こどもと読むたくさんのふしぎ

福音館書店の月刊誌「たくさんのふしぎ」を読んだ記録です。

社会

ひと・どうぶつ行動観察じてん (たくさんのふしぎ傑作集)(第120号)

女性たちのご多分に漏れず、痴漢被害に遭ったことがある。 最近は、子供が幼稚園の時。夏休みのイベントに出かけるため、通勤ラッシュにかかるかかからないかくらいの時間に、電車に乗っていたときのことだった。Tシャツにジーンズ、化粧っけもない「ただの…

10才のとき (たくさんのふしぎ傑作集) (第73号)

福永祐一がダービージョッキーになった。 ウィニングランの馬上で涙をこらえる様子を見て、そういえばこの人も偉大な父の栄光に影響を受けざるを得ない人だったなあと思い出した。勝利ジョッキーインタビューで、お父さんにいい報告ができますね、みたいなこ…

飛びたかった人たち(たくさんのふしぎ傑作集) (第66号)

鳥は飛べる形 空を飛べる形僕らは空を飛べない形 ダラダラ歩く形 ダビンチのひらめきとライト兄弟の勇気で僕らは空を飛ばないかわり月にロケットを飛ばす ー↑ THE HIGH-LOWS ↓「バームクーヘン 」アルバム『バームクーヘン』より 「空を飛べない形」であるに…

ぼくの南極越冬記(第250号)

つい先日、南極からハガキが届いた。 昨夏訪れた情報通信研究機構のイベントで「南極ゆうびん」をやっていたので、子供と一緒に自宅宛てに書いてみたのだ。「投函したハガキは船で南極に運ばれ、NICT職員が局長を務める南極昭和基地郵便局の消印が押印されて…

おじいちゃんのカラクリ江戸ものがたり(第299号)

『おじいちゃんのカラクリ江戸ものがたり』は、後に増補改訂されて『カラクリ江戸あんない』という本として出版された。 月刊誌は、いまいち読みにくいところがあるなあと感じていたが、『カラクリ江戸あんない』は、そこをていねいに描き直し、シーンも付け…

魔女に会った (たくさんのふしぎ傑作集) (第95号)

きょう、子供は魔女に会った。 魔女というより、鬼婆だろうか。もちろん鬼婆とは私のこと。子供の机はリビングにあるが、机の上のみならず机周りは要るもの要らないものがごっちゃになって積み重なっており、目に余ることこの上ない。新学期を前にして、いつ…

外国の小学校 (たくさんのふしぎ傑作集) (第13号)

アメリカの小学校は、土曜日はいつも休みなんだ。つまり週5日制。 アメリカ合衆国はサウスサンフランシスコ市にある、ポンデローサ小学校を紹介した文の一部だ。この本が出版されたのは1986年。私も小学生、その頃は毎週土曜日も学校に行っていた。 『クモ…

日本の自動車の歴史 (たくさんのふしぎ傑作集) (第82号)

本号の著者山本忠敬は、のりもの絵本で有名だ。乗り物好きのお子さんがいて、絵本を読んでやる方なら、きっと手に取ったことがあるのではないだろうか。 家でも名作『しょうぼうじどうしゃじぷた』(挿画担当)を始め、どんなにかお世話になったことだろう。…

川は道 森は家(第378号)

『テルマエ・ロマエ』で一躍有名となった漫画家、ヤマザキマリの息子の名はデルスという。彼女はイタリア留学中に恋人の子供を身ごもり、別れ、一人で出産をした。名匠・黒澤明の映画「デルス・ウザーラ」から、子供の名を取ったのだと語っている。 デルス・…

吸血鬼のおはなし(第288号)

受験シーズンも終盤にさしかかっているが、二十数年前の2月のある日、私は翌日の大学入試に備え、都内のホテルに宿泊していた。アラームをかけ、さあ寝ようと思ったところ、ヘッドボードにラジオが付いていることに気がついた。青春アドベンチャーを聴くの…

トルコのゼーラおばあさん、メッカへ行く(第271号)

トルコに旅行したのは、かれこれ20年前。初めて訪れるムスリムの国だった。 正教徒の国(ギリシャ)からムスリムの国(トルコ)へ。バスで国境を越えるという経験も初めて。当時のパスポートを見ると、アテネを出発した後ギリシャ側のKipiを出国し、トルコ…

みんなで龍になる 長崎の龍踊り体験(第395号)

私はけっこう長崎を訪れている方だが、実のところ「龍踊(じゃおどり)」を見たのは長崎ランタンフェスティバルの時の1回きりだ。本来おくんちに奉納されるものなので、本当はこの時に見るのがいちばんなのだろう。 しかし、この本で描かれるのは龍踊りを見…

ナミブ砂海 世界でいちばん美しい砂漠(第374号)

「たくさんのふしぎ」は絵本だ。基本は絵と文でできている。 本号を含む三年間(第361号〜第396号)36冊でざっと見ると、絵で作られたものが22冊、写真で作られたものが14冊。6割くらいは絵で作られている。「こどものとも」「かがくのとも」で長年培ってき…

手で食べる?(たくさんのふしぎ傑作集) (第158号)

学生時代、“ただのサークルの先輩”だった今の夫に、昼飯に連れていかれたのが、今は無き高田馬場のインド料理店「マラバール」。今でこそ、エスニック料理は家で手作りもするなじみの味だが、入学したての私にとって、タンドールで焼かれたナンもスパイスの…

地蔵さまと私(第394号)

