こどもと読むたくさんのふしぎ

福音館書店の月刊誌「たくさんのふしぎ」を読んだ記録です。

星空はタイムマシン (たくさんのふしぎ傑作集)(第41号)

小惑星探査機はやぶさ2による、サンプルリターンのミッションが成功した。

カプセルが到着したJAXA相模原キャンパスには、以前見学に訪れたことがある。そればかりでない。種子島宇宙センター内之浦宇宙空間観測所調布航空宇宙センター筑波宇宙センター。大して知識も興味もないくせに、これだけJAXAの施設を無駄に訪れている家もないのではなかろうか。

『星空はタイムマシン』は、大マゼラン雲で発見された“新しい星”の話から始まる。チリのラスカンパナス天文台イアン・シェルトンが見つけた*1星だ。新しい星といっても新しくはない。いや、新しいか?超新星は、星のおわりであると同時に星のはじまりでもあるからだ。

 一生のおわりなのに、なんで超新星とよんでいるのかというと、いままで見えなかった星が、急に明るくなって見えてくるからだ。むかしの人はそこに新しい星が生まれたと思ったんだ。ほんとうはそこに星がなかったわけではなくて、もともとあったけど暗くて見えなかっただけなんだ。

大マゼラン雲までは16万年光年。この超新星SN 1987Aの大爆発は「太陽の2億倍も明るくなった」のだという。太陽の2億倍というのもよくわからないけれど、大マゼラン雲までの距離、16万年光年というのも想像の埒外にある。すっごく遠いとこで起こったことだけど、すっごい大爆発でめちゃくちゃ光ったから、すっごく遠い地球からでも見えたってことでしょうかね。

そもそも1光年ってことすら、よくつかめないじゃないですか。光が1年かかってすすむ距離っていわれましても……。光は1秒間に30万キロすすむって、だから1光年は約9.5兆キロメートルですって?じゃあ、大マゼラン雲までの距離は何キロメートルですかって?もう計算は勘弁してくれ〜。ちなみに、はやぶさ2がサンプルを採取した小惑星リュウグウは約3億km。3億キロ……想像できるようなできないような。でもこれ、近い方ってことですよね?

16万年光年もはなれた大マゼラン雲にある超新星の爆発を、1987年2月24日に見たとしても、その光が超新星を出発したのは、なんと16万年もまえのことなのだ。

ホント、これ不思議ですよね。身近で見る光というのはリアルタイムでとどくものだから。ずっと前に発せられた光がいま届いたといわれても、なかなか感覚がつかめない。リュウグウとのタイムラグは17分程度らしいが、これくらいならなんとか想像の範囲内かなあ*2

いま見てる星は、ずっとむかしの光。現地のいまでは、跡形もなく消えさってるかもしれないなんて。だから本書では「誕生星をさがそう」ということで、できるだけ想像しやすくなるようなアイディアも提案されている。たとえば、12歳も半分くらいすぎた息子の「現在の誕生星」は、12.75光年にあるカプタイン星ということになるだろう。子供が生まれたころに光ったカプタインの光が、いま地球に届いているということなのだ。

 遠くを見るということは、じつはむかしを見ていることなのだ。むかしが見えるなんてタイムマシンみたいだね。

『星空はタイムマシン』の月刊誌発行は1988年。今となっては、この本自体が“タイムマシン”のようだ。2〜3ページには、超新星SN 1987Aの写真が全面に映し出されているが、子供のころの図鑑で見たような質感の写真なのだ。まあ1988年なんて、実に私が子供のころだから当たり前のことだが。

タイムマシンはもう一つある。本書の最後で触れられている「神岡鉱山ニュートリノ発見さる」だ。なんと1987年2月23日には、神岡鉱山もといカミオカンデで「大マゼラン星雲でおきた超新星爆発 (SN 1987A) で生じたニュートリノ」が検出されていたというのだ(今ごろそのレベル?)。私がニュートリノという言葉を知ったのはいつだった?せいぜい小柴先生(先月惜しくも亡くなられた)が、ノーベル物理学賞を受賞した2002年くらいなのではないか?中学生の私がニュートリノのニの字も知らないとき、原子とかようやく習い始めたばかりの頃に、小学生が読む「たくさんのふしぎ」は、もうニュートリノの話を取り上げていたのだ!

1987年2月23日?チリの天文台でシェルトンが観測したのは1987年2月24日ではないか。この謎も本文ではきちんと説明されている。

 ニュートリノ超新星がチリで見つかった2月24日の1日まえ、2月23日にとどいていた。実は、超新星が爆発したときの光が地球に到着したのも、24日ではなく23日だったのだ。天文学者が気づくのが1日おくれたのだ。

この本を書いた松田卓也先生は、この後ニュートリノ研究で小柴先生、梶田先生と二度もノーベル賞を受賞することを予想してらしただろうか?

 

イラストは独特の世界観を創り出す、たむらしげるによるもの。どこか違う世界に連れてってくれるような、ファンタジックなテイストは絶品だ。今でも古めかしく感じさせない。よく見ると、輪郭線きわにピンクとブルーを効果的に使っていることがわかる。たとえば、星は青をバックに白ぬきで描かれているが、きわにピンクとブルーをちょこっと入れることで、瞬いているかのように見えるのだ。表紙の天文台の絵も素敵だが、私のお気に入りは34〜35ページの科学者の顔の絵。とくにたむらしげるの世界を感じさせる絵ではないのだが、なんだかひかれてしまう。シンプルな線でシンプルに描かれた顔のなかで、地球を模した瞳だけがきらめいている。

このページに書かれた著者からの“宿題”、

 きみたちに、宇宙は150億年まえにはじまったというと、じゃあ、そのまえはどうだったの?というしつもんをするかもしれないね。でもそれについてはざんねんながら、よくわかってない。きみたちが大きくなって、いっしょうけんめい勉強して、すごい科学者になって、その答えをわたしに教えてほしい。

は、少しは解き明かされてきているのだろうか?