こどもと読むたくさんのふしぎ

福音館書店の月刊誌「たくさんのふしぎ」を読んだ記録です。

河童よ、出てこい (たくさんのふしぎ傑作集) (第87号)

カッパといえば思い出すのが、西炯子の『Stayネクスト夏休みカッパと』。

幼なじみ3人(男2・女1)が、カッパ探しに遠野まで出かける……という話だが、3人が住む作品の舞台は、おそらく作者の故郷である鹿児島県。けっこう遠いよなーと、かつて東京から自分が旅した時さえ思ったので、鹿児島から岩手など、架空の話とはいえけっこうな旅路である。STAYシリーズはどの話も好きで、コミック全巻持っていたが、転勤で鹿児島を出る時に地元の図書館に寄贈してしまった。蔵書検索システムで検索してみたら、貸出中になっていたので、今も置いてくれていて誰かに読まれているんだなーとちょっとうれしくなった。

河童を調べてみると、日本人に愛されてきた妖怪だということがよくわかる。子供がかつて見ていた「はなかっぱ」もカッパだし、古くは黄桜の宣伝、ちょっと古めで山瀬まみのキンチョウリキッドのCMなど……。ウィキペディアには「天狗と並んで日本の妖怪の中で最も有名なものの一つとされる」と書かれているが、鬼や天狗とは異なるところがある。童という漢字が入っていることからもわかるように、怖がられる存在より、いたずら好きの子供のような、愛嬌あるキャラクターとして描かれてきたということだ。本書では“トリックスター”という言葉が使われているが、言い得て妙だと思う。

この本には、大人も面白く読めるような河童の話がいくつも紹介されているが、お話もさることながら、梶山俊夫による挿絵がまた素晴らしい。『鬼が出た (たくさんのふしぎ傑作集)(第23号)』でも、優れたイラストで絵本を彩っていたが、本号もこれ以上の河童の絵があろうかと思われるくらいの出来映えだ。お話の雰囲気を優れて表現している。梶山氏は民話絵本を多く手がけているものの、実は抽象画家から出発したという。

画家・絵本作家 梶山俊夫さんインタビュー(※リンク切れ)」の最後には、

そうして自由な運動体となって、遠い時を超えて、人と天地と対感しあっていきたいなあ…と思います。

とあるが、こういう言葉を発することができるからこそ、素晴らしい河童を描けるのだろう。

河童よ、出てこい (たくさんのふしぎ傑作集)

河童よ、出てこい (たくさんのふしぎ傑作集)