本号の著者、田沼武能氏は、ライフワークとして日本や世界各地の子どもたちの写真を撮り続けている。その原点となるのが、 私がお地蔵さまを意識するようになったのは、本誌冒頭にも書いているが、1945年の東京大空襲の翌朝に防火用水槽の中で焼死していた子…

しめかざり (たくさんのふしぎ傑作集)(第274号)

スーパーで買い物していたら、サッカー台に「年末お買い物チェックリスト」なるものが置いてあった。我が家は年末年始、毎年双方の実家で過ごしており、正月準備をすることはない。このリストは不要のものということになるが、何となく気になって持ち帰って…

クリスマス・クリスマス (たくさんのふしぎ傑作集) (第57号)

クリスマスが嫌いだ。 気忙しい年末に、異教のイベントを突っ込まなくてもいいじゃないか。夫との交際中も、クリスマス・イヴを過ごすなんて一度たりともしたことがなかった。頭の中身も若過ぎた当時は、たとえ子供ができたとしても、クリスマスなんてやるも…

わが家は、野生動物診療所(第337号)

今朝、子供が学校へ向かって駆けていくのを、ひとり見送った。ふつうの朝の風景……と思われることだろうが、ここ数ヶ月の我が家では当たり前のことではなかった。 布団をかぶって登校の準備もままならない朝が始まり、思いきって1週間休ませてはみたものの、…

ズボンとスカート(第47号)

ブログのデザインテーマを一時的にでも変えてみて(『もじのカタチ(第305号)』)思ったのは、「たくさんのふしぎ」のロゴの変わらなさ。 創刊号から一貫して、基本のデザインは変わっていないのだと思う。「こどものとも」や「かがくのとも」は、ときどき…

龍をおう旅(第83号)

本書は「作者のことば」によると、 龍は空想動物ですが、生きているがごとく東西の世界にいます。 その龍を見るために、中国からヨーロッパまでの大きな拡がりの中に旅立ちました。 ということで、古今東西の龍を求め旅したものだ。 龍を見つけるたびに、そ…

ドイツの黒い森(第153号)

昨日のエントリーでいただいたコメントの、返信について補足。 「マイナスの面も含めた身近にある自然の姿」というのは、自然自体のマイナス面というより、人間活動の影響で生じたマイナス面、とするべきだったと思い直した。もっといえば、鮎が不味いという…

森はみんなの保育園(第320号)

「たくさんのふしぎ」で自然科学系の分野を書いている方々の多くは、子供のころ野山を駆け回っていたとか、虫捕りに夢中だったとかいう自己紹介が見られる。ああ幼少期の自然体験というのは、のちのち「役立つ」ものなんだなーとつい短絡的なことを考えてし…

ウミガメは広い海をゆく(第174号)

先日、ウミガメ放流会についてのマンガを見た。 『ウミガメ放流会』が子ガメの命を奪う?実態を描いた漫画に考えさせられる 実は小笠原に行った時(『カタツムリ 小笠原へ(第366号)』)、私たちも「ウミガメの放流」イベントを見に行っている。 生後1年く…

富岡製糸場 生糸がつくった近代の日本(第375号)

夏の旅行の一日は白川郷を訪れた。和田家住宅の中にはカイコの幼虫生体が展示され、「富岡製糸場からいただいた」と説明書きが付けられている。世界遺産つながりのやり取りかはわからないが、往時に養蚕をしていたことから、夏季限定で飼育をおこなっている…

南極の生きものたち(第369号)

南極といえば、以前書いたエントリー『コウテイペンギン撮影記(第201号)』が思い出される。南極へむかう行程さえハイテンションの感情をだだもれに書き綴っていた内山氏に対し、水口氏はあくまでフラットだ。内山氏が行った1990年代と比して格段に行きやす…

迷宮へどうぞ (たくさんのふしぎ傑作集) (第46号)

はてなキーワード(現「はてなブログ タグ」)で「たくさんのふしぎ」には、 “マニアックな題材、作家選びがされており” との説明がある。 『迷宮へどうぞ』の著者、種村季弘ほどマニアックという言葉が合う人もいないのではないか。私が彼の名を知ったのは…

わたしが外人だったころ (たくさんのふしぎ傑作集)(第124号)

著者は1938年秋、16歳の時アメリカに留学する。 ミドルセックス校を経てハーヴァードに入学。入学3年目、日本とアメリカの間で戦争が勃発する。FBIから取り調べを受けた後、移民局付属の留置場へ。当時は卒論作成中だったが、教授の取り計らいで、留置場…

マーシャルの子どもたち-水爆の島(第139号)

本号の最後は、こう結ばれている。 太平洋のまん中の小さな島でおこっていることは、けっしてマーシャルの人びとだけの問題ではありません。核実験や原子力発電所の事故による放射能でくるしんでいる人びとが世界の各地にいます。もしも核戦争や原子力発電所…

小麦・ふくらんでパン (たくさんのふしぎ傑作集)(第92号)

初めてイタリアを旅した時、感動したのがパンのおいしさだった。 日本のベーカリーだってもちろん、焼き立ては格別だ。気がつくとバゲットをまるまる1本平らげていたこともある。しかしとにかくローマに来て初めて食べた朝食のパンは、味も食感もそして香り…

ハクチョウの冬ごし(第309号)

本号は「作者のことば」によると、 私の住む山形県鶴岡市大山には、今でも貴重なブナ林のある高舘山と八森山があります。 八森山のふもとに上池があり、高舘山のふもとに下池があります、このふたつの山も池も、私の幼いころからの動植物の観察の場であり、…