こどもと読むたくさんのふしぎ

福音館書店の月刊誌「たくさんのふしぎ」を読んだ記録です。

変形菌な人びと(第219号)

変形菌とは、粘菌とも呼ばれ、動物的な性質と植物的な性質を併せ持つ、不思議な生物である。

学生時代、のちの夫と国立科学博物館に行ったとき「森の魔術師 - 変形菌(粘菌)の世界 -」展をやっていて、シャーレに入った粘菌をもらえたので、それぞれ持って帰ったことがあった。まあまあお世話が大変なので、割とすぐに死なせてしまった記憶がある。夫にも聞いたら、私のよりは長生きしたが、やはり枯らしてしまったようだ。

変形菌とは

本書にはさまざまな変形菌がたくさん載っていて、見ているだけでも楽しい。変形菌はその名のとおり変形する生きもので「変形体」と「子実体」という二つの形状がある。どんな色の「変形体」になるかは、種類によって決まっているが、食べるものによって多少の違いはあるようだ。「子実体」の色や形は同種のものなら、世界中どこでも変わらない。

かつて私たちがもらったのは、おそらくモジホコリだと思うが、形状としては変形体の方で、子実体はついぞ見ることはなかった。というのは、十分に生長した変形体は、子実体に変わっていくが、変化の途中、雨に打たれたり乾燥したりすると、何にもなれずにそこで死んでしまうからだ。本書の30〜31ページには、変化の様子を撮った写真が時系列で載っているが、途中さまざまな色形に変化していく様はとても興味深い。

『変形菌な人びと』というからには、変形菌だけではなく、人、も出てくる。ジャンバッティスタ・デッラ・ポルタという、あやしげなイタリア人植物学者から、フランスのジャン・マルシャン、ドイツ人のハインリヒ・アントン・ド・バリー、そしてわれらが南方熊楠まで、さまざまな国の研究者が登場して、変形菌を語っている。もう一人、本には直接登場しない「変形菌な人」は、写真を担当する伊沢正名氏だ。

「作者のことば」によると、越智典子氏もモジホコリを飼っていて、オートミールの他にも豆腐やヨーグルト、かびの生えた木片などいろいろなものを与えてみたと書かれている。豆腐がいちばんの好物だったようだ。

これからの時期、変形菌さがしにはうってつけの季節。飼育に再チャレンジして実験してみるのも面白いかもしれない。

https://www.fukuinkan.co.jp/book/?id=4434