こどもと読むたくさんのふしぎ

福音館書店の月刊誌「たくさんのふしぎ」を読んだ記録です。

糸あそび 布あそび (たくさんのふしぎ傑作集) (第173号)

ヤマネはねぼすけ? (たくさんのふしぎ傑作集)(第90号)』で、

「ヤマネの観察」だけで、さまざまなことを学習できるのがわかる。

と書いた。

この『糸あそび 布あそび』も同じ。

メインは「家庭」になるだろうが、それだけにとどまらないポテンシャルがあるのだ。

糸の種類や作られ方を学ぶ「社会」。
さまざまな糸を観察し、糸を撚ると強度が増すことを実験する「理科」。
作り方を読んで理解するという「国語」。
必要な布の長さや幅を計算したり、設計を考えたりという「算数」。
作品の製作は「図工」そのもの。
布を裂いて紐にして撚り合わせ、縄跳びの大縄を作って遊ぶという「体育」。
草鞋を作る……日本の伝統文化を学ぶということで「道徳」。
リズムにのって織っていくという「音楽」。

タイトルに“あそび”がついてるのに、教科で分けるなんてバカバカしいことだけど。「ふしぎ」らしい一冊で内容は盛りだくさん、難易度もちょっぴり高めだ。

難易度というのは私基準なので、器用でやる気ある子供なら大丈夫。ハンクラが好きで得意ならいうまでもない。何度も作って経験値を積み重ねるにつれ、チャレンジのしがいも出てくるはずだ。

材料も「とくべつな道具はいらない」「家にあるものをつかって」というだけあって、今でも手に入りやすいものばかり。

私も布でぞうりを編んでみように挑戦してみた。夫の古いスーツを解いたので黒っぽいのも相まって、何かの幼虫のような様相を呈してしまった……。

難易度が高いというのは私基準、と書いたけど、何が大変て布を裂いて紐を撚るのが大変なのだ!布を均等に裂いて、ていねいに撚る。これができれば成功は約束されたようなもの。太かったり細かったりバラバラで撚りが足りなかったりすると、こんな不細工な出来になってしまうのだ。

そう、一度作ってみるとここがいけなかったんだとか、こうすれば良かったとか見えてくる。実際に手を動かすと、文を読んで理解する以上のことがわかってくるのだ。

恐るべきことに、私が苦労して作った草鞋は、この本では序の口だ。

布でかごを編もう毛糸をつかって織物に挑戦、と進んでいき、最後はダンボールの機で裂織しようときたもんだ。この段ボール機織り器、工夫次第でマフラーまで織れるのだ。草鞋でも苦労してる私が、とても行き着ける気がしないけれど……。

最後のページに書かれるは、こんな私に足りないものだ。

すなわち、ゆっくりのんびりのびのび

たとえば、もつれた糸をじょうずにほどくこつは、

イライラすると、からまった糸にばかにされているみたいだ。

無心にゆっくりと少しずつ、

糸のゆくえを見ながらゆるめていくと、

すなおに糸がほぐれてくる。

ということ。

おべんとうもって、織りものもって、外へ行こう。

木かげをみつけて、木にくくりつけて、

空の下で織りものしよう。

気がつくと、自分もしぜんの中にとけこんで、

心がのびのび

いいきもち。

おべんとうおいしいな。

今からの季節にうってつけではないか。素敵な風景が目に浮かんできた。

この『糸あそび 布あそび』は、光村図書の3年生国語教科書で紹介されている。私の手元にある本も2003年に傑作集の初版が発行されて以来、2016年で第10刷を数えるロングセラーだ。教科書で紹介されるわけがわかる。

教科書で紹介される「たくさんのふしぎ傑作集」は他にもある。

光村図書なら、

東京書籍なら、

教育出版なら、

学校図書なら、

※ リンク先は記事に飛びます。

というラインナップだ。対象が「小学中級から」なので、主に3〜4年生の教科書に載せられているものが多い。『絵くんとことばくん』は4社中3社で採用。確かにこれは教科書向きかも。特筆すべきは東京書籍。4社中いちばん多い9冊を載せている。3年でも4年でも『手で食べる?』がラインナップに入っているのが面白い。