こどもと読むたくさんのふしぎ

福音館書店の月刊誌「たくさんのふしぎ」を読んだ記録です。

2017-01-01から1年間の記事一覧

南極の生きものたち(第369号)

南極といえば、以前書いたエントリー『コウテイペンギン撮影記(第201号)』が思い出される。南極へむかう行程さえハイテンションの感情をだだもれに書き綴っていた内山氏に対し、水口氏はあくまでフラットだ。内山氏が行った1990年代と比して格段に行きやす…

クモと糸(第360号)

このエントリーで書いた自然観察イベントの2日目の朝、雨はかろうじて上がったものの、森は濃い霧につつまれ、野外観察には向かない天気だなーとちょっと憂鬱に思いつつ、森の道を歩き始めた。ところがベテランレンジャーの方は、ほらほらと道の脇の茂みを…

すれちがいの生態学 キオビベッコウと小道の虫たち(第388号)

わたしは蜘蛛がなにより苦手だ。 ムカデに熱湯をかけることも、ゴキブリを叩き潰すことも厭わないが、蜘蛛だけはどうしてもダメだ。さすがにハエトリくらいは慣れた(見なかったふり)が、ジョロウグモ、コガネグモサイズは冷や汗もの。アシダカグモは問題外…

ニレの中をはじめて旅した水の話 (たくさんのふしぎ傑作集) (第98号)

本書の英題は、"The Water Tells his First Trip into the Elm Tree"。 主人公の「水」が、ニレの木の中を旅するという態で作られたお話だ。 水を擬人化した科学絵本といえば、名作『しずくのぼうけん』 がある。中学年の読み聞かせでよく使っているが、独特…

人がねむる 動物がねむる(第178号)

わが家の息子がいちばん口うるさく言われるのは、勉強ではなく「寝る時間」のことだ。「早く寝なさい!」という直接的な言葉はもちろん、「時間の管理ができてないよ」「せっかく早くご飯にしたのに寝る時間が遅かったら意味ないんだよ」「睡眠不足になると…

迷宮へどうぞ (たくさんのふしぎ傑作集) (第46号)

はてなキーワード(現「はてなブログ タグ」)で「たくさんのふしぎ」には、 “マニアックな題材、作家選びがされており” との説明がある。 『迷宮へどうぞ』の著者、種村季弘ほどマニアックという言葉が合う人もいないのではないか。私が彼の名を知ったのは…

セミのおきみやげ (たくさんのふしぎ傑作集) (第29号)

『バッタのオリンピック (たくさんのふしぎ傑作集)(第6号)』と同著者による本。 セミの種類、分布場所、身体の図解、「絵とき検索」による同定の仕方まで、詳しくていねいに描かれている。もちろんメインの“セミのおきみやげ”=ぬけがらについても、ぬけが…

音楽だいすき (たくさんのふしぎ傑作集) (第27号)

「作者のことば」は、題して“音楽をすきになった日”。 作者である翠川敬基氏は、こんなことを告白している。 今のぼくの仕事は、音楽を演奏することです。もちろん音楽は大好きです。でもぼくが君たちの年齢のころは、あまり音楽が好きではありませんでした…

ニワシドリ あずまやを作るふしぎな鳥(第276号)

作者の鈴木まもる氏は、鳥の巣に特化した絵本を多く描いている。 本号も、鈴木氏の本領が発揮された、素晴らしい絵本だ。鳥そのものもさることながら、やはり圧巻は巣の絵だ。いや、ニワシドリのそれは巣ではない。あくまで“あずまや”だ。あずまやを作るのは…

電子の虫めがね(第184号)

「電子の虫めがね」とは、電子顕微鏡のこと。 虫めがねという言葉は、拡大鏡の意味だけではない。撮影対象が虫であるという、二重の意味がかけられているのだ。 そもそも虫眼鏡とは?虫を見るために作られたものなのか?語源をネットで調べてみたら、確かに…

夜へ行こう(第278号)

夜が好きだ。 就職して一人暮らしをしていた頃、夜を自由に使えるのがうれしくて、都会の夜を過ごすのがうれしくて、あてもなく街をうろついたことがある。都会といっても、そこは学生時代を過ごしたなじみの街。実家暮らしの頃は決して見ることのなかった深…

わたしが外人だったころ (たくさんのふしぎ傑作集)(第124号)

著者は1938年秋、16歳の時アメリカに留学する。 ミドルセックス校を経てハーヴァードに入学。入学3年目、日本とアメリカの間で戦争が勃発する。FBIから取り調べを受けた後、移民局付属の留置場へ。当時は卒論作成中だったが、教授の取り計らいで、留置場…

アリクイサスライアリ(第267号)

身近にいながら、アリほど“知らない”虫もない。 知っていることといえば、地中に巣を作るとか、集団生活してるとかくらい?アリとハチが仲間というのも、そういえば同じような集団生活してるなーとか、ヒアリでアナフィラキシーってそういやハチ毒と同じだな…

みんなそれぞれ 心の時間(第350号)

時間 それは全ての人間に同じように流れているわけではないと思うよ時間 それは感覚であって 生きたということはただの記憶でしかないって本で読んだ ーゆらゆら帝国「時間」アルバム『ゆらゆら帝国のしびれ』より 子育て中の親(おもに母親だろうが)で、「…

シュヴァル 夢の宮殿をたてた郵便配達夫 (たくさんのふしぎ傑作集) (第215号)

子供に戦国時代ブームが来ていた頃、戦国ごっこを繰り広げていたことがあった。 実物を真似して自分の考える布陣図を書き付けたり、厚紙と棒で軍旗を作ったり、プラレールの橋脚を使って城郭っぽいものを建てたり。 思い返せば自分も、理想の家を考えてはお…

