こどもと読むたくさんのふしぎ

福音館書店の月刊誌「たくさんのふしぎ」を読んだ記録です。

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立山に咲くチングルマ(第323号)

夏の旅行の一部は、山登りをした。場所は白山。学生の頃以来なので、およそ20年ぶりとなる。我が子と一緒にふたたび山頂に立つなんて、学生時代の自分が知ったらさぞかし驚くことだろう。 この時期の白山は、お花(高山植物)がいっぱい。ということは人もい…

富岡製糸場 生糸がつくった近代の日本(第375号)

夏の旅行の一日は白川郷を訪れた。和田家住宅の中にはカイコの幼虫生体が展示され、「富岡製糸場からいただいた」と説明書きが付けられている。世界遺産つながりのやり取りかはわからないが、往時に養蚕をしていたことから、夏季限定で飼育をおこなっている…

まちぼうけの生態学 アカオニグモと草むらの虫たち (たくさんのふしぎ傑作集)(第317号)

本書は、遠藤知二氏による“生態学”シリーズの一作目にあたる本だ。 三作目『すれちがいの生態学 キオビベッコウと小道の虫たち(第388号)』の「作者のことば」には、三部作の紹介が書かれている。 虫たちの出会いをめぐる3部作の完結です。第1作の『まち…

線とあそぼう(第382号)

線は、いつから「字」になるのだろう。 小学校入学前に子供が書いた字が残っているが、それは字というより、拙い線を組み合わせて作った記号や図形といった風体なのだ。今どきにしては珍しく、子供はお勉強のようなものを一切しない幼稚園にいて、親もあえて…

おいかけっこの生態学 キスジベッコウと草むらのオニグモたち(第364号)

『すれちがいの生態学 キオビベッコウと小道の虫たち(第388号)』の主人公が、キオビベッコウなら、こちらはキスジベッコウ(キスジクモバチ)という別のクモバチのなかまだ。 その名の通り、こちらもクモ狩りをするハチ。獲物となるのはコガネグモ科のクモ…

南極の生きものたち(第369号)

南極といえば、以前書いたエントリー『コウテイペンギン撮影記(第201号)』が思い出される。南極へむかう行程さえハイテンションの感情をだだもれに書き綴っていた内山氏に対し、水口氏はあくまでフラットだ。内山氏が行った1990年代と比して格段に行きやす…

クモと糸(第360号)

このエントリーで書いた自然観察イベントの2日目の朝、雨はかろうじて上がったものの、森は濃い霧につつまれ、野外観察には向かない天気だなーとちょっと憂鬱に思いつつ、森の道を歩き始めた。ところがベテランレンジャーの方は、ほらほらと道の脇の茂みを…

すれちがいの生態学 キオビベッコウと小道の虫たち(第388号)

わたしは蜘蛛がなにより苦手だ。 ムカデに熱湯をかけることも、ゴキブリを叩き潰すことも厭わないが、蜘蛛だけはどうしてもダメだ。さすがにハエトリくらいは慣れた(見なかったふり)が、ジョロウグモ、コガネグモサイズは冷や汗もの。アシダカグモは問題外…

みんなそれぞれ 心の時間(第350号)

時間 それは全ての人間に同じように流れているわけではないと思うよ時間 それは感覚であって 生きたということはただの記憶でしかないって本で読んだ ーゆらゆら帝国「時間」アルバム『ゆらゆら帝国のしびれ』より 子育て中の親(おもに母親だろうが)で、「…

アオムシの歩く道(第336号)

授業参観に行ったら、理科でモンシロチョウを学習していた。最近はめったに読み聞かせしてないが、夜、珍しく子供が何か読んでほしいという。モンシロチョウに関わる、この『アオムシの歩く道』を使って、久しぶりに読み聞かせをすることになった。 著者は、…

街は生きている(第340号)

この本について的確に説明するのは、なかなか難儀なので福音館の内容紹介から引用してみる。 街は、毎分、毎秒、変わり続けている。いつもわたる横断歩道の信号機の黄色いスイッチのケースも。駐車場にある真っ赤な自動販売機も。川沿いの階段横の壁も。僕ら…

いのちのひろがり (たくさんのふしぎ傑作集) (第361号)

バス待ちをしている時、突然、子供が手近にいるアリを手に乗せて、 「このアリもぼくの祖先なんだよ」 とか言い出した。 何のこっちゃという感じだが、ああ、借りてきている『いのちのひろがり』を読んだんだなと思い当たった。 この本は雑誌発行時に読んで…

ハクチョウの冬ごし(第309号)

本号は「作者のことば」によると、 私の住む山形県鶴岡市大山には、今でも貴重なブナ林のある高舘山と八森山があります。 八森山のふもとに上池があり、高舘山のふもとに下池があります、このふたつの山も池も、私の幼いころからの動植物の観察の場であり、…

石油のものがたり(第387号)

私が子供のころ、あと数十年で石油は枯渇するだろうと予測されていた。 幸いにして?その数十年に近くなった現在でも、取りあえず当分は使うことができそうな雰囲気だ。そんなあいまいな言葉でもごもご言うしかないくらいに、石油の可採埋蔵量というのはよく…

おもしろい楽器 中南米の旅から(第318号)

『おもしろい楽器 中南米の旅から』は、音楽と楽器と人で満ちあふれている。 たとえば吹く! たとえば叩く! たとえばふる!まわす!ゆする! たとえばひっかく、はじく、こする! 楽器をもたない人も、楽器を鳴らさない人もいないんじゃないかと思うくらい…

