にして!」といいたいのだが、 口ではとてもかなかわないから、 ポスターをつくって、それをキッチンにはって、 それでお母さんにうったえよう…

アリになった数学者(第390号)

アリになった?数学者?何とも奇妙なタイトルだが、比喩ではなく本当に「アリになった数学者」の話であった。 数学者はなぜアリになったのか?それは「知るということ、わかるということは、自分ではない相手の心と、深く響きあうこと」だから。「数や図形の…

立山に咲くチングルマ(第323号)

夏の旅行の一部は、山登りをした。場所は白山。学生の頃以来なので、およそ20年ぶりとなる。我が子と一緒にふたたび山頂に立つなんて、学生時代の自分が知ったらさぞかし驚くことだろう。 この時期の白山は、お花(高山植物)がいっぱい。ということは人もい…

富岡製糸場 生糸がつくった近代の日本(第375号)

夏の旅行の一日は白川郷を訪れた。和田家住宅の中にはカイコの幼虫生体が展示され、「富岡製糸場からいただいた」と説明書きが付けられている。世界遺産つながりのやり取りかはわからないが、往時に養蚕をしていたことから、夏季限定で飼育をおこなっている…

こおり (たくさんのふしぎ傑作集)(第281号)

『ゆきがうまれる(第383号)』に先駆けて描かれた、同じコンビによる「氷」の本。 この号も雑誌と傑作集の表紙が異なっている。傑作集の方がインパクトはあるけれど、青系でシンプルにまとめられた雑誌の方が、私は好きだ。透かした氷の中に、ペンギンらし…

まちぼうけの生態学 アカオニグモと草むらの虫たち (たくさんのふしぎ傑作集)(第317号)

本書は、遠藤知二氏による“生態学”シリーズの一作目にあたる本だ。 三作目『すれちがいの生態学 キオビベッコウと小道の虫たち(第388号)』の「作者のことば」には、三部作の紹介が書かれている。 虫たちの出会いをめぐる3部作の完結です。第1作の『まち…

線とあそぼう(第382号)

線は、いつから「字」になるのだろう。 小学校入学前に子供が書いた字が残っているが、それは字というより、拙い線を組み合わせて作った記号や図形といった風体なのだ。今どきにしては珍しく、子供はお勉強のようなものを一切しない幼稚園にいて、親もあえて…

ことば観察にゅうもん (たくさんのふしぎ傑作集)(第277号)

『みんなでつくる1本の辞書 (たくさんのふしぎ傑作集)(第338号)』で、 ところが、この号だけ(だと思うが)は、48ページなのだ。 と書いたが、この『ことば観察にゅうもん』も同じく48ページ構成だ。 ちなみに、この本でイラストを担当する祖父江慎氏は『…

おいかけっこの生態学 キスジベッコウと草むらのオニグモたち(第364号)

『すれちがいの生態学 キオビベッコウと小道の虫たち(第388号)』の主人公が、キオビベッコウなら、こちらはキスジベッコウ(キスジクモバチ)という別のクモバチのなかまだ。 その名の通り、こちらもクモ狩りをするハチ。獲物となるのはコガネグモ科のクモ…

かぼちゃ人類学入門 (たくさんのふしぎ傑作集) (第75号)

かぼちゃ?人類学?はてさて何のことやら……と思うのも無理はないタイトルだ。 『迷宮へどうぞ (たくさんのふしぎ傑作集) (第46号)』で挿絵を担当した人物こそ、著者の川原田徹氏だ。『迷宮へどうぞ』には、“『かぼちゃ島』迷宮”という絵があり、カボチャの…