こどもと読むたくさんのふしぎ

福音館書店の月刊誌「たくさんのふしぎ」を読んだ記録です。

2021-01-01から1年間の記事一覧

日本海のはなし(第410号)

『日本海のはなし』。 いつもながら「たくさんのふしぎ」のタイトルはシンプルすぎる。 知らんで書店や図書館にあったとしたら、私は手に取るだろうか。興味を引くタイトルでなかったとしても、各号欠かさず読む(読みたいと思う)のは、ひとえに「たくさん…

わたしのスカート(第236号)

わたしの村、フアイソン村です。 それどこ? ラオス北部、フアパン県、 サムヌア郡にある村(Houayxon Village)だ。 わたしこと、マイはモン族の少女。車も上がって来られない、山に囲まれた地域に住んでいる。 ラオスには多数を占めるラオ族のほか、50くら…

ハチという虫(第435号)

今年度のラインナップを見て、もちろん楽しみにしていた。 『ぼくが見たハチ(第161号)』で、寄生バチに興味をもった身としては、楽しみにしないわけがない。 期待に違わず、素晴らしい絵本だった。 どのハチもキラキラ輝いている。 ともすれば暗くなりがち…

おじいの海(第230号)

これは、おじいのショートフィルムだ。 表紙はさしずめスチル写真。裏表紙のおじいは、映画スターのようにかっこいい。 モノクロを基調とした映画は、おじいが海にいるときだけ色をもつ。海は人生そのものだから。おじいの人生は、海によって彩られているの…

バルセロナ建築たんけん (たくさんのふしぎ傑作集) (第84号)

通っていた大学近くに、ガウディを思わせる建築物があった。 日本のガウディと呼ばれる男。建築家・梵寿綱インタビュー|美術手帖 通学などの動線から外れていたこともあり*1、チラッとしか見たことはないが、殺風景なビル群の中、そこだけ異様な佇まいを見…

山里でくらす 中ノ俣の一年(第434号)

山菜採りもするといって出かけていった(『写真の国のアリス(第192号)』参照) 我が家の男どもは、フキノトウだのよくわからない草だのを袋に詰めて帰ってきた。 よくわからない草(名前忘れたけど、食べられる草)はおひたしに、フキノトウは天ぷら風にし…

パリ建築たんけん(第117号)

子供のころ、いちばん行ってみたい外国はフランスだった。 大人になったら絶対行く。ルーブルやオルセーで絵を観たり、凱旋門や大聖堂とか名所観光するんだ!と思っていた。 それがどうか。大人になってン十年経つけれど、足を踏み入れてすらいないのだ。い…

コククジラの旅 (たくさんのふしぎ傑作集) (第40号)

ぼくは子どものころから、クジラという動物にあこがれていました。ぼくたち人間とおなじ哺乳類でありながら、一生を海のまっただなかですごすなぞ(・・)にみちたくらしと、それに何よりその大きさにひかれていました。 いつか、ほんとうに大海をおよぐクジ…

ハチヤさんの旅 (たくさんのふしぎ傑作集) (第26号)

「ハチヤさん」が住むのは、鹿児島県は鹿屋市。しかし住むのはほんの半年ほど。残りの期間は旅をして過ごしているのだ。なんのための旅か?ハチミツをとるための旅だ。ハチヤさんはミツバチを連れ、鹿屋から、遠くは北海道・更別まで旅をし続ける。花の開花…

光をつむぐ虫(第188号)

光、つむぐ、虫。 発光生物の話だろうか? だがこれは、虫の話ではない。 虫は登場するけれど、光るのは虫ではない。 話のまくらは、小学生の頃の体験。 虫とりにつかれて、ふと空を見上げると、緑の葉のすきまから、まっ青な夏の空がのぞいていました。お日…

写真の国のアリス(第192号)

本号のテーマは写真。 アリスを主人公にすえ、不思議の国ならぬ“写真の国”に迷い込み冒険するという態で描かれている。 本家アリスは風刺漫画家の手で描かれ、グロテスクとも思えるテイストだが、こちらのアリスはメルヘンチックでかわいらしい。本家よりこ…

貝ものがたり(第149号)

ホッキ貝のシーズンだ。 東北へ来たばかりのころ、ホッキ飯食べてめちゃくちゃおいしかったので、今シーズンは自分でも作ってみようと思っていた。スーパーで生貝が出回り始めたので、さっそく購入。バラ売りのをひとつ、トングでつかんだらぴゅっと水を吐き…

ヒツジのおくりもの (たくさんのふしぎ傑作集)(第21号)

東北の現住地もだいぶ暖かくなってきたが、今冬はほんっとに寒かった。ずっといる人も、そう言うんだからまちがいない。東京時代はほとんど着なかったセーターが大活躍。なかでもウール。アクリル混紡のもあるが、ウール100%がだんぜんあったかい。これにダ…

ひと粒のチョコレートに(第433号)

菓子づくりはむずかしい。分量をきちっと計り、レシピどおり手順を踏んでるつもりが、うまくできない。 とくに厄介なのがチョコレートの扱いだ。テンパリングなんて繊細すぎる作業に懲りて、チョコレート菓子を作るのは早々にあきらめた。プロのもの買ったほ…

御殿場線ものがたり (たくさんのふしぎ傑作集) (第12号)

東京駅から新幹線の「ひかり号」に乗って、25分くらいたったら、車窓のながめにちゅういしてください。相模平野をすぎて、みじかいトンネルがつぎつぎにつづく丘のなかを走っているはずです。 と、とつぜん、あたりがあかるくひらけ、左に相模湾、右前方に箱…

