昨冬の、子供のクリスマスプレゼントは双眼鏡だった。夏に谷津干潟に行ったときに借りたのと同じものだ。レンジャーの方がおすすめしてくださったのもあり、クリスマスに贈ろうと予てより考えていた。小学生への双眼鏡のプレゼントとしては分不相応*1かなーと思ったが、直後から活躍しまくって鳥見に集中するあまり、早くもアクセサリー類を無くしてくる始末。もう一つは『BIRDER』の年間定期購読。以前より図書館でバックナンバーを熱心に読んでいたのでこちらは言わずもがな、どちらも贈った甲斐はあったかなと思う。
『好奇心の部屋 デロール (たくさんのふしぎ傑作集) (第225号)』で剥製の話を書いたが、『BIRDER』2018年2月号に載っていたのが、偶然にも鳥類標本の話だった。連載「鳥博士の研究レポート」の「鳥を拾おう!標本を作ろう!」と題されたレポート。筆者の山本佳奈氏は出身地である佐渡島に帰って鳥の標本作りをしているという。離島はその特性上固有種が多くなるが、佐渡には鳥類標本などを作る施設がないため、たとえ貴重な固有種の死体が出たとしてもゴミとして捨てられてしまうのだという。それを惜しんだ著者は東京での仕事を辞め、佐渡島で標本作りを始める決心をする。作った標本は、大手の博物館などに寄贈するのかと思いきや、実際先方からのリクエストもあるようだが、あくまで島内に留め置きたいと考えているとのこと。地方の標本を日常的に集められるのはその地域の特権、標本を見たければ逆に足を運んできてほしいという考えからのようだ。地域の人には身近な自然の価値や魅力を語ってほしいと語っているが、ずっと地元で暮らしている人ほどかえってその価値に気づきにくいものかもしれない。だからこそ著者のように、一度別の場所に出た人、そして出たからこそ地元の魅力に気づいた人、そしてそれを伝えたいと思える人が必要なのだ。
電子顕微鏡関連の「ふしぎ」といえば『電子の虫めがね(第184号)』がある。こちらが虫を中心に作られているのに対し、『ミクロの世界』では花びらの表面からイカの吸盤、もめん糸に卵の薄皮、花粉や胞子、エイズウイルスに至るまでさまざまなものを取り上げている。今でこそエイズは治療薬の開発が進み致死的な病ではなくなっているが、この月刊誌が出た1991年当時は“不治の病”として恐れられ、エイズパニックの記憶も新しい頃だ。そんなホットな時に載せられた「エイズウイルス」の写真は、当時の子供たちにとってかなりのインパクトがあったのではないだろうか。「AIDSウィルスの世界初の拡大写真撮影に成功」という作者自身の手によるものであれば尚更だ。
本書の最後で作者の田中敬一氏は、
電子顕微鏡を使ってものをいろいろ研究していくと、毎日のように新しい発見があります。そしてそこには、自然のなかにかくされていた”たくさんのふしぎ”を見つけだす大きなよろこびもあるのです。
おとなになったら、「ミクロの世界」をきみ自身で探検してみませんか。
と述べている。最近のニュースによると“米子を「電子顕微鏡のまち」に”ということで、米子市児童文化センターに田中氏が使っていた電子顕微鏡などが寄贈されるらしい。
米子市:「電子顕微鏡のまち」 ミクロの世界、楽しんで ゆかりの研究者たたえ、推進協力会設立 /鳥取 | 毎日新聞
最早おとなにならなくても、身近な場所で、ミクロの世界を探検できるのだ。

- 作者: 田中敬一
- 出版社/メーカー: 福音館書店
- 発売日: 1998/09/25
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