こどもと読むたくさんのふしぎ

福音館書店の月刊誌「たくさんのふしぎ」を読んだ記録です。

屋上のとんがり帽子 (たくさんのふしぎ傑作集) (第210号)

屋上のとんがり帽子 (たくさんのふしぎ傑作集)

屋上のとんがり帽子 (たくさんのふしぎ傑作集)

表紙写真を見て、なにをテーマにした本だと思うだろうか?

とんがり、という言葉に引きずられて、教会の尖塔の方に注目したのではないだろうか?

 

実はこの本の主人公、手前右にあるビルの、屋上にある「給水タンク」の方なのだ。面白いミスリードである。

しかもこのタンク、なんと木製なのだ!「ペンキもニスも塗らない、自然のままの、杉の白木」。これらの給水タンクがあるニューヨークは、夏冬の寒暖差が激しいため、熱を通しにくい木を使うと、夏には冷たいままに、冬には凍らずに保ってくれるという。上がとんがり帽子、つまり円錐形の理由は雪を積もらせないためだ。

木製タンクは一基500万円くらいするが、手入れや修理をすれば40〜60年くらい保つという。初期費用は高いが、長持ちする分安上がり、水が傷みにくくておいしいというメリットもあるらしい。

要は、でっかい木桶。組立や設置は“プロ”のお仕事だ。本書には、職人さんたちの写真も載っており、

ポーランド人、プエルトリコ人、コロンビア人、アフリカ系アメリカ人など、人種も国籍もさまざまです。

という説明文が付けられている。

もともと給水タンクが作られ始めたのは、ニューヨークに増え続ける移民たちのためだった。せまい土地にどんどん入ってくる人々のために、高層ビルが建ちはじめ、給水タンクが必要となったのだ。ここで紹介されているタンク会社の社長もまた、移民たちの子孫なのだ。

この人の祖父だって、移民の一人だった。"Make America Great Again"と言うが、アメリカを偉大にしたのは、彼ら移民の力ではなかったのだろうか?