『ヤマネはねぼすけ? (たくさんのふしぎ傑作集)(第90号)』で、
「ヤマネの観察」だけで、さまざまなことを学習できるのがわかる。
と書いた。
この『糸あそび 布あそび』も同じ。
メインは「家庭」になるだろうが、それだけにとどまらないポテンシャルがあるのだ。
糸の種類や作られ方を学ぶ「社会」。
さまざまな糸を観察し、糸を撚ると強度が増すことを実験する「理科」。
作り方を読んで理解するという「国語」。
必要な布の長さや幅を計算したり、設計を考えたりという「算数」。
作品の製作は「図工」そのもの。
布を裂いて紐にして撚り合わせ、縄跳びの大縄を作って遊ぶという「体育」。
草鞋を作る……日本の伝統文化を学ぶということで「道徳」。
リズムにのって織っていくという「音楽」。
タイトルに“あそび”がついてるのに、教科で分けるなんてバカバカしいことだけど。「ふしぎ」らしい一冊で内容は盛りだくさん、難易度もちょっぴり高めだ。
難易度というのは私基準なので、器用でやる気ある子供なら大丈夫。ハンクラが好きで得意ならいうまでもない。何度も作って経験値を積み重ねるにつれ、チャレンジのしがいも出てくるはずだ。
材料も「とくべつな道具はいらない」「家にあるものをつかって」というだけあって、今でも手に入りやすいものばかり。
私も布でぞうりを編んでみように挑戦してみた。夫の古いスーツを解いたので黒っぽいのも相まって、何かの幼虫のような様相を呈してしまった……。
難易度が高いというのは私基準、と書いたけど、何が大変て布を裂いて紐を撚るのが大変なのだ!布を均等に裂いて、ていねいに撚る。これができれば成功は約束されたようなもの。太かったり細かったりバラバラで撚りが足りなかったりすると、こんな不細工な出来になってしまうのだ。
そう、一度作ってみるとここがいけなかったんだとか、こうすれば良かったとか見えてくる。実際に手を動かすと、文を読んで理解する以上のことがわかってくるのだ。
恐るべきことに、私が苦労して作った草鞋は、この本では序の口だ。
布でかごを編もう、毛糸をつかって織物に挑戦、と進んでいき、最後はダンボールの機で裂織しようときたもんだ。この段ボール機織り器、工夫次第でマフラーまで織れるのだ。草鞋でも苦労してる私が、とても行き着ける気がしないけれど……。
最後のページに書かれるは、こんな私に足りないものだ。
すなわち、ゆっくり、のんびり、のびのび。
たとえば、もつれた糸をじょうずにほどくこつは、
イライラすると、からまった糸にばかにされているみたいだ。
無心にゆっくりと少しずつ、
糸のゆくえを見ながらゆるめていくと、
すなおに糸がほぐれてくる。
ということ。
おべんとうもって、織りものもって、外へ行こう。
木かげをみつけて、木にくくりつけて、
空の下で織りものしよう。
気がつくと、自分もしぜんの中にとけこんで、
心がのびのび
いいきもち。
おべんとうおいしいな。
今からの季節にうってつけではないか。素敵な風景が目に浮かんできた。
この『糸あそび 布あそび』は、光村図書の3年生国語教科書で紹介されている。私の手元にある本も2003年に傑作集の初版が発行されて以来、2016年で第10刷を数えるロングセラーだ。教科書で紹介されるわけがわかる。
教科書で紹介される「たくさんのふしぎ傑作集」は他にもある。
光村図書なら、
東京書籍なら、
- 2年『こんにちは、ビーバー』
- 3年『手で食べる?』
- 4年『いっぽんの鉛筆のむこうに』『絵くんとことばくん』『エンザロ村のかまど』『ことば観察にゅうもん』『手で食べる?』『みんなでつくる1本の辞書』
- 5年『鬼が出た』『ダーウィンのミミズの研究』
教育出版なら、
学校図書なら、
- 3年『自転車ものがたり』『美術館にもぐりこめ!』
- 4年『いっぽんの鉛筆のむこうに』『絵くんとことばくん』『世界あちこちゆかいな家めぐり』
- 5年『森へ』
- 6年『和菓子のほん』
※ リンク先は記事に飛びます。
というラインナップだ。対象が「小学中級から」なので、主に3〜4年生の教科書に載せられているものが多い。『絵くんとことばくん』は4社中3社で採用。確かにこれは教科書向きかも。特筆すべきは東京書籍。4社中いちばん多い9冊を載せている。3年でも4年でも『手で食べる?』がラインナップに入っているのが面白い。