ドキドキドキ心ぞうの研究 (たくさんのふしぎ傑作集)(第31号)

子供が赤ちゃんだった頃、心拍数の高さに驚いたことがある。胸に手を当てると、 トクトクトクトクトク とものすごい速さで脈打っている。夫と、小動物みたいだねーと話していたものだ。その小動物も、今や中学生にならんとしている。心拍数も大人なみに落ち着いてきた…

世界の子ども きょうから友だち(第169号)

ぼくは、さまざまな家の写真をとるために、世界じゅうの国に行く。 そして行った先々で、たくさんの子どもたちと出会った。 著者は、世界各地の家をカメラに収めてきた人だ。 「たくさんのふしぎ」でも、 『世界あちこちゆかいな家めぐり (たくさんのふしぎ…

ロバのつくった道(第237号)

道は道でも(『道 ーきみと出会いにー(第218号)』)こちらの道は、スケールが違う。 人と動物が作った道、という点では変わりはないけれど。 道の始まりは獣道。人もけものの一部だから、ひとの道だってけもの道なのだ。人もけものも必要があって通る道。…

アザラシに会いたい(第240号)

「会いにいけるアイドル」ならぬ「会いにいけるアザラシ」。 といっても、 アザラシは、動物園や水族館で見ることができます。 だから、そんなん珍しいものじゃないでしょ。 でも、野生のアザラシを見たことがある人は少ないのではないでしょうか。 じつは、…

アメリカ・インディアンはうたう (たくさんのふしぎ傑作集)(第18号)

朝刊を読んでいたら、『アメリカ・インディアンはうたう』に触れた記事が出ていた。 多彩な音楽の絵、詩の「片思い」 故堀内誠一さん×谷川俊太郎さん、『音楽の肖像』出版:朝日新聞デジタル 民族の多様性や社会的弱者へのまなざしをたたえた『アメリカ・イ…

道 ーきみと出会いにー(第218号)

布クロスの上にかかるフォトフレーム。写真にうつるのは緑。木漏れ日が落ち込む地面には、道がついている。魁夷の《道》のように、画面の真ん中をつらぬいているが、様相はまるで違う。 飾り気のない表紙。あまりに簡素なため、フォトフレームの作る影さえ装…

どこでも花が……(第259号)

たくさんのふしぎには、勝手に「…シリーズ」と呼んでいるものがある。 『ほら、きのこが… (たくさんのふしぎ傑作集)(第127号)』 『ここにも、こけが… (たくさんのふしぎ傑作集) (第195号)』 と、この『どこでも花が……』の3冊だ。 どれも身近な、だれで…

ナイル川とエジプト (たくさんのふしぎ傑作集)(第35号)

“エジプトはナイルのたまもの” 世界史を勉強すれば当たり前のように聞く言葉だ。エジプト文明が栄えたのはナイル川のおかげ、みたいな意味でとらえていたように思う。ヘロドトスの『歴史』からひっぱってこられたものだけど、実はそういう意図で書かれたので…

海と川が生んだたからもの 北上川のヨシ原(第432号)

大きな地震があった。 こんな規模の地震は初めてだ。とりあえずという感じの対策はしていたけど、食器棚が倒れてなかの物がだいぶ割れてしまった。 先の震災は鹿児島にいたし、その前も比較的地震の少ない地域にいた。東京含め関東で暮らしていた頃も、さい…

重さと力 科学するってどんなこと?(第301号)

引力、重力、遠心力。 その意味や理解はともかく、ふだん当たり前のように使っている言葉だ。 だれが“創った”か知っているだろうか?これらの言葉を発明したのは、誰あろう阿蘭陀通詞だ(『ガリヴァーがやってきた小さな小さな島(第223号)』)。 中野柳圃…

ポスター(第258号)

ご存知だろうか? しばらく前から、たくさんのふしぎのうち4冊が、無料公開されているのだ。 期間限定なので、いつ終了するかわからない。今のうちにぜひ見てみてほしい。ただし、スマートフォンではなく、パソコンやタブレットで見ることを強くおすすめす…

つばさをもった恐竜族 (たくさんのふしぎ傑作集)(第30号)

『つばさをもった恐竜族』……ふんふん、鳥のご先祖の話ですよね?だったら『鳥類学者 無謀にも恐竜を語る』をいっしょに読んでみたら捗るんじゃね? と思って、川上先生の本を読み始めたところ。 初っ端、恐竜の分類でつまずく。鳥盤類?竜盤類って?角竜類だ…

いろ いろ いろ いろ(第203号)

今回のクリスマスプレゼントは、160色の色鉛筆だった。子供のリクエストだ。箱の中からつぎつぎセットが出てくるのに、えーまだ下にあるよ!と驚く様子が面白かった。 わたしも子供のころ、多色セット欲しかった。ずらっと並んだ色鉛筆。色を見るだけでも…

知床 わたしの動物カレンダー(第262号)

今朝は気温が氷点下23度、この冬いちばんの寒さです。寒さで顔がヒリヒリします。でも天気は快晴、じっとしているのがもったいないので、板の裏に滑りどめのついたスキーをはいて、森の散歩に出かけることにしました。私はこの季節こそ、森歩きがもっとも楽…

ガリヴァーがやってきた小さな小さな島(第223号)

『小さな卵の大きな宇宙(第166号)』もそうだったが、『ガリヴァーがやってきた小さな小さな島』もなかなかに不思議な本だ。なんせ語り手は、あのガリヴァー旅行記の主人公、レミュエル・ガリヴァーなのだから。 ガリヴァーが何を語るというのか? 小さな小…