こどもと読むたくさんのふしぎ

福音館書店の月刊誌「たくさんのふしぎ」を読んだ記録です。

カジカおじさんの川語り (たくさんのふしぎ傑作集) (第170号)

例によってNHKをつけながら朝の用事を済ませていたら、カジカ漁の話をやっていた。

秋を楽しむ 秋の魚 カジカの釣り方とは? | おはよう日本 関東甲信越 | @首都圏 | NHK

かつては東京の農山村でも、魚体のみならず卵塊までも食卓にのぼるくらい豊富に獲れた魚だったようだが、生息環境の悪化でほとんど見られなくなってしまったらしい。

カジカ - 東京都島しょ農林水産総合センター

そこで思い出したのがこの本だ。この『カジカおじさんの川語り』は、タイトルの通りハナカジカの“カジカのおじさん”が、北海道の川で出会った“ぼく”に、川の様子を見せながら生き物たちの暮らしを語って聞かせるというものだ。

カジカのおじさんは、みずから一生懸命卵の世話をする(孵化まで保護をするのはオス)様子を見せていたが、あの卵は食べられるくらいおいしいのか。というかカジカのおじさんそのものも「なべこわし」の異名をとるほど美味であるらしい。

登場する生き物はカジカのおじさんの他、サケ、トゲウオ、ウグイ、キタキツネ、ヨシノボリ、カラフトマスなどなど。写真も語りすぎず、文章も詳しくなりすぎず、実にちょうどいい写真絵本だ。美しい風景の写真があるわけでもなく、驚きを覚えるような文が綴られているわけでもない。はっきり言えば地味な本だ。それでも何だかわからないけれど、何回も読み直したくなる。レイアウトも心地よい。文章と写真が自然に調和した形で作られている。

力尽きたサケたちを描いた次のページには、こんな文章が書かれている。 

 海へ下っていったときには、わずかに10グラムくらいだったサケだけれど、海から川にもどってきたら、3キログラムにも4キログラムにもなっていた。

 死んだサケたちを、ヒグマやキタキツネが食べるのを見た。トビやカラス、オオワシオジロワシも食べていた。食べちらかされてバラバラになってくると、カワガラスセキレイマガモが食べに来た。

「あのサケたちは、アラスカの海で小さなイカやクラゲを食べて育った。そのサケを、シベリアから来てまた帰っていく渡り鳥のワシが食うんだから、アラスカの栄養が、シベリアまで行っちまうってことだよなあ」

カジカのおじさんの語り口は静かだ。擬人化をしつつも、生き物の生きざまを無闇に盛り上げたり、脚色し過ぎたりはしない。さっと読むだけだと、ともすれば中途半端な本、と受け取られかねない絵本だ。しかしゆっくりじっくり読み進め、また始めから読み返してみると、良さがじわじわと伝わってくるのがわかるだろう。まさに“川語り”とするにふさわしい素敵な絵本だ。

カジカおじさんの川語り (たくさんのふしぎ傑作集)

カジカおじさんの川語り (たくさんのふしぎ傑作集)