こどもと読むたくさんのふしぎ

福音館書店の月刊誌「たくさんのふしぎ」を読んだ記録です。

おじいの海(第230号)

これは、おじいのショートフィルムだ。

表紙はさしずめスチル写真。裏表紙のおじいは、映画スターのようにかっこいい。

モノクロを基調とした映画は、おじいが海にいるときだけ色をもつ。海は人生そのものだから。おじいの人生は、海によって彩られているのだ。

海を上がったおじいの、モノクロのおじいの顔は優しい。心配げな八重子おばあを尻目に、こそこそ海に出る様子も茶目っ気がある。カラーの、海にいるおじいは厳しい。仕事をする男の顔をしている。どちらのおじいもいい顔だ。

以前、与論にいったとき、民宿でスクガラス豆腐が出て、スク漁の話を聞かせてもらったことがある。おじいにとってもスク漁は、孫の結婚式すらさておきたいくらいの楽しみだ。「海からのボーナス」ともいわれる特別な時期。あんなちっちゃいのに、特別な魚なのだ。

スク漁 | 動画で見るニッポンみちしる | NHKアーカイブス

海に出るのがいちばんいいさあ。

気分がスカッとする

おじいは海でしか生きられない。沖縄では漁師を「海人うみんちゅ」と呼び習わしているが、おじいにこそ捧げられる言葉ではないだろうか。

その後を追うと……

おじいは2010年まで生きた。息子と、久しぶりに漁に出かけた際、おじいの心臓は鼓動を止めた。蘇生後、療養を続けたのち旅立つ。92歳だった。ちょうど昨日、5月5日が命日にあたっている。