こどもと読むたくさんのふしぎ

福音館書店の月刊誌「たくさんのふしぎ」を読んだ記録です。

キタキツネのおかあさん (たくさんのふしぎ傑作集) (第304号)

「里帰りですか」、私は声をかけていました。

声をかけられたのは若い2匹のメスギツネ。娘っこのキタキツネたちだ。里帰りというのは8月の中ごろ、母から巣穴を追い出されたのにちょくちょく帰ってきて、9月の終わりにはまた母元で暮らすようになったからだ。

とはいえ、里帰りが“許される”のは娘たちだけ。同時期に育った男たちは、70キロ以上離れた地で自分のホームレンジを探す旅に出ているからだ(『ひと・どうぶつ行動観察じてん (たくさんのふしぎ傑作集)(第120号)』)。

出産、子育てにむけて巣穴の準備やマーキングに余念がないメスたちと比べて、オスは、

 雌ギツネがこんなにいそがしくしているのに、雄ギツネは楽でのんきな毎日をおくっています。

とか書かれてしまっている。「ダーウィンが来た!」とか見てると、オスはオスでけっこう過酷な生活なんじゃないかなと想像してしまうが。

発情期もはっきりせず、交尾のOKサインもさまざまな人間たちと違って、キタキツネの世界は明快だ。メスはオシッコの匂いでサインを送る。不思議なことに、里帰りした娘たちの初めての発情期は、母から少し遅れてやってくるのだという。

交尾が済んで妊娠したメスギツネは、巣穴の前でひたすら眠りこけて終日過ごすようになる。私も妊娠した時、異常なほど眠くて、旅行の移動中もひたすら寝ていたことを思い出した。あまりにもおかしかったので、帰ってきて調べたら妊娠していたという次第だ。

娘ギツネたちは、お母さんのお古の巣穴を使わせてもらったり(お母さんは自力で新築)、お母さん家族と協力して子育てしたり。巣立ったとはいえ、娘たちにとっては初めての妊娠、出産、子育て。先人であるお母さんと一緒ならどんなにか心強いことだろうか。お母さんにとってもメリットがある。娘たちと交代で狩に出かけたり、交代で見張りや授乳をすることができるのだ。

娘たちがお母さんギツネから子育てを学ぶように、子ギツネたちもまた、子ギツネのお母さんから行動を学ぶ。学ぶは“まねぶ”とも言われるように、子ギツネたちの行動は遍くお母さんの真似だ。

おかあさんギツネは、日ごろの行動のいいことも悪いことも、子ギツネたちにすべてまねされます。おかあさんギツネの生き方が、子ギツネの一生の生き方を決める、といえるかもしれません。

つまり、人間がキタキツネに餌付けをしてしまえば、餌付けを食べるお母さんの行動は、子ギツネにも引き継がれてしまうのだ。

野生動物の「食」を考える FeedingWG

著者竹田津実*1氏の本業は獣医師。診療の合間をぬって、平日は朝4時から7時半、夕方4時半から7時半と、土日も含め限られた時間のなかで、キタキツネたちの観察を続けるのだ。著者が観察するのは、本号で描かれる家族だけでなく、巣穴は100個、23家族にも及ぶという。

「里帰りですか」なんて、キツネたちに話しかけているものの、筆致は冷静そのもの。あくまでキツネたちの行動を描くことに徹している。写真は必ずしも「絵になる」ものばかりではないが、うまく場面を切り取りすぎていないところが逆に自然に感じられる。コロコロつやつやの子ギツネたちと、ボサボサで痩せたお母さんギツネとの対比をぜひ見てみてほしい。私もあんなんだったんだろうか?

キタキツネのおかあさん (たくさんのふしぎ傑作集)

キタキツネのおかあさん (たくさんのふしぎ傑作集)

  • 作者:竹田津 実
  • 発売日: 2013/10/20
  • メディア: 単行本

うちの子ギツネ(雄12歳)も、そろそろ繁殖の準備ができてくる時期だ。多くの動物たちと違って、ヒトの繁殖行動のルールは複雑だ。とくに晩婚化が進む現代の先進国では、繁殖シーズンをむかえてから、実際の繁殖(結婚・出産)に至るまで、かなりの時間がかかっている。

身体は繁殖準備ができているのに、社会的にはストップがかけられる。そんな矛盾した状況におかれるのが思春期だ。子供たちは、社会的にストップをかけられた上で、セックスについてほとんど教わらないまま大人になる。

セックスについてわざわざ教わらなくたって、「性教育」なんてなくたって、私たちだってなんとなく大人になって、普通にセックスしてるじゃないか。とは思うものの、やはり避妊くらいは「正しい知識」を教えておきたいものだ。ついでにいえば、親としての自分がセックスをどう考えているか、なんとなく伝えたいとは思ってきた。面倒くさいものだけど。

しかし、こういうのはきっかけが難しいものだ。ちょうど今朝、7時台のNHKニュースで「変わるか 日本の“性教育”」という特集をやっていたので、子供と朝ごはんを食べながら一緒に見てみた。

WEB特集 変わるか 日本の“性教育” | NHKニュース

本の学校での現状のあと、欧米(ドイツ)の学校での授業の様子が紹介された。「このあと刺激的と感じられる映像が流れますが」のアナウンスでピンときたが、中学校の生物の授業で、コンドームの装着の仕方を教える様子が流れてきた。子供たちはペニスの模型にコンドームを着ける実習をおこなっていて、先生は外すときの注意点まで教えているのだ。

息子にこの映像を見せることができて、本当にタイミングが良かったと思う。さすがの私も、あえてここまでの実習を家庭でする勇気はないからだ。

私が子供に付け加えたのは、コンドームは避妊だけでなく、性感染症を防ぐためでもあるということ。感染症をできるだけ防ぐ、ちょうど今着けているマスクと一緒なんだよと(夫はちんぽマスク?と茶々を入れてきた)。セックスの相手*2が信頼できるかどうかと、避妊や性感染症予防は別の話、コンドームを着けるに越したことはないということ。より病気を防ぐためには、不特定多数の人とセックスしない方が望ましいこと。

子供はちょっと居心地悪そうだったけれど、真面目に聞いてくれた。梅毒とか?という言葉も聞かれたが、梅毒知っててコンドームを知らないんじゃバランスが悪すぎるというものだ。病気だって梅毒の前にクラミジアとか割とメジャーなものもあるんだけどなぁ(今日は教えなかったけど)……。

*1:消えたエゾシロチョウ(第264号)』、『わが家は、野生動物診療所(第337号)』参照

*2:私はセックスという言葉になんとなく照れがあって、子供には“番いの相手”みたいに言い換えてしまうことも多い。子供は野鳥が好きなので、野鳥の繁殖行動などに擬えて少しずつ伝えてきたこともある。