こどもと読むたくさんのふしぎ

福音館書店の月刊誌「たくさんのふしぎ」を読んだ記録です。

石は元素の案内人(第449号)

子供は「石に執着する子」。

おまけに、いま学校で学習してるのは、元素など化学分野だ。

この『石は元素の案内人』に飛びつくだろうなと思ってたら、案の定届いてすぐに飛びついた。

学校にも“石友”がいて、石談義や石の交換みたいなのもしてるらしい。先日は一人で上京し、特別展「空也上人と六波羅蜜寺」を見に行っていたが、そのついでに寄ったのが多摩川。“石友”のために石を拾いに行ったという。こちらはあまり石の河原がないからだ。さらに科博ミュージアムショップで、鉱物標本みたいなのを買ってくる始末。帰宅した子供の荷物は「石」がいっぱい詰まって死ぬほど重かった。アホか?

 

息子と同じように、いやその何百倍以上に熱い鉱物好き石好きが各方面いらしてるはずなので、本号のメインである「石や元素」方向の素晴らしさはそちらの感想に譲りたい。

私が注目したのは「人」だ。本書は「人」の話でもある。

表紙を見よ。人がいるではないか。裏表紙にも人。タイトルにも「人」がいる。

冒頭2ページにも人(おそらく作者)。4ページ目の結晶を持つのも人の指。

石の話だけど、人の影があちこちにチラつくのだ。

それもそのはず。本号で見せたいのは、石に関わる「人の営み」でもあるからだ。過去の人たちの営みこそ「化学という学問のとびらをひらかせ、わたしたちに元素、目には見えない原子の存在にきづかせて」くれたものだからだ。

後半には「自然のなかから元素を集める」実験がいくつか紹介されているが、これも過去の人びとの苦労を追体験するものだ。過去ばかりではない。今未来にいる私たちの「石に関わる営み」も見せてくれる。34〜35ページで紹介される、研究成果がそれだ。

さらに「作者のことば」でも、「石に関わる作者の営み」を読むことができる。

そのエピソードを見れば驚くこと間違いなし。子供というのは本質的に「アホ」な存在だということがよくわかる。何かに夢中になり、何かを欲するときの子供のパワーときたら、呆れるくらいのものがある。なまじ知ってしまった大人のように、こんなんは無駄な時間だとか、こんな無駄なものとか、こんなことは無理だとか……子供は決して思わない。知らないからだ。知らないからこその、知りたいというエネルギーは凄まじいものがある。決してマネしないでください。もとい、マネさせないでくださいって感じだけど。だが、過去の人たちの営みが、石をして元素を案内させたように、子供の頃の作者の営みが、今の作者と「たくさんのふしぎ」を作り上げていることは確かなのだ。

いずれ傑作集になるだろうけど、「両面フルカラー豪華ポスター付き」770円!という破格の値段で買えるのは今だけだ。是非とも手に入れてほしい。

 

子供は拾ってきた石を、“石友”のために割って分けてあげるんだー中身も見れるし。ってことで、夫の登山用ピッケルを持ち出し、いきなり石に向かって振り下ろし始めた。あわててストップをかける。

待て待てぇっ。水辺の楽校(『石ころ 地球のかけら (たくさんのふしぎ傑作集)(第77号) 』)で、そんな格好で石割ったりしなかっただろーがっっ!

ゴーグルと軍手を装着させ、あらためてピッケルが石に叩きつけられた。まあやっぱり勢いだけで行動するって恐ろしいわ……。

 

ちなみに、裏表紙の奥付には、

実験する際には、かならず知識のある大人と一緒に、適切な方法でおこなってください。とくに火をつかう実験をする際は、風通しのよい場所で、やけどと火事に十分注意しておこなうようにしてください。

※岩石・鉱物の採集は許可を得ておこないましょう。

ときちんと注意書きがあります。