舘野さんが、満を持して「ふしぎ」に登場。
しかもうんこ虫と来たよ。
舘野鴻氏との出会いは『しでむし』が最初だった。シデムシという“日陰者”に、美しくスポットを当てた作品。ひと目でつかまれた。その後も『ぎふちょう』『つちはんみょう』『がろあむし』とすべて読んでいる。大判の画面に緻密なイラスト、ムシのどアップが満載。苦手な人には厳しいかもしれないが、どれもこれも素晴らしい絵本だ。
そんな舘野さんの『うんこ虫を追え』。どんな「ふしぎ」ができるんだろう。
重厚で、ともすれば読むにもパワーがいる作品の数々。意外や意外「たくさんのふしぎ」では一転、軽やかでコミカルに仕立てられている。
初っ端からこうだ。
オオセンチコガネという虫がいる。
宝石のようにキラキラ輝き、丸っこい体に短い手脚もかわいい。
そして、この虫の大好物は……うんこ。つまりうんこ虫だ。
うんこに宝石、このギャップがたまらなく魅力的。
偕成社の絵本では一観察者に徹していた舘野さんが地を出している……。このギャップがたまらなく魅力的。
次のページでは早くもイラストでご自身がご登場。しかもうんこ座りだ。
それからも地が出る、自が出る。
キラキラかわいいオオセンチコガネは絵本の主役にもってこいだ。
しかもうんこがあれば簡単に飼育できそう。
とかいいつつ、
飼育するとなると……あ、うんこの調達か。やだなあ。
ですよ。
参考書としてファーブルの本を読みつつ、
あらためて読むとやっぱりファーブルはすごい。
変わり者というか一途というか、
謎に挑みつづける情熱はハンパではない。さすがだ。
と感心する一方で、
私にそこまでできるかなあ。
という弱音も。
何をおっしゃいますやら。しまいにゃ自分のうんこ、名付けて“オレフン”も駆り出してくる(放り出してくる)アナタが、聞いて呆れますよ。
こんな調子で綴られていくけれど、中身はいたって真面目そのもの。遊びながらやってるように見えて、きちんと「観察、実験の結果を整理し考察する」ものになっている。
観察を始めてから4年。少しこの虫のことがわかってきた。
ようやく絵を描き始められそうだ。
『がろあむし』は取材に10年を費やしたというから、4年なんて短く感じられてしまうのがこわいところだ。
オオセンチコガネの、そして舘野さんの魅力をたっぷり味わえる一冊だ。別に「キラキラかわいい」とか思ってなかったオオセンチコガネが、本当に愛おしく思えてくる。ムシのどアップはほとんどないので、苦手な方(子供)もイケるはず。表紙に登場するサイズがマックスといっていい。事前の期待以上、最っ高の絵本に仕上がっている。ふしぎ新聞の「作者のことば」も必見だ。