こどもと読むたくさんのふしぎ

福音館書店の月刊誌「たくさんのふしぎ」を読んだ記録です。

人形はこころのいれもの(第116号)

人形ってなんで怖いんだろう?

私は人形を好きじゃなくて、ぽぽちゃんみたいなお世話人形も、リカちゃんもバービーも持ってたけど、ときどきめちゃくちゃに破壊したい衝動に駆られることがあった。

父の知人が私へのおみやげに、ウェディングドレスを纏った可愛らしいブタのぬいぐるみを持ってきたくれたことがあったが、ぜんぜん嬉しくなかったのを覚えている。親は当時できたばかりのディズニーランドに連れて行ってくれて、おみやげにミッキーのでかいぬいぐるみを買ってくれたが、ぜんぜん欲しくなかった。どうしていいかわからなかったのだ。

シルバニアファミリーは大好きだったけれど、集めるのは家や家具、食器ばかり。わずかに持っていたドールは家や家具の飾りとしか思ってなかった。

一方で、私の息子はぬいぐるみが大好き。小6になった今でもぬいぐるみと一緒に寝ている。彼の部屋には多種多様な動物のぬいぐるみが勢ぞろいしている。男の子がぬいぐるみ?と思われるかもしれないが、彼にとってぬいぐるみは、親の温もりの代わりであると考えれば腑に落ちる(親と一緒に寝てる頃もぬいぐるみは手放さなかったけど)。

かつての私にとっての人形やぬいぐるみは、私自身の身代わりだったのかもしれない。私はわたしを好きじゃなかったから、人形やぬいぐるみも好きじゃなかった。結婚に夢を見なかった私が、ウェディングドレスのぬいぐるみを好きになれるはずがないし、ディズニーランドの魔法にかかれなかった私に、ミッキーは微笑まないのだ。

本号の「作者のことば」には、こんなことが書かれている。

 大昔の人びとは、いろいろな悲しみや苦しみ、さまざまなのぞみや願いを、ちょうど王様の耳がロバの耳だと大声で叫ばないとおなかが張り裂けそうなので、穴の中に吹きこんだように、お人形に吹きこんだのです。わかった、人形は人間のこころのいれものとして発明されたなによりも大切なモノなんだ!そういえば、神さまだって仏さまだって、みんな人間が発明したこころのやすまるいれものではないか。そう気がつくと、人形のもつふしぎさがちょっぴりわかったように思えました。

人形がこわいのは、人間の、悲しみや苦しみ、さまざまなのぞみや願いが吹き込まれているからだ。「夢や希望をたくすいっぽうで、不幸やわざわいを身代わりになってひきうけてもらうというやくわり」もあったからだ。

祈りのこもった人形の一例として、オシラサマ*1が紹介されている。人びとはオシラサマの力をかりて、病気の人からわるい霊をおいだしたり、死んだ人の霊をよびよせたりするのだという。何度も飢饉に見舞われ、厳しい土地で生き抜いてきた東北の人々にとって、オシラサマに込める祈りは並々ならぬものがあっただろう。岩手で感染者が出ないのはオシラサマに守られているからか?いやいやいや……。

同じく東北地方の人形としては、コケシもある。

 コケシには、どこか、あのオシラサマのおもかげがのこっています。これいじょう単純なかたちはないというみごとなデザインが、人びとに好まれたにちがいありません。コケシは、いまでも東北地方でさかんに作られ、愛好者がたくさんいます。(本文より)

以前も書いたが、通販の千趣会の社名は「こけし千体趣味蒐集の会」を略したものから取られている。こけし愛好者というのがそんなにいるのかと思って調べてみたら、

全国こけし祭りとは?|開催情報とアクセス|こけし好き女子が急増

のめり込んだこけし愛、業界に衝撃 「こけ女」の支持も:朝日新聞デジタル

東北生まれの伝統工芸品「こけし」:第3次ブームで、こけし飛行機まで登場! | nippon.com

と、最近の記事だけでもまあまあ出てくる。NHKの番組「所さん!大変ですよ」でも取り上げられていたようで、「こけ女」やこけしブームというのは本当のようだ(疑ってたんかい)。こけしにはなにか人を引きつける魔力でもあるのだろうか。私はこけしすごく怖い。網走でうっかりニポポを買ってしまったことがあるが、あれも怖い。なんで二体も買っちゃったのか。

本書にはもっと怖い人形が載っている。

 3才のチーちゃんのかわいがっている人形のなかに、おなかの大きなお母さん人形があるのを見つけたとき、わたくしは、とっさに縄文時代土偶のすがたを思いうかべてしまいました。(本文より)

土偶?36ページの写真にある、その「おなかの大きなお母さん人形」とやらは、バービーのようなすらっとした体型に金髪碧眼の美人さんで、ぽっかり空いたお腹には、目もぱっちり開いた赤ん坊が詰め込まれているというすごいお人形なのだ。土偶が思い浮かぶような代物ではない。表紙の写真のちょうど真ん中くらいにいる、ブルーの服を着た人形がそれにあたるのだと思うが、まさか彼女のお腹に赤ん坊が埋め込まれているなんて誰も想像すらしないだろう。

34〜35ページは、 

 ここにせいぞろいしたのは、ぜんぶチーちゃんのおうちにある人形です。3才のチーちゃんとお母さん、チーちゃんのおばあちゃんとそのお母さん(ひいおばあちゃん)の4世代の人たちが代々かわいがってきた人形たちです。 

ということで、ソファに座るチーちゃんを中心にズラッと並ぶ人形たちと、後ろにはお母さん、おばあちゃんが写り、記念写真のような様相を呈している。チーちゃんが手に持つのは「チーちゃんが大切にしているテレビのキャラクター人形*2」で、これだけ人型でない人形なのが、なんだか恐ろしい。チーちゃんは人間なんだろうか?もしや人形の一部なのでは……。

*1:馬と生きる』には由来譚が載る。

*2:ピングーだと思われる。