こどもと読むたくさんのふしぎ

福音館書店の月刊誌「たくさんのふしぎ」を読んだ記録です。

トドマツ(第370号)

NHKをつけながら、朝の用事を済ませていたら、トドマツ、という言葉が聞こえて思わずテレビの方を見た。やっていたのは「まちかど情報室」というコーナー。新巻鮭を入れる木箱で作ったウクレレを紹介していた。

2018年6月28日(木)植物が大変身!|まちかど情報室|NHKニュース おはよう日本(※リンク切れ)

その名もシャケレレ。箱の意匠を生かしたデザインで作られ、かなりカッコいい。弾けないくせに一本欲しくなった。

Products - Shikagawa Musical Instruments

箱の原材料はトドマツ。「新巻鮭からでる水分を適度に吸収し、鮮度を損なうことなく十数キロの重さに耐え、何段にも重ねて輸送できる優れた素材」らしい。

【取材】北海道のお歳暮の定番「新巻鮭」の空き箱で作ったウクレレ - U-NOTE[ユーノート] - 仕事を楽しく、毎日をかっこ良く。 -

 

トドマツは北海道の森にふつうに生育しているという。海近くから高山に至るまで、森だけでなく役場の周りや公園まで、身近に見られる木なのだ。道外では見かけないトドマツも、北海道ではありふれた樹。数が多いだけでなく、しっかり太く高く成長するので木材としても優秀だという。新巻鮭の箱を作るのに重宝するはずである。

重宝するのは人間だけではない。クマゲラは巣穴として、オオタカハシボソガラスは枝々を巣の土台として、エゾシカは茂った葉と枝をシェルターやねぐらとして。コクワヤマブドウの蔓はトドマツを支柱としてのぼってゆき、日当りのいい上の方で果実を実らせる。実が熟せばヒグマのエサとなる。

傷などが回復せず弱ってきた樹もまだまだ重宝される。キノコ類には絶好の菌床となり、幹がくさって軟らかくなるとアカゲラが巣穴をほる。アカゲラの去った後はエゾモモンガのねぐらに変わる。ぼろぼろになりながらも立ち続ける木は、虫たちのすみかにもなり、虫たちは鳥たちのエサになる。老いた樹は倒れるが、倒れることで若い樹々に光を提供する。倒木の上にはまた、新たな命が芽生えるのだ。

道内の生きもの皆を支えているといっても過言ではないトドマツ。動植物がトドマツと生きれば、人もまたトドマツと共に暮らしている。「作者のことば」では、自然の中でその寿命を終えるのではなく、人の手によって倒され木材として姿を変えてゆく様子に、少し切ない気持ちになったと書かれているが、木材として、箱として生きた後のトドマツが、人のこころをなぐさめる楽器として使命を終えるというのも「開拓の頃から人の暮らしを支えてくれて」きたトドマツらしいあり方だと思う。

トドマツ (月刊たくさんのふしぎ2016年1月号)

トドマツ (月刊たくさんのふしぎ2016年1月号)

この号は発売当時読んでやっているが、好きな鳥たちがちらほら登場することもあり、子供はまた熱心に読み込んでいた。たった2年のことだけれど、子供の読み方も変われば、私の読み方も変わってきていることに気づかされる。まあ、私はブログを書いているから、そのせいもあるかもしれないが……。アウトプット前提の読み方はいいところもあるけれど、不純なことをしてるような気もしないではない。