かしこい単細胞 粘菌 (たくさんのふしぎ傑作集)(第332号)

このエントリーに引き続き、粘菌の「ふしぎ」。著者の中垣氏は、なんとこの粘菌ネタで、イグノーベル賞を2回も受賞している。すごい! 『変形菌な人びと(第219号)』を書いた越智典子氏も、粘菌にはエサの好みがあることを語っていたが、やはり食べ物の好…

ゆかいな聞き耳ずきん クロツグミの鳴き声の謎をとく (たくさんのふしぎ傑作集)(第303号)

先日また「東京都檜原都民の森」の自然観察イベントに参加した。 指導してくださるのも前回と同じ先生方だ。この日はあいにくの天気。初日は屋内での講義が中心となった。それでも、雨の合間に少しだけ外に出て、蜂の巣の空き家にミソサザイが間借りしている…

村を守る、ワラのお人形さま(第356号)

今回のゴールデンウィークは、子供が野鳥ブームということで、野鳥観察中心の旅をした。初日は、野辺山高原一帯に行ってみたが、この本によると夏冬の方がおすすめらしい。それでも、以前から見たがっていたヒバリを見ることができたり、キビタキの愛らしい…

虹色いきもの図鑑(第346号)

この号は、前号のふしぎ新聞の「ポケットパズル」の答えを知りたいという、子供のリクエストで借りてきたものだ。 特筆すべきは色の美しさ、心地よさ。作者本人も「私の描くゾウやワニの色は、あなたが思っているのとはすこしちがうかもしれません」と書いて…

生きる(第342号)

先日子供の授業参観があった。 国語の時間は、谷川俊太郎の「どきん」という詩がテーマ。班で工夫して音読の方法を決め、練習して発表するというものだった。 班の様子はさまざま、役割をすぐ決めて練習に入るところもあれば、なかなか決まらず話し合いがず…

貨物船のはなし(第349号)

下の画像の品に見覚えがある人は、私とほぼ同世代か前後の方だと思う。 SUNTORY サントリー アンクルトリス 爪楊枝ケース つまようじケース 非売品 1個 出版社/メーカー: サントリー メディア: ホーム&キッチン この商品を含むブログを見る 実家の食器棚にず…

分水嶺さがし(第377号)

子供はNHKの「ブラタモリ」が大好きで、毎週欠かさず見ている。 こちらでは、疑似社会科学という言葉が出てきて「どうもサイエンス的な裏付けが弱い気がする」と述べられているが、具体的にどこがどうという説明がないので何とも言えない。 ブラタモリの真骨…

スズメのくらし(第345号)

このイベントでの自然観察では、早朝に野鳥観察の時間もあったのだが、野鳥の可愛らしさにすっかり夢中になった子供は、自宅に帰ってからも、カメラを片手に外を駆け回るようになった。先生は「身近にいる鳥もぜひ観察してみてください」とおっしゃっていた…

森のおく 湖のほとり ノースウッズを旅して(第330号)

その昔「ナショナル・ジオグラフィック」という雑誌を取っていたことがある。 中でもひときわ印象に残る記事があった。 「北の森から 90日の撮影記録」。 ジム・ブランデンバーグという写真家が書いたものだ。 人里離れたミネソタ州の森の中。私はここで秋分…

カリブーの足音 ソリの旅(第381号)

『春をさがして カヌーの旅(第253号)』は、ノースウッズの春を旅したものだった。『カリブーの足音』は冬を描いたものだ。 今回も旅の相棒はウェイン。冬になると、今度はカヌーではなく木製のそりに荷物を載せ、自分の力で引きながら旅に出る。そんなウェ…

コテングコウモリを紹介します(第324号)

『エゾクロテンのすむ森で(第314号)』で書いたイベントでは、先生がこのコテングコウモリの剥製を持ってきてくださっていた。思いの外ずいぶんかわいらしい。生きているときはどんな生きものだったんだろう? というわけで読んでみたのが、この『コテング…

野生のチューリップ(第386号)

野生のチューリップ、というと思い出すのがこの曲。 運転中かけるとついつい気持ちよく唄ってしまうスピッツだが、よくよく詞を見ると、黒目がちの草野正宗の瞳にも似た、深い闇が見えるから恐ろしい。 「野生のチューリップ」も夜空とか星とかロマンティッ…

エゾクロテンのすむ森で(第314号)

先日家族で「東京都檜原都民の森」の自然観察イベントに参加した。 生物観察の先生、星座観察の先生、それぞれ机上の講義あり、解説つきの実地観察ありで盛り沢山の内容だった。 昼間は付近の森をゆっくり散策しながらの自然観察。先生の他ボランティアの方…

へんてこ絵日記(第371号)

この『へんてこ絵日記』、へんてこなのは中身だけではない。 ほとんどの号が横書き・左開きなのに対し、この本は右開きで作られているのだ。絵日記の体裁を取っていることから、縦書きで右とじにしたのだろうが、日ごろ左とじの「ふしぎ」を見慣れているので…

宇宙とわたしたち(第385号)

仙厓義梵を知っているだろうか? 江戸絵画を特集した何処だったかの展覧会で、一目見て気に入ってしまったのだった。以来わが家では、仙厓の画らしきものをどこかで見るたびに、あれギボンだよねー?とか、やっぱりギボンだったよ、とかいう会話が繰り返され…