『トイレのおかげ (たくさんのふしぎ傑作集)(第141号)』で紹介した記事の伊沢氏は、葉っぱでおしりを拭いていた。昔の人も、トイレットペーパーが登場するまでは、いろいろな物でお尻の始末をつけていた。
トイレットペーパーの前はチリ紙。夫の祖父母の家に初めて訪れた当時、まだ汲み取り式で、拭く紙も箱に入った四角いチリ紙だったことを思い出した。
チリ紙の出回る前は、新聞紙や古雑誌、張り替えた後の障子紙など。そして紙類の前、いちばん多く使っていたのが蕗の葉だ。刈っても新しい葉が出てくるし、つんできた葉をしばらく置いておくと、しんなりして具合が良くなるらしい。
冬にはクズの葉。しかし家畜の大事なエサでもあったので、冬の長い東北では、もったいなくて使わなかったところもあるそうだ。トウモロコシの葉も使われていたが、かたいのでふき心地は良くなかったらしい。
わら仕事(『草と木で包む (たくさんのふしぎ傑作集) (第183号)』)では、わらの“はかま”をしごき取るが、このはかまを使った地方も多くある。木片でぬぐう所も各地にあった。使われたのは割れやすい杉。竹のある地方はもちろん竹を使っていた。北の地方は竹も杉も少ないので、岩手などではクルミやヤマウルシまで使っていた。ヤマウルシはかぶれることもあるが、かまっちゃいられないということだったようだ。
現在の日本は、柔らかいトイレットペーパーが普及し、入るのをためらわれるようなトイレはほとんど無くなってきた。擬音装置やウォシュレットすら標準装備だ。一方、デザインや機能が進み過ぎて、使いにくいと感じることもある。
そんなきれいなトイレに慣れていると、一部外国のトイレや、山のトイレなど、そのギャップに驚かされることになる。使用済みの紙をくずかごに入れるトイレも多いが、紙を落としそうになったりで、うっかりすることもある。水に溶けるトイレットペーパーは素晴らしいアイテムだが、豊富な水で流せる国だからこそ可能なシステムかもしれない。
水が豊富なら、洗い流すイスラム式でも良かったのでは?とはいえ、古来は“草食動物”であるところの日本人の便は、繊維質も豊富で硬かったようだ。木や竹で用が済んだのは、こうした理由があるのだという。半ば肉食に偏った雑食動物である私は、木や竹ではとても済みそうにない。

- 作者: 斎藤たま,なかのひろたか
- 出版社/メーカー: 福音館書店
- 発売日: 2016/03/25
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログを見る