こどもと読むたくさんのふしぎ

福音館書店の月刊誌「たくさんのふしぎ」を読んだ記録です。

ぼくはカメレオン(第144号)

冒頭に登場するパンサーカメレオンの色味ときたら、まるで『アレクサンダとぜんまいねずみ』に出てくる “まほうのとかげ”そのものではないか。

本号の「主人公」は、このパンサーカメレオンだ。

19ページまでには、目玉の動きに着目した写真、体色が変わる様子、エサを取るところを撮ったもの、枝のうえを器用に移動するための足や尾をクローズアップした写真、睡眠中の姿、縄張りあらそいをする様子、繁殖活動や出産シーン、そして生まれたばかりの幼いカメレオンなどなど、さまざまなパンサーカメレオンの姿が登場するが、誰一人として同じ色合いはない。みな同じ仲間とは思えない風体だ。

パンサーカメレオンが住むのはマダガスカルマダガスカルといえば固有種の宝庫として名高いところだが、カメレオンもご多分にもれず、本書によれば、地球上のカメレオンのなかま100種近くのうち、半分以上の種がマダガスカルだけに生息する固有種なのだそうだ。

後半のページでは、

 では、ぼくのなかまをしょうかいします。マダガスカルにすむカメレオンは、大きく2つのグループにわけられます。木の上で生活するカメレオンと、森の地面近くで生活するカメレオンです。 

ということで、さまざまな「仲間たち」が紹介されている。生息場所は、地面の落ち葉のうらから高い木の上まで多岐にわたり、生息地も東部の熱帯雨林から、南西部の乾燥地帯まで広範囲に及ぶのだという。

 たくさんのカメレオンが同じ島の中で、食べものや、すむ場所にこまらないでくらせるように、ぼくたちカメレオンは、さまざまな場所にわかれて生活できるようにしてきたのです。数万年という長い時間をかけて。

驚くべきことに、カメレオンたちは、体色をまわりに合わせられるというだけでなく、環境にも柔軟に適応してきたというのだ。

しかし、本号の最後では、人間の活動を原因とする環境問題が盛り込まれており、カメレオンを始め他の動物たちの生息地が危機に瀕していることも書かれている。危機の象徴として取り上げられているのがやはり、エピオルニス*1。もはや想像上の動物としか思えない鳥だけれど、砂浜に卵の殻が散らばっている写真を見ると、本当にかつてここで生存していた生き物なんだなあと少し実感がわいた。 

環境問題は本号発行当時から20年以上経った今も進行形の問題で、

 マダガスカルが海にうかぶ1せきの船だとしたら、この島のいきものは、みんなおなじ船の乗組員です。おなじ船の乗組員として、ぼくたちカメレオンは、いろいろなところすみわけるという知恵をはたらかせてきました。だからこそ、今までぼくたちは生きてこられたのです。

 これからは、その知恵をいかして、人間たちともすみわけられないかとぼくは思っているのです。

 という、その知恵を絞っている真っ最中でもある。

「作者のことば」によると、マダガスカルでは、カメレオンは昔から悪魔だと信じられてきたようで、カメレオンの話をするだけで身震いし、撮影ポイントに連れて行ってくれた現地のドライバーなど、実物を見て泣き出してしまったという。アイアイなども、縁起の悪いもの、悪魔の使いとされているのは有名だが、カメレオンも同様の扱いであるらしい。本書には、現地の子供が、カメレオンを服のそでに引っ付かせた写真や、帽子をかぶった頭に乗せた写真などが載っているが、どちらの子供もちょっと不安げな表情を浮かべている。好奇心が残る子供だから、そして素肌に触れていないから、かろうじてできることなのかもしれない。

*1:たくさんのふしぎ」では『恐竜はっくつ記』、『巨鳥伝説』、『小さな卵の大きな宇宙』でもトピックに上がる。