こどもと読むたくさんのふしぎ

福音館書店の月刊誌「たくさんのふしぎ」を読んだ記録です。

人がねむる 動物がねむる(第178号)

わが家の息子がいちばん口うるさく言われるのは、勉強のことではなく「寝る時間」のことだと思う。「早く寝なさい!」という直接的な言葉から「時間の管理ができてないよ」「せっかく早くご飯にしたのに寝る時間が遅かったら意味ないんだよ」「睡眠不足になるとどうなると思う?」…などなど、寝る間際にはイヤミや脅しの入ったセリフが私の口から飛び出すことが"時々"ある。こう書き上げてみると、寝ようと思う気持ちをかえって削ぐような、逆効果なのではと思われる叱り方だ。反省。しかし、これらのセリフの前には、(私からしたら)おだやかな促しや優しい言葉がけが積み重なっているのであり、そもそも私自身、子供が寝んとする時間の頃には、すでに一日の疲れが溜まりきって、感情をコントロールをする力があまり残っていないのだった。寝ようとしないというのは、子供の一日の過ごし方に原因がある、とか、何か寝るのを妨げるような精神的な要因がある、とかもっともらしいことを考えてはみるものの、疲れた頭に浮かんでくるのは「早く布団に入って、私の仕事を終わらせてくれ」ということだけである。

先月はNHKで、こんな脅しのような番組が放映されたが、脅しでもなんでもなく『睡眠不足は危険がいっぱい』であるのは、多くの人が、すでに自分の身体で実証済みなのではないだろうか?睡眠が不足すれば疲労がたまるのは当たり前で、疲労がたまれば日中のパフォーマンスに影響するのみならず、身体の機能を損ない病気にかかる可能性が高くなるのは、当然の帰結である。本書によると、ロシア人科学者マリア・マナセーナの研究で、10匹の子犬について不眠実験を行ったところ、4、5日のうちに子犬はみな死んでしまったそうだ。調べてみると大脳皮質細胞に大きな損傷が見つかったらしい。中2の頃、徹夜でテスト勉強をしてはみたものの、朝方に寝落ちしてその日の試験に大遅刻(母は朝起きないので、起こす人はいない)という失態を演じたことがあるが、徹夜の勉強は「百害あって一利無し」ということを身をもって知ったのであった。ちなみに、やってもいない罪状をなんで自白して認めることになるのか?という冤罪問題も、睡眠不足が大きな要因の一つだと思われる。たかだか中学校の定期試験に遅刻するくらいの「危険」で済めばいいが、「わたしは寝ていないんだよ!!」と素直に口走ってしまった社長は、いろいろな意味でリスク管理ができていないということを露呈してしまったし、死傷者を出すような事故(重大なバス事故の原因の多くは過密勤務)につながる「危険」ともなれば、"ただの睡眠不足"という言葉では済まされなくなる。

子供はやがて、口うるさい私のくびきを逃れて独り立ちし、自由を謳歌することになるだろうが、夜遅くまで遊ぶ楽しみは、私自身も享受してきた若者の権利とはいえ、大人になった子供に親ができることと言ったら、もはや聞かれることはない小言を繰り返すことと、彼の睡眠不足が取り返しのつかない事態を招かないように、祈ることだけなのかもしれない。「親の意見と冷酒は後で効く」とは言われることだが、睡眠の大切さを本当に実感するのはいつになることだろう。

 

「作者のことば」で、井上昌次郎氏は、人間とロボットの大きな違いとして二つ挙げている。一つは「繁殖」について、そしてもう一つが「眠り」についてだ。

人工知能と呼ばれるロボットの脳は、休まずに活動をつづけることができるように設計されています。ですから、眠りや生物リズムをコントロールするようなしくみは、もともと入っていません。でも、ロボットがもっと進化したなら、はたして、眠らずに活動しつづけることができるのでしょうか。

この号が出版された2000年当時と比べて、現在の(といっても17年しか経っていないわけだが)人工知能は格段に進歩したのだと思うが、AIは本当に「疲れ知らず」なのか?ということは、「人間の疲れた頭」を使う私にはわからないことである。