- 作者: 折原恵
- 出版社/メーカー: 福音館書店
- 発売日: 2008/01/20
- メディア: 単行本
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表紙写真を見て、なにをテーマにした本だと思うだろうか?
とんがり、という言葉に引きずられて、教会の尖塔の方に注目したのではないだろうか?
実はこの本の主人公、手前右にあるビルの、屋上にある「給水タンク」の方なのだ。面白いミスリードである。
しかもこのタンク、なんと木製なのだ!「ペンキもニスも塗らない、自然のままの、杉の白木」。これらの給水タンクがあるニューヨークは、夏冬の寒暖差が激しいため、熱を通しにくい木を使うと、夏には冷たいままに、冬には凍らずに保ってくれるという。上がとんがり帽子、つまり円錐形の理由は雪を積もらせないためだ。
木製タンクは一基500万円くらいするが、手入れや修理をすれば40〜60年くらい保つという。初期費用は高いが、長持ちする分安上がり、水が傷みにくくておいしいというメリットもあるらしい。
要は、でっかい木桶。組立や設置は“プロ”のお仕事だ。本書には、職人さんたちの写真も載っており、
ポーランド人、プエルトリコ人、コロンビア人、アフリカ系アメリカ人など、人種も国籍もさまざまです。
という説明文が付けられている。
もともと給水タンクが作られ始めたのは、ニューヨークに増え続ける移民たちのためだった。せまい土地にどんどん入ってくる人々のために、高層ビルが建ちはじめ、給水タンクが必要となったのだ。ここで紹介されているタンク会社の社長もまた、移民たちの子孫なのだ。
この人の祖父だって、移民の一人だった。"Make America Great Again"と言うが、アメリカを偉大にしたのは、彼ら移民の力ではなかったのだろうか?