カッパといえば思い出すのが、西炯子の『Stayネクスト夏休みカッパと』。幼なじみ3人(男2・女1)が、カッパ探しに遠野まで出かける……という話だが、3人が住む作品の舞台は、おそらく作者の故郷である鹿児島県。けっこう遠いよなーと、かつて東京から自分が旅した時さえ思ったので、鹿児島から岩手など、架空の話とはいえけっこうな旅路である。STAYシリーズはどの話も好きで、コミック全巻持っていたが、転勤で鹿児島を出る時に地元の図書館に寄贈してしまった。蔵書検索システムで検索してみたら、貸出中になっていたので、今も置いてくれていて誰かに読まれているんだなーとちょっとうれしくなった。
河童で調べてみると、子供がかつて見ていた「はなかっぱ」もカッパだし、古くは黄桜の宣伝、ちょっと古めで山瀬まみのキンチョウリキッドのCMなど、日本人に愛されてきた妖怪だということがわかる。ウィキペディアには「鬼、天狗と並んで日本の妖怪の中で最も有名なものの一つとされる」との記述があるが、鬼や天狗と異なるのは、童という漢字が入っていることからもわかるように、怖がられる存在というより、いたずら好きの子供のような、愛嬌のあるキャラクターとして描かれてきたということだ。本書では“トリックスター”という言葉が使われているが、言い得て妙だと思う。
この本には、大人も面白く読めるような、河童についての話がいくつも紹介されているが、お話もさることながら、絵がまた素晴らしい。梶山俊夫氏は『鬼が出た (たくさんのふしぎ傑作集)(第23号)』でも挿絵を描いているが、どの絵も味があり、これ以上の河童の絵があろうかと思われるくらいの出来映えだ。梶山氏は民話の絵本を多く手がけているが、抽象画家から出発したとは思えないほど、お話の雰囲気を優れて表現している。「画家・絵本作家 梶山俊夫さんインタビュー(※リンク切れ)」の最後には、
そうして自由な運動体となって、遠い時を超えて、人と天地と対感しあっていきたいなあ…と思います。
とあるが、こういう言葉を発することができるからこそ、素晴らしい河童を描けるのだろう。

- 作者: 武田正
- 出版社/メーカー: 福音館書店
- 発売日: 1998/04/01
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログを見る