こどもと読むたくさんのふしぎ

福音館書店の月刊誌「たくさんのふしぎ」を読んだ記録です。

ライオンタマリンの森(第155号)

先日の「ダーウィンが来た!」は、ゴールデンライオンタマリンだった。

子猫ほどの大きさなのに、びょんびょん跳びまくって虫を捕まえる、すごいサルだ。助走なしで体長の10倍ものジャンプを繰り出し、ちっこい手でバッタをガシッと捕獲する。頭からバリバリ食べる様子を見ると、なんだかバッタがおいしそうに見えてくる。

ブロメリアという種の植物には水がたまるようになっているが、そこを住みかとするのがカエル。入ってきた虫を、長い舌でぺろーんと捕まえて食べている。そこへやってきたのはライオンタマリン。ブロメリアの奥から、カエルを細長い指で引きずり出して捕獲!これも生きたままかぶりつく。

細長い指と爪を器用に使うさまは、アイアイ(『なぞのサル アイアイ (たくさんのふしぎ傑作集)(第226号)』)を思い起こさせる。それもそのはず、ライオンタマリンの先祖は、もともとアフリカ大陸からやってきたと考えられているのだ。アフリカ大陸で大きな洪水が起こり、切り離された浮島ごと流されたサルが、たまたまアメリカ大陸にたどり着いたということらしい。アフリカにいた頃の先祖は昆虫食の小さなサル。新天地の南アメリカがアフリカと似たような環境だったため、体長などもほとんど変化しなかったようだ。

本号『ライオンタマリンの森』と「黄金のサル とびっきりの仲良し家族」の番組は、ちょうどうまく補い合うような関係になっている。本書で描かれた絵が、リアルの映像として見ることができるというだけではない。内容も「たくさんのふしぎ」で書かれなかったところが「ダーウィン」で解説され、逆に「ダーウィン」で不足しているところが「たくさんのふしぎ」で書かれている。

たとえば、ライオンタマリンが家族でエサを分け合う様子。本号では、年上のきょうだいが赤ちゃんにエサを分け与えるシーンは、

このように強いものが弱いものにエサをゆずることは、ほかのサルにはあまり見られません。

という説明があるだけだが、「ダーウィン」では、強いものが弱いものにエサをゆずるだけでなく、家族間でもエサを分け合う様子が描かれている。好物のカエルを、すぐさま自分の口に入れるのではなく、狩のあいだ見張り役をしてくれた家族にお裾分けするのだ。年長のきょうだいがエサを分け与えるのも、赤ちゃんが自力でエサを取れるようになるまでの離乳食がわりということらしい。

その他、なぜライオンタマリンの赤ちゃんは双子なのか、なぜ母ザルは赤ちゃんの世話を家族に任せっきりでエサを食べまくっているのかなど、「たくさんのふしぎ」には書かれていないところも解説されている。

一方で、おとなり家族との縄張り争いの場面。「ダーウィン」では家族総出での縄張り主張行動だけが描かれていたが、「たくさんのふしぎ」では、なんと親同士の争いの間に両家族の子供たちが交流する様子が書かれている。子供たちはいずれ独り立ちする時、結婚相手を探さなければならない。ご近所さんはトラブルの相手であると同時に、手近な婚約者候補でもあるというわけだ。

ダーウィン」では、ゴールデンライオンタマリンが生活する森に暮らす、ほかの生き物たちも紹介されていたが、「たくさんのふしぎ」でも同じく、森のどんな場所にどんな生き物が生活しているか、14〜15ページの縦見開きいっぱいを利用して描かれている。「ダーウィン」を見ただけではわからなかったが、この絵を見ると、ムリキ(ウーリークモザル)は木の高いところ、ライオンタマリンは低いところでうまく住み分けて暮らしている様子が一目瞭然でわかる。

そして「ダーウィン」では詳しく触れられていなかったところ、「黄金のサル・復活大作戦」がどんなものだったのか『ライオンタマリンの森』では、本文40ページの半分を費やして描かれている。すなわち、

 そこで、ライオンタマリンがいなくなってしまうことをふせごうと、世界じゅうの動物園が協力することになりました。ライオンタマリンのすみかである「大西洋の森」を広げ、そこに動物園で育てたライオンタマリンをはなして、数をふやそうというのです。

という取り組みの全容だ。

動物園で生活していたライオンタマリンを自然に放そうというのだから、野生で生きる術を身につけさせなければならない。野生の赤ちゃんが親や家族を見て自然に学んでいくことを、動物園で大人になったライオンタマリンに、人間を通して教えなければならないのだ。なかなかに大変なことだ。動物園から選ばれた2頭が、つがいとなってエサの取り方や身の守り方などをトレーニングする様子は、人間の勝手ながらがんばれー!と応援したくなってくる。

訓練を終えた後は「大西洋の森」でサポートを受けながらの野生生活。トレーニングしたとしても、はなされて2年くらいで、約3分の2が死んでしまうのだという。エサを探せなかったり、天敵に襲われたり。それでも1998年出版の本号で、

今では、野生のライオンタマリンは、約500頭ほどしかいません。

と書かれていたライオンタマリンは、 「ダーウィンが来た!」での話によると、約3200頭ほどにまで回復したという。生息環境を整えるための植林活動も地道に続けられていて、分断が進んでいた森も見事な「緑の回廊」となって、ライオンタマリンたちの生活を支えているという。

しかし現在、黄熱病の流行で再び数を減らしつつあるという心配なニュースもある。ワクチン投与作戦も、ヒトの世界での感染症流行の影響で、計画が大きく遅れてしまったようだ。

絶滅危惧タマリンが30%減少、救済策はコロナで遅延 | ナショナルジオグラフィック日本版サイト」

 

ちなみに日本では、浜松市動物園で現在2頭が飼育されている。

浜松市動物園公式サイト/わくわく!はまZOO/NPO法人浜松市動物園協会

本号の「ふしぎ新聞」にも、ライオンタマリンに会いに、浜松市動物園を訪れた様子が書かれているが、当時は8頭いたようだ。両親2頭に、子供が6頭生まれていたのだろう。1994年ブラジルからやってきたペアは、20回の出産で38頭もの子宝に恵まれたという。現在いる2頭はオスのきょうだい。2002年と2003年生まれで寿命は10年~16年ということだから、もはや繁殖の望みは失われているのかもしれない。2頭の死の後は、日本でライオンタマリンを見る機会はなくなってしまうことだろう。