アオムシの歩く道(第336号)

授業参観に行ったら、理科でモンシロチョウを学習していた。最近はめったに読み聞かせしてないが、夜、珍しく子供が何か読んでほしいという。モンシロチョウに関わる、この『アオムシの歩く道』を使って、久しぶりに読み聞かせをすることになった。 著者は、…

かんたんレストラン 世界のおやつ(第122号)

今号は「作者のことば」から引くと、 『かんたんレストラン・世界のおやつ』を作るのに、私は10か国の方々にお会いして、おやつのレシピを教わりました。お隣の韓国や中国、ハワイやアフリカ、南アメリカやヨーロッパから来た人たちです。 「あなたの国の…

アジアの台所たんけん(第213号)

3ヶ月分のパンを、皆で一斉に手作りするトルコの村*1。食事の順番こそ男性優先だが、二人で協力して夕食作りをするスリランカの夫婦。親類や近所の女の子たちに囲まれ、料理を教えながらごはん作りをするインドのおばあちゃん。家族総出で、市場に出すソム…

河童よ、出てこい (たくさんのふしぎ傑作集) (第87号)

カッパといえば思い出すのが、西炯子の『Stayネクスト夏休みカッパと』。 幼なじみ3人(男2&女1)が、カッパ探しに遠野まで出かけるが……というお話。3人が住むのは、おそらく作者の故郷である鹿児島県。鹿児島から岩手ってかなりの距離だ。かつて東京か…

虹をみつけに(第248号)

これは「虹の科学」ではなく、いわば「虹の芸術」の本だ。 昔の西洋や中国などでも、虹は神話や伝説、絵画や彫刻の題材として取り上げられてきたが、なぜか日本では、虹の絵さえ、中世になるまでほとんど描かれなかったという。 確かに、西洋画では何度も見…

街は生きている(第340号)

この本について的確に説明するのは、なかなか難儀なので福音館の内容紹介から引用してみる。 街は、毎分、毎秒、変わり続けている。いつもわたる横断歩道の信号機の黄色いスイッチのケースも。駐車場にある真っ赤な自動販売機も。川沿いの階段横の壁も。僕ら…

マーシャルの子どもたち-水爆の島(第139号)

本号の最後は、こう結ばれている。 太平洋のまん中の小さな島でおこっていることは、けっしてマーシャルの人びとだけの問題ではありません。核実験や原子力発電所の事故による放射能でくるしんでいる人びとが世界の各地にいます。もしも核戦争や原子力発電所…

小麦・ふくらんでパン (たくさんのふしぎ傑作集)(第92号)

初めてイタリアを旅した時、感動したのがパンのおいしさだった。 日本のベーカリーだってもちろん、焼き立ては格別だ。気がつくとバゲットをまるまる1本平らげていたこともある。しかしとにかくローマに来て初めて食べた朝食のパンは、味も食感もそして香り…

さかさまさかさ (たくさんのふしぎ傑作集) (第17号)

昔、高校の書道で篆刻をやったことがある。 篆書体という特殊な書体は単なる図形とも見えなくて、反対向きの文字を彫るのに不思議な感じを覚えたものだ。その学期の成績はまあまあ良かったので、不器用な私にしてはうまく仕上がったのだと思う。名字は画数が…

夢ってなんだろう (たくさんのふしぎ傑作集) (第11号)

最後のページには「おかあさんへのお願い」と題し、次のような文章が載せられている。 子どもたちが見る夢を大切にしてください。たのしい夢にしても、こわい夢にしても、その中で子どもたちはいっしょうけんめいに生きたのですから。 それから、朝起こすと…

いのちのひろがり (たくさんのふしぎ傑作集) (第361号)

バス待ちをしている時、突然、子供が手近にいるアリを手に乗せて、 「このアリもぼくの祖先なんだよ」 とか言い出した。 何のこっちゃという感じだが、ああ、借りてきている『いのちのひろがり』を読んだんだなと思い当たった。 この本は雑誌発行時に読んで…

ハクチョウの冬ごし(第309号)

本号は「作者のことば」によると、 私の住む山形県鶴岡市大山には、今でも貴重なブナ林のある高舘山と八森山があります。 八森山のふもとに上池があり、高舘山のふもとに下池があります、このふたつの山も池も、私の幼いころからの動植物の観察の場であり、…

ぼくは少年鉄道員 (たくさんのふしぎ傑作集) (第242号)

この号は珍しく、雑誌と傑作集の表紙が異なっている。 雑誌は、地味目の背景に正面からやってくる列車の色が映えて、かわいらしい感じだ。傑作集は傑作集で、空の色と列車のカラーと地面の緑が調和してとても美しい。どちらも捨てがたい。 本の舞台は、ドイ…

海藻はふしぎの国の草や木 (たくさんのふしぎ傑作集)(第62号)

ふだん何気なく食べているワカメ。そのワカメについて何を知っているだろうか? 私が知っているのは、せいぜい「どう食べるか」ということくらい。こんなの知っているうちには入らない。ワカメだけではない。子供が大好きな海苔の原料にしても、子供が好まな…

アマガエルとくらす (たくさんのふしぎ傑作集)(第168号)

この本は、となり町の子供遊び場に出かけた時、そこの絵本コーナーに置いてあったものだ。暑さの残る秋の日、鉄道高架下の遊び場は、風がほどよく吹き抜けとても気持ちがよかった。近隣の公園でもいつだったか、絵本を展示していて自由に読めるというイベン…