こどもと読むたくさんのふしぎ

福音館書店の月刊誌「たくさんのふしぎ」を読んだ記録です。

カーニバルがやってきた!(第279号)

カーニバルやってきた

カラフルでパワフルな一冊。

人、人、人……色、色、色!

どのページも人と色で埋め尽くされている。

どのページからも歓声、歌声、音楽……さまざまな音がごっちゃになって漏れ出してくる。聞こえないのに、本当に聞こえてくる。

お祭りは非日常だ。

月刊誌の背表紙は赤く染め上げられ、「月刊 たくさんのふしぎ」の文字は白抜きであしらわれる。カーニバル、まさに“お祭り”にふさわしい仕様だ。

非日常は、日常(デフォルト)の装丁とは違うのだ。

 

作者は「日本で唯一、世界中でも二人しかいないカーニバル評論家」。

カラフルなページに負けじと、熱い言葉を繰り出してくる。

年に一度だけ、貧しい人たちが、リオの街の主役になれる夢のステージ。

奴隷たちは手には何ももたずに新しい世界にたどりついたが、心のなかにはアフリカの神さまを、身体の奥にはふるさとの音楽を隠しもってきた。

インドの聖人ガンジーが唱えた平和への思いが、遠いブラジルのカーニバルのなかに流れている。

ふだんはものしずかな人たちが、カーニバルのときだけは別人のように大騒ぎするのも、やっぱりお祭りがもっている魔法の力だろう。

お祭りはふだんとはちがう世界が現れ、いつもとはちがう人たちが主役になる。

カーニバルは、日常の「秩序」を、この時だけはひっくり返し打ち壊す一種の戦場なのだ。普段は押さえつけられているもの、なかに隠されている密やかな感情を、開放し爆発させるステージなのだ。カーニバルという“平和な戦場”の混沌で生まれるのは、分断ではなく連帯だ。肌の色もルーツも思想もそれぞれの人たちが、みな一体となってカーニバルという場を作り上げる。

ビバ カーニバル!

けんかも戦争もやめて、

みんなカーニバルに集まろう。

ラストの軽やかな声かけが、今は身にしみてくる。

 でも、ひとつのことを続けていると、世界は違って見えてきます。世界がどんどんふくらんでいきます。世界がどれだけ同じで、どれだけ違うのか、実際に自分の目で確かめてみませんか。世界のどこかのカーニバルで会える日を楽しみにしていますね!(本号「作者のことば」より)

特集ワイド:熱気、コロナを打ち破れ 世界に2人だけのカーニバル評論家、白根全さん | 毎日新聞