こどもと読むたくさんのふしぎ

福音館書店の月刊誌「たくさんのふしぎ」を読んだ記録です。

“豪華客船ミステリーツアー”へようこそ!(第234号)

その先どうなるの?』では架空の遊園地「きりなしランド」を、 『7つ橋のぎもん』では、古都ケーニヒスベルクでの旅を案内してくれた作者が、次に手掛けるのはなんと豪華客船クルーズ。しかし、作者は「数学旅行作家」を名乗る人物であるからにして、ただのクルーズ、ただのミステリーツアーではない。ミステリーはミステリーでも、数学パズルをからめたミステリーなのだ。

覆面算に、迷路パズル、トポロジー、魔方陣といったトピックを、豪華客船で起こる“事件”に関わらせつつ展開する物語は、たとえパズルに取り組まなくても面白いお話に仕立てられている。私は一通り読んだあと、再読してパズルに挑戦してみたが、子供は紙もペンも使う様子がなかったので、パズル部分はスルーしたものと思われる。小学生向けの本だから、すごく難しいパズルではないけれど、それなりに頭を使うものになっている。しかし、縄抜けのシーンだけは、パズルと気づかなかった子供も多かったかもしれない。

クルーズの雰囲気や船内の様子も盛り込んだ本書は、豪華客船自体を紹介する本にもなっている。もっとも絵のテイストはカジュアルなので、あまり“豪華”に見えないのが惜しいところだ。イラストを美麗にしすぎて、客船のビジュアルに目を奪われてもそれはそれで本末転倒なので、これくらいがちょうどいいのかもしれない。

舞台となる客船は、その名も「はてな丸」。協力に商船三井の名があり、外観からしてモデルはおそらくにっぽん丸ではないかと思われる。 横浜から神戸へのワンナイトクルーズという設定だ。付録には、はてな丸の船内案内図、そして船の組立工作がついていて、夏休みらしい号になっている。それにしても船内案内図というのはなぜ、こう見るだけでわくわくしてくるのだろう。豪華客船など乗ったことはないし、乗船するのはおがさわら丸を始め移動手段としての客船だけだが、乗船中は船内案内図を飽かず眺めては探検に出かけるのを楽しみにしている。

「作者のことば」によると、仲田先生は「数学ルーツ探訪」の世界旅行を達成した後、新境地を求めてクルーズ旅行に参加することにしたのだという。ギリシア船、イタリア船、日本船、イギリス船など、先生曰く「世界四大海運民族の豪華客船で5回のクルーズを体験」したということだ。クイーン・エリザベス2 に乗船したときのクルーズカードの写真があって、2004年3月に横浜から香港まで乗ったことがわかる。 

今や豪華客船クルーズは、“ハイリスク”な旅となり、いつ再開するとも知れぬ幻のツアーとなってしまっているが、こうした誌面上でなら、いつでもどこでも安価に楽しむことができる。今後、豪華客船クルーズ自体が無くなってしまうことはないだろうが、航海の仕方や船内でのエンターテインメントなど、これまでとは違った形での運航になる可能性がある。一度でも乗っておけば良かったかなあという考えがよぎったが、たぶん(経済的に)乗れなかっただろうなあ。