ふだん「たくさんのふしぎ」を選ぶのは私だ。子供の興味や季節に合わせて、購入したり、図書館で借りたりする。
『バッタのオリンピック』は、珍しく子供自身で学校から借りてきたものだ。それまで息子の頭は主に鉄分でできていたので、ムシには興味がないものと思っていた。男の子が真っ先に飛びつきそうな、クワガタ・カブトムシ類には見向きもしなかった。
ところがいつの間かじわじわと昆虫に浸食されてゆき、一気に火をつけたのが、NHK Eテレの番組だった。
かつての昆虫少年であったところの夫が、昔取った杵柄ならぬ虫取網を片手に、息子を連れて近所の河原に繰り出して行った。
夫曰く……
「カマキリ先生はあんな草ぼうぼうの所で捕まえようってのが間違ってる。トノサマバッタを捕まえるのに相応しい場所を、俺は知っている」
数時間後、子供はトノサマバッタを満載した虫かごを片手に、意気揚々と帰ってきた。都合7〜8匹もいただろうか、 小さな虫かごに押し込められたバッタたちは、とても窮屈そうにしていた。
初戦で大きな戦果を上げたのに気を良くした子供は、次の週、今度はひとりで捕りに行くと言い出した。子供は虫取りの初心者だ。先日のは父親の手助けがあったからこその成果である。カマキリ先生でさえ苦戦したトノサマバッタを、ひとりで捕まえられるはずがない。暇な日曜日のこと、止める理由も見つからないので、やってみたらと送り出した。
1時間後、迎えに行ったところで、子供は虫かごを高々と掲げて戻ってきた。
あのねーあのねートノサマバッタって鳴くんだよ。ちょっと静かにしてて……ほらほら今鳴いたでしょ。鳴いてるでしょ。すごいね!
ああ本当だね。後ろ足を何やら擦り付けて音を出してるんだね。
捕まえてきたバッタは、何匹かを残して河原に返してやった。不幸にも連れて来られることになった方は、子供の観察材料としてしばらく頑張ってくれた後、死んでしまった。
自分のコンデジ(親のお古)で子供が撮ったもの。気がついたら家の中で放して撮影を行っていた……

- 作者: 宮武頼夫,日浦勇,中西章
- 出版社/メーカー: 福音館書店
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