こどもと読むたくさんのふしぎ

福音館書店の月刊誌「たくさんのふしぎ」を読んだ記録です。

星空をながめて(第450号)

英題は"IMAGINATION OF THE STARRY SKY"。

星空の「科学」の絵本ではない。

「作者のことば」で言われるとおり「星空を眺めてきた人類がどんな想像を楽しんできたのかを描こう」とする本なのだ。

主人公はルナ。10歳の女の子*1だ。夏休み、八ヶ岳の高原近くに住むおばあちゃんのところで過ごしている。

ルナはどうやら新しい学校でうまく過ごせていない模様。学校に馴染めない少女が、自然豊かな環境の祖母の元で心身を癒していくという設定は『西の魔女が死んだ』を思わせる。

読者もただ、ルナと同じようにおばあちゃんの「星空話」に耳を傾ければいい。ホッとできるような時間が流れている。夏休みシーズンということもあり、自分の少女時代の夏休み、祖母と過ごした思い出などが、次々とよみがえってきた。

 

最初に登場する星空の“ほし”は月。主人公の名前が月の女神に因んだものだからだろう。

だから、月のみちかけのように、人の気持ちもいろいろにゆれていいんじゃないかなって思うの。

太陽系の惑星の話では、ギリシャ/ローマ神話の神々も紹介される。この箇所で、元素を学習中の家の子供には、天王星ウラン海王星ネプツニウム冥王星プルトニウムなんだよ!とドヤ顔で披露される羽目になった。神さまより元素なのか。

星座の話から黄道12星座、占星術にまで至る流れには、大人の読者のなかには少し戸惑う人もいるかもしれない。これは作者が「心理占星術家として30年以上のキャリア」をもつことによるものだろう。絵本や挿絵を多く手がける作者の、意外な一面を知ることになった。

かのケプラーは「このおろかな娘、占星術は、一般からは評判のよくない職業に従事して、その利益によって賢いが貧しい母、天文学を養っている」という趣旨のことを語っていたと言われるが、彼自身も占星術師その人*2だった。星空をながめて想像をはたらかせてきた人たちの上に、今の天文学があることは間違いないのだ。