こどもと読むたくさんのふしぎ

福音館書店の月刊誌「たくさんのふしぎ」を読んだ記録です。

鳥の巣(第229号)

ここ1年、子供の趣味に付き合ってバードウォッチングをしているが、夫がすぐに影響を受けて自分もやり始めた(登山のついでだが)のとは対照的に、私の方はいつまでも初心者バーダーの域から抜け出せないでいる。私は、本質的には「自然」に興味がないのだろう。その代わりというのもなんだが、自然に関する本を読むのは好きだ。要は本を読む方が好きなのだ。子供が鉄道が好きと言えば、私は鉄道の本を探し、虫に興味があると感ずれば、虫の本を読む。本というツールを使えば、子供の興味に近づくことだけはできる。

しかし、子供に連れられて鳥見をしているおかげで、本の方もさらに面白く読めるようになったのは確かだ。『鳥の巣』も、実に興味深く読むことができた。野鳥のことをちっとも知らなかったら、かなり違った感想を持ったに違いない。なにしろ表紙のベニマシコは、つい最近見たばかりの鳥なのだ!子供は絵を見てすぐに識別したが、私は現物を見たにも関わらず、何の鳥かわからなかったわけではあるが…。

野鳥図鑑では、雌雄の違いや幼鳥、エクリプスなど識別の仕方については解説されているが、どんな巣を作るのかまでは載っていないことが多い。本書にはキムネコウヨウジャクなどハタオリドリ科の鳥の巣を始めとして、面白い巣や凝った作りの巣がたくさん紹介されているが、エナガメジロといった「ごくごく身近な鳥」の巣や、コサメビタキやセッカなど「探せば見つけることのできる鳥」の巣についても解説されている。

とはいえ、自然の中で巣を見つけるのは困難だ。親鳥とてそう簡単に見つかるところに巣作りはしない。鳥の巣というのは、繁殖のために使われるものであり、野生の生き物にとって繁殖とは生きる目的そのものだ。人間から見ると呆れるくらい巧妙に工夫された巣も、ひとえに安全に卵やヒナがくらせるように、というただひとつの目的に収斂される。安全にというのは、卵やヒナが順調に育つ環境を整え、それを狙う敵に見つかりにくくするということである。東京都檜原都民の森の自然教室イベントでは、野外利用指導員の方がアオバトの巣を教えてくれたが、かなり簡素な巣で、それがためにかえって見つけづらいという「工夫」がされていた。

繁殖中の野鳥は当たり前だがとても神経質になっていて、たとえ危害を与えなくとも巣に近づきすぎる者は危険とみなし、営巣放棄する時もある。観察の機会があったとしても、そっと離れて見ないでおくのが一番なのだ。そういう意味で、こういった巣に特化した絵本は貴重でありがたいものだ。しかし、繁殖中の巣の観察が難しいということは、著者も本文で述べているとおり「世界じゅうに、まだ、どこで、どんな巣をつくって、どんな卵をうみ、どんなふうにヒナを育てているかわからない鳥が何種類もいる」ということで、鳥の巣の世界はまだまだ謎に満ちた分野であるらしい。

裏表紙はクマタカとそこに間借りするスズメの巣の絵が描かれていて、これは『スズメのくらし』で平野氏が言っていた"鷹と雀が同居している"関係そのものだ。利用できるものはたとえ捕食者でも利用する、野生動物の強かな戦略は繁殖期にこそ発揮されるものなのだろう。

本号の増補改訂ハードカバー版は、偕成社から『ふしぎな鳥の巣』と題し出版されている。「たくさんのふしぎ傑作集」で出しても良かったのだろうが、シャカイハタオリやシュモクドリ、ツカツクリなどの大型の巣は、やはり大判絵本だと迫力が違う。それでも『鳥の巣』の飾らない終わり方は「たくさんのふしぎ」らしくて良いなあと思う。

ふしぎな鳥の巣

ふしぎな鳥の巣