これは盆栽についての本ではない。
『ぼくは盆栽』というタイトルどおりの本である。すなわち、
ぼく=盆栽
"I am a Bonsai"
ということ。
巻頭にはこんな言葉が書いてある。
そんな盆栽がすきですきでとりつかれてしまったぼくは、ある時、盆栽の精となって、旅に出ました。
「ぼく」の名前は、盆栽小僧の松ちゃん。
「旅」というのは、東京から京都までの500km、昔の東海道五十三次を、1ヶ月あまりかけて歩くという徒歩旅行。リヤカーに53個の盆栽を積み、各宿場ごとお世話になった人々にひとつずつ手渡していくという。
盆栽の精こと松ちゃんのコーディネートは、2ページ目に「松ちゃん大図解」として載っている。下半身の重要アイテム「鉢パンツ」の重さはなんと約15kg!トラベルセット一式が詰められている。
私も学生時代、サークルのグループで1週間くらいの徒歩旅行をしたことがあるが、皆で手分けしても、荷物は一人10kgくらいにはなった。これを背負って1日およそ20〜30km歩くというのはけっこうしんどい。ザックでもキツいのに、鉢パンツ15キロまとって徒歩、というのは正気の沙汰ではない。
当然のことだが、途中職務質問されていたり、泊めてくれる旅館が見つからなかったり。徒歩旅行で大変なのは、やはり宿なのだなあと(私はテント泊だったが、適当な設営場所を見つけるのに苦労した)。でも、地元の人の、身にしみるほどの親切に触れられるのは、徒歩ならではの醍醐味だと思う。
作者が旅したのは1985年。それから30年あまりが経った。各地に進呈された盆栽たちは今どうしているだろう。元気で暮らしているだろうか?
ぼくは盆栽 (月刊たくさんのふしぎ1995年9月号)第126号
- 作者:沼田元氣
- メディア: ペーパーバック