こどもと読むたくさんのふしぎ

福音館書店の月刊誌「たくさんのふしぎ」を読んだ記録です。

光の正体(第427号)

What is Light?  光ってなに?

これまた根源的な問いが出てきたぞ。子供に聞かれてパッとスマートに説明できる人はかっこいいなあと思う。えーっ何かなー?んー……と詰まってしまう、「かっこよくない」私にうってつけなのがこの『光の正体』だ。

「私たちが見ている太陽は8分前の太陽」という光の速さの話から始まって、最後は「光は波でもあり粒子でもある」という説明にまで行き着く……と聞けば、なんだか難しそうなお話だと思われるだろうが、そこは「たくさんのふしぎ」。小学生にわかるように、平易な言葉を使い、想像しやすいシーンで説明しながら「光の正体」に迫ってゆく。子供にむずかしそうな言葉といえば「網膜」「粒子」そして「量子力学」くらいではないか。これも本文中できちんと説明された上で使われている。

光の波長によっては人間に見えない光がある、赤より波長が長い「赤外線」や、紫より波長の短い「紫外線」のお話、そして「昆虫も、紫外線を見ることができるといわれています」という説明は、

あ、『まぼろし色のモンシロチョウ 翅にかくされた進化のなぞ(第423号)』に出てきた!

と気づく子供もいるだろう。

ともすれば、かたい調子になりがちなお話を和らげているのが、光を擬人化したキャラをふんだんに使ったイラスト。くっきりした色で描かれているのに、やわらかな感じがするのは、輪郭線は出さずゆるやかな曲線をメインに、すっきり仕上げているからかもしれない。

「作者のことば」では、光の正体を知ると具体的には何ができるのか、研究が進めばドラえもんに出てくる「透明マント」のようなものや、電池のように光をとじこめておける「光池」も実現するのではないか、と夢のようなことが書かれている。

いまの私は光のことを知るだけで精一杯、果たして、

光は本当に奥深い存在であり、大きな可能性を秘めているのです。(「作者のことば」より)

という言葉を実感できる日は来るのだろうか。 

おもて表紙の絵の、色合いや構図は、幻想的な雰囲気を醸し出している。とてもいい。表紙は見開きいっぱいフルカラーで作られていて、一枚の絵として見られるようになっているのだが、どうしてか一体化して見えないのが残念なところだ。せっかく背表紙にかけて絵をつけているのに、「月刊 たくさんのふしぎ」の文字もデフォルトの赤(『きになる みがなる(第115号)』参照)でなく白抜きで作られているのに、ひとつの絵として見づらいというのは気になるところだ。裏表紙下部の、定価やバーコードを載せた白抜き部分がノイズになっているのかなあと思った。 

光の正体 (月刊たくさんのふしぎ2020年10月号)

光の正体 (月刊たくさんのふしぎ2020年10月号)

  • 作者:江馬 一弘
  • 発売日: 2020/09/03
  • メディア: 雑誌

「ふしぎ新聞」のおたよりコーナーには、高橋校腸のヒミツに迫る手紙が寄せられていた。

「今までのふしぎ新聞からがんばって情報収集した」というヒミツを書いたほかに、「ふしぎ新聞通巻1号のおたより募集はどうしたの?」という質問が。

校腸によると、かつて本物の「みみずの学校」が開かれていて、はじめはそこでの実際のやり取りを元に「たくさんのふしぎ」誌面上の「みみずの学校」を作っていたのだという。創刊後すぐ読者からおたよりが来るようになり、現在のスタイルで作られるようになったということだ。通巻427号にして、こんなことが明らかになるとは。面白